チュートリアル講演


チュートリアル講演1

5月30日 (木) 15:30~17:10 B会場(中ホール)

「大規模言語モデルの開発」

岡崎 直観 氏
(東京工業大学 情報理工学院 教授)

本講演では、大規模言語モデルの開発に必要な基礎および最新動向を概観する。その後、東京工業大学情報理工学院の岡崎研究室と横田研究室、産業技術総合研究所の研究チームで開発された大規模言語モデルSwallowの開発経験を踏まえ、学習データの構築、モデルの学習や評価などを説明し、日本語に強い大規模言語モデルの現状や課題を議論したい。

[ 略歴 ]
2007年東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程修了。博士(情報理工学)。東京大学大学院情報理工学系研究科・特任研究員、東北大学大学院情報科学研究科准教授を経て、2017年8月より現職。自然言語処理の研究に従事。言語処理学会理事、日本ディープラーニング協会(JDLA)理事。平成28年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞、第15回船井学術賞、2016年度マイクロソフト情報学研究賞、2017年度人工知能学会論文賞などを受賞。

チュートリアル講演2

5月29日 (水) 13:30~15:10 B会場(中ホール)

「機械学習と科学モデル」

武石 直也 氏
(東京大学大学院 工学系研究科 先端学際工学専攻 講師)

機械学習によるデータ駆動型モデルと、理論に基づく科学モデル(微分方程式など)の関わりは、①機械学習で科学モデルの順問題を解く方法、②機械学習で科学モデルの逆問題を解く方法、③機械学習モデルと科学モデルの融合、などの観点で注目されている。本講演では特に②と③の話題について、基本的な考え方と最近の研究を紹介する。

[ 略歴 ]
2018年 東京大学大学院 工学系研究科 航空宇宙工学専攻 博士課程修了。博士(工学)
2018年 理化学研究所革新知能統合研究センター 特別研究員
2020年 西スイス応用科学大学 科学職員
2023年 東京大学大学院 工学系研究科 先端学際工学専攻 講師

チュートリアル講演3

5月31日 (金) 09:00~10:40 B会場(中ホール)

「スポーツデータとAI:スポーツをシステムとして捉えて楽しむ」

神武 直彦 氏
(慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 教授)

人やチームがスポーツを楽しみ、良いパフォーマンスを出すためには心(メンタル)と技(テクニカル)、体(フィジカル)のバランスが整う必要があり、ものごとを多様な要素から構成される「システム」と捉え、その要素間のつながりを俯瞰的かつ緻密に理解する考え方が有効である。例えば、高校の野球部が甲子園優勝を目指すためには、選手や監督、コーチのみならず、医学や心理学の専門家、保護者学校関係者といったステイクホルダーを理解し、練習や試合、学校生活のための施設や道具、そして、移動のための手段やコミュニケーションおよびコンディションマネジメントのための仕組み、応援歌といったあらゆるものを要素として捉え、その相互作用に配慮する必要がある。スポーツを理解してより良い結果を生み出すために様々なデータが取得され、活用されている。そして、テクノロジーの高機能化とコモディティ化によって多様なデータが扱われるようになり、それらのデータにAIを適用することでその活用価値を高める試みが行われている。スポーツの「する・みる・ささえる」に寄与するデータとAIの活用について紹介し、今後の可能性や課題について論じる。

[ 略歴 ]
慶應義塾大学大学院理工学研究科修了後、宇宙開発事業団入社。H-IIAロケットの研究開発と打ち上げに従事。欧州宇宙機関(ESA)訪問研究員を経て、宇宙航空研究開発機構主任開発員。宇宙機ソフトウェアの独立検証・有効性確認の統括やアメリカ航空宇宙局(NASA)、ESAとの国際連携に従事。2009年より慶應義塾大学へ。日本スポーツ振興センターハイパフォーマンス戦略部アドバイザー、慶應義塾横浜初等部長(校長)などを歴任。名古屋大学客員教授。慶應義塾大学体育会水上スキー部長、野球部および蹴球部(ラグビー部)アドバイザー。慶應キッズパフォーマンスアカデミー代表。著書に『いちばんやさしい衛星データビジネスの教本』(インプレス)など。博士(政策・メディア)。

チュートリアル講演4

5月30日 (木) 09:00~10:40 B会場(中ホール)

「医療情報と人工知能」

香川 璃奈 氏
(産業技術総合研究所 人工知能研究センター 主任研究員)

小林 和馬 氏
(国立がん研究センター研究所 研究員)

鈴木 晋 氏
(株式会社CureApp 共同創業者・開発統括取締役・医師)

人工知能技術の急速な発展に伴い、応用先として注目が集まる分野の一つが医療である。本チュートリアルでは、医療情報(病院・クリニックに通う患者のデータ)を用いた人工知能学分野の研究開発を始めたい人を主な対象として、研究リソースの紹介、技術動向と研究課題の整理、AI医療機器や治療アプリが社会実装に至る過程、研究倫理審査に対する疑問との向き合い方などを紹介する。当日は各演者の講演とあわせて、いくつかのテーマを講演者同士でもディスカッションする予定であり、参加者にも積極的に議論に参加いただける場を目指す。本チュートリアルが、極めて幅広いトピックから構成される「医療情報とAI」を立体的に概観する一助となれば幸いである。

[ 略歴(香川 璃奈) ]
医師、博士(医学)。2012年慶應義塾大学医学部卒業。九段坂病院初期臨床研修医、東京大学大学院医学系研究科、日本学術振興会特別研究員(DC2)、筑波大学医学医療系講師などを経て、2024年より現職。AIをつくる・つかう人間の高次認知特性に興味を持っている。

[ 略歴(小林 和馬) ]
医師・博士(理学)。2011年慶應義塾大学医学部卒業。初期臨床研修医、国立がん研究センター中央病院放射線治療科を経て、放射線治療専門医取得。2018年より国立がん研究センター研究所・連携大学院生を経て、理学博士取得。2021年より現職。主に医用画像解析に従事。

[ 略歴(鈴木 晋) ]
医師、会社役員、ソフトウェアエンジニア。慶應義塾大学医学部在学中にプログラミングを習得し、卒業後はゲノム解析の研究室とWeb制作会社にてソフトウェアエンジニアとして研鑽を積む。2年の臨床研修を経て、2014年に株式会社CureAppを共同創業。開発統括取締役として、技術から医学的コンテンツ、医療機器開発、情報セキュリティ、デジタルトランスフォーメーションなど広く会社全体を指揮している。週に1回、福島市で一般内科診療を行う。