基調講演・招待講演・特別講演


基調講演

5月28日(火) 10:30~11:40 A会場(大ホール)

「現場の問題から始めるAIシステム」

山口 高平 氏
(神奈川大学/人工知能学会 元会長)

現在,AIブームが続いており,実装されるAIシステムが増えてきたが,AI 技術の適用が優先され,現場でAIシステムの適用効果が低いケースも起こっている.AIブームを牽引するディープラーニング・生成AIなどの特定AI 技術だけでなく,AI 技術全体を俯瞰し,現場が抱える問題を分析し,現場のどの場面でどのAI技術をどのように使えば,効果があがるのかを深く考え,現場で役立つAIシステムを設計するべきである.本講演では,そのような業務を担えるAI人材育成の重要性を指摘したい.

[ 略歴 ]
大阪大学工学部,同大学大学院工学研究科修士課程,博士課程修了後,大阪大学助手,静岡大学助教授・教授,慶應義塾大学理工学部教授を経て,現在,神奈川大学情報学部教授.オントロジー,知識グラフ,データマイニング,知能ロボットなどのAI技術を現場の問題に適用し,AI技術主導ではなく,現場の問題分析を重視するAIシステム構築法の重要性を指摘してきた.2012年から2014年にかけて人工知能学会会長,著書『AIシステムと人・社会との関係』『AIプロデューサー~人とAIの連携~』など.

招待講演1

5月29日(水) 11:00~12:10 A会場(大ホール)

「進化する大規模言語モデル」

相澤 彰子 氏
(国立情報学研究所)

大規模言語モデルはその登場以来,社会の様々な活動に大きな影響を与えながら,さらに発展を続けている.本講演では,大規模言語モデルの進化の系譜をたどりながら,その歴史や研究動向を俯瞰する.また2023年度スタートした大規模言語モデル勉強会(LLM-jp)や国立情報学研究所における大規模言語モデル研究開発への取り組みについて紹介する.

[ 略歴 ]
1985年東京大学工学部電子工学科卒業.1990年東京大学大学院電気工学専攻博士課程修了.工学博士.現在,国立情報学研究所コンテンツ科学研究系教授,総合研究大学院先端学術院教授,東京大学大学院情報理工学系研究科教授併任.自然言語処理,情報検索,遺伝的アルゴリズム等の研究に従事.

招待講演2

5月30日(木) 14:00~15:10 A会場(大ホール)

「AIは『鉄腕アトム』の夢をみるか?~生成AIによるコンテンツ制作の可能性と問題」

手塚 眞 氏
(有限会社ネオンテトラ)

生成AIよるクリエイティブなビジュアル・コンテンツ(映画,漫画,アニメ,ゲーム)への活用,関与が検討されている現在,その実質的な可能性と問題点を,クリエイター・サイドから検証します.

[ 略歴 ]
1961年東京生まれ.高校時代から映画制作を始め,数々のコンクールで受賞.以後,映画・テレビ等の監督,イベント演出,本の執筆等,創作活動を全般的に行っている.1985年『星くず兄弟の伝説』で商業映画監督デビュー.1995年富士通のPCソフト『TEO~もうひとつの地球』をプロデュース.19か国で50万本のヒットとなる.1999年『白痴』がヴェネチア国際映画祭で上映されデジタル・アワード受賞.2020年『白痴』公開20周年を記念したデジタルリマスタリング版と手塚治虫原作の『ばるぼら』が全国公開.テレビアニメ『ブラック・ジャック』では2006年東京アニメアワードのテレビ部門優秀作品賞受賞.AIを使って手塚治虫の漫画を描く「TEZUKA2023」プロジェクトでは総合ディレクターを務める.宝塚市立手塚治虫記念館名誉館長など,手塚治虫の遺族としても活動している.著作に『父・手塚治虫の素顔』(新潮社)他.

特別講演

5月31日(金) 14:00~15:10 A会場(大ホール)

「AIとXRを活用した少子高齢社会の学びとケアのイノベーション」

竹林 洋一 氏
(みんなのケア情報学会理事長,創造する心代表取締役)

人が充実した人生を送るためには,自身の健康と社会の安定に加えて,「学び」と「社会的インタラクション」が大切です.私たちは「認知症」や「発達障害」を「個性」として捉え,2017年に「みんなの認知症情報学会(The Society of Citizen Informatics for Human Cognitive Disorder)」を設立し,立場・専門を超えて「ごちゃまぜ」で交流し,ケアの高度化や地域づくり取り組んできました.2023年に学会名称を「みんなのケア情報学会」に変更し,静岡大学の「AIとメタバースを活用した学びのイノベーション」プロジェクトと連携し,AIとXR(Virtual Reality, Augmented Reality, Mixed Reality)を活用した「セルフケア」と「学び」を基軸に活動しています.
本講演ではM.ミンスキーのコモンセンス理論によるケアのモデル化について述べ,XR・メタバースを活用した「学びのプラットフォーム開発」と応用事例を紹介し,超少子高齢社会におけるケアと学びの未来を展望します.

[ 略歴 ]
1980年東北大学博士課程修了.東芝入社.MITメディアラボ滞在中にAIのパイオニア・M.ミンスキーの知遇を得る.東芝研究開発センター技監,静岡大学教授,(株)エクサウィザーズ取締役,情報処理学会ヒューマンインタフェース研究会及び高齢社会デザイン研究会主査,人工知能学会「コモンセンス知識と情動研究会」(現在,コモンセンスと感情研究会)主査,人工知能学会理事,情報処理学会理事などを歴任.これまで音響信号処理,マルチモーダル音声対話,コモンセンスAIの研究に従事.静岡大学発ベンチャーとして,デジタルセンセーション(株)と(一社)みんなの認知症情報学会を設立.現在,みんなのケア情報学会理事長,静岡大学名誉教授,創造する心代表取締役.訳書に『ミンスキー博士の 脳の探検 —常識・感情・自己とは—』(共立出版)がある.