Vol.18 No.3 (2003/05) セマンティックWeb


私のブックマーク

セマンティックWeb

1. はじめに

Tim Berners-Lee により提唱された セマンティックWeb (http://scientificamerican.com/2001/0501issue/0501berners-lee.html) は,オントロジーが切り拓く次世代Webとして盛り上がりをみせ,今では,さ まざまな研究開発分野のキーワードとして登場するようになりました.そして, セマンティックWebの定義や期待は今後も変化し続けると予想されます.

一方,アカデミックな観点からのある時点における解説は,すでに, 人工知能学会誌Vol.17,No.4(2002年7月) にて「Semantic Webとその周辺」として特集されています.そこで,ここでは アプローチを変えて,「私がWebからセマンティックWebに関する情報を得るな らば」という観点から,セマンティックWebについて関連サイトを収集します.

2. セマンティックWeb入門

セマンティックWebに関する情報を収集する前に,セマンティックWeb の現状 をいかに正確にとらえるか,ということが重要であると考えられます.しかし, いきなり, セマンティックWebコミュニティ の ポータル (http://www.semanticweb.org)W3C (World Wide Web Consortium (http://www.w3c.org/2001/sw/)) にある莫大な情報にアクセスしても,正確に把握することは困難です. 実際,セマンティックWebそのもののコンセプトは,多くの研究者が自身の研 究経過や願望から,多様な解釈をしているのが現状のようです.また,その解 釈や定義も不安定で,(私自身の解釈も含めて)必ずしも正確ではないようです.

そこで,まずは,日本語でしっかり解説されているサイトを紹介します. なかでも, The Web KANZAKI (http://www.kanzaki.com) 内にある 「メタ情報とセマンティック・ウェブ」 [2.1] は非常に充実しています. 英語のもので,アップデートされていないものですが, The Semantic Web In Breadth [2.2] は,セマンティックWebにおいて,URI から Trust までの包括的なユースケー スを紹介しており,調査には役立ちます.

大まかな内容を理解できたなら,次は,研究の広がりを俯瞰することを考えま す.現在,海外の大学などでは,セマンティックWebに関する連続セミナーが いくつか開催されており,その教材などでWeb からアクセス可能なものがいく つかあります.このようなセミナーなどは今後も開催されて行くと考えられま すが,ここでは,個人的に参考にしたものをいくつかリストアップします.

また,上記のセミナー同様,開講年度の問題もありますが,セマンティック Web に関する講義シラバスなども参考になります.

さらに, RuleML (http://www.dfki.uni-kl.de/ruleml/) 中心になるのですが,セミナーのページ Rule Markup Techniques [2.7] は,情報ポータルとしてみても,良い情報源が集まっています.

[2.1] 「メタ情報とセマンティック・ウェブ」

http://www.kanzaki.com/docs/sw/

[2.2] The Semantic Web In Breadth

http://logicerror.com/semanticWeb-long

[2.3] Linkopings大学のSemantic Web Ph.D Course

http://www.ida.liu.se/~janma/SemWeb/

[2.4] ジョージア大学の A Course on Semantic Web

http://lsdis.cs.uga.edu/SemWebCourse_files/SemWebCourse.htm

[2.5] Concordia大学のシラバス

http://www.cs.concordia.ca/~faculty/haarslev/teaching/semweb/

[2.6] Lehigh大学のシラバス

http://www.cse.lehigh.edu/~heflin/courses/sw-fall01/

[2.7] Program of Dagstuhl-Seminar 02061: Rule Markup Techniques

http://www.dfki.uni-kl.de/ruleml/rmt/program/

3. セマンティックWeb の情報源

セマンティックWebに関する研究開発の経過を正確に把握するなら,ポータル サイト SemanticWeb.org[3.1] を調べれば十分です.ここには,研究技術やツール,グループなどについ て,ニュースやや関連情報,ポータルサイトなどが集められています.実際, このサイトにあるコンテンツやリンクにアクセスすると,必要な情報のほとん どを得ることができます. また,更新の頻度を重要視するなら, Semantic Web Blog[3.2] が適当です.

セマンティックWebに関係したプロジェクトをフォローするなら,最近は,セ マンティックWebへの貢献を主張するプロジェクトがいくつか登場しています が,なかでも,中心的な役割を担っている次の2つは重要です.

これら,2つは,それぞれ, http://daml.semanticweb.org/http://ontoweb.semanticweb.org/ としてもアクセス可能です.

一方,W3C に関連した活動は, W3C Semantic Web [3.5] にて把握することができます.特に,幅広い文脈でセマンティックWebを捉え るなら, Design Issues for the World Wide Web [3.6] が有用です.

セマンティックWebの基礎技術に関する解説などは,個別に取り上げるときり がないのですが,RDFに関する日本語の解説は,[2.1]中の セマンティックウェブの基礎としてのRDF [3.7] が良いでしょう. The Web KANZAKI 以外で,XML の関連技術を日本語でしっかり押さえたいなら, @IT – アットマーク・アイティ 内の @IT:XML eXpert eXchange [3.8] が充実しています.各種ベンダーなどが提供している日本語の解説も,ここか らたどることができます.このサイトは,XMLだけでなく,.Net や JAVAなど の情報へのリンクも充実しています. さらに,日本語ではないのですが,RDFに関しては,

に豊富なリンク集が提供されています.

[3.1] SemanticWeb.org

http://www.semanticweb.org

[3.2] Semantic Web Blog

http://www.citnames.com/blog/

[3.3] The DARPA Agent Markup Language Homepage

http://www.daml.org

[3.4] OntoWeb Portal

http://www.ontoweb.org/

[3.5] W3C Semantic Web

http://www.w3c.org/2001/sw/

[3.6] Design Issues for the World Wide Web

http://www.w3.org/DesignIssues/Overview.html

[3.7] セマンティックウェブの基礎としてのRDF

http://www.kanzaki.com/works/2002/swo/

[3.8] @IT:XML eXpert eXchange

http://www.atmarkit.co.jp/fxml/

[3.9] RDF: References

http://139.91.183.30:9090/RDF/references.html

[3.10] Dave Beckett’s Resource Description Framework (RDF) Resource Guide

http://www.ilrt.bris.ac.uk/discovery/rdf/resources/

4. セマンティックWebとWebサービス

CORBAに代わる分散計算環境として登場したWebサービスは,一部で,セマン ティックWebの実行環境としても着目されています.Webサービスに関連した情 報収集は, WebServices.Org [4.1] にて行うと便利です.また,W3C に関連し た活動は, W3C Web Services Activity [4.2] にて得られます.

Web サービスを日本語で読むなら, XMLコンソーシアムWebサービス技術解説書 [4.3] が便利です.

さて,セマンティックWeb と Webサービスの両方を視野に入れた研究活動とし て,代表的なものをあげると,次の2つが考えられます.

どちらも,当初と現在の提唱内容を比較すると,Web サービスをかなり重要視 しているようです.特に,前者は,EUのISTのプロジェクトとして採択されて います.また,後者は,DAML プログラムのコアプロジェクトとして活動して います.

また,関連情報を扱うポータルサイトとしては, WS INDEX (Web services & Semantic Web Resources) [4.6] も参考になります.さらに,必要十分量の情報が何であるか,をはっきりさせ たいなら,例えば, ISWC (http://iswc.semanticweb.org) 2002 のチュートリアル Semantic Web Services [4.7] をフォローしてみる,というのが良いでしょう.

Web サービスの相互運用に関しては,IT業界のコンソーシアムのページ WS-I (Web Services Interoperability Organization) [4.8] が充実しており,ガイドラインやプロファイルの開発,ツールの検証や相互運 用のテストなどが提供されている. また,SOAP の異なるプラットホームでの相互運用に特化したものとしては, The SOAPBuilders Interoperability Lab [4.9] が参考になるでしょう.

[4.1] WebServices.Org

http://www.webservices.org/

[4.2] W3C Web Services Activity

http://www.w3c.org/2002/ws/

[4.3] Webサービス技術解説書

http://www.xmlconsortium.org/websv/kaisetsu/index.html

[4.4] Semantic Web enabled Web Services (SWWS)

http://swws.semanticweb.org

[4.5] DAML Services

http://www.daml.org/services/

[4.6] WS INDEX (Web services & Semantic Web Resources)

http://www.wsindex.org/

[4.7] Semantic Web Services

http://www.daml.ri.cmu.edu/tutorial/iswc-t3.html

[4.8] WS-I (Web Services Interoperability Organization)

http://www.ws-i.org/

[4.9] The SOAPBuilders Interoperability Lab

http://www.xmethods.net/ilab/

5. セマンティックWebのビジネス応用

セマンティックWeb は,知識管理とオントロジー,基幹システムとWebサービ ス,などの相性から,最近,ビジネスへの応用を展開しています.まず, SemanticWeb.org (http://www.semanticweb.org) のサブコミュニティとしては, Semantic Web Business SIG [5.1] があります. また,W3C の Design Issues for the World Wide Web (http://www.w3.org/DesignIssues/Overview.html) 中の Business Model for the Semantic Web [5.2] では,企業アプリケーション統合 (EAI: Enterprise Application Integration) や関係データベースとの関連が述べられています. ebPML.org[5.3] は,ビジネスプロセス管理システムを主たる対象としていますが,ビジネスプ ロセスとWeb サービスの関連や,Webサービスの連携などの情報ポータルとし ても充実しています.

実際に,セマンティックWeb関連技術は,オントロジーやXML,RDF, Webサービ スなど多岐にわたるため,このような技術に関連したビジネスも数多く登場し ています.このため,すべてをリストアップすることはしません.ある程度, 研究プロジェクトとしての側面も備えているものとしては,

また,DAML と UML に関しては,DAML プロジェクトのサブプロジェクトとし て, DAML/UML Based Ontology Toolset [5.7] もあります.

プロジェクト的な要素は薄いのですが,セマンティックWeb研究からスピンア ウトしたベンチャーとして,個人的には SWTA: Semantic Web Technology Amsterdam [5.8] に注目しています.

また,セマンティックWeb との関連を強く主張していませんが, The START Natural Language Question Answering System [5.9] は,Web 上のリソースを統合的に利用した応用システムがどのようなものかを 主張するための良い応用イメージであると考えています.

[5.1] Semantic Web Business SIG

http://business.semanticweb.org

[5.2] Business Model for the Semantic Web

http://www.w3.org/DesignIssues/Business

[5.3] ebPML.org

http://www.ebpml.org/

[5.4] Ontopia: The Topic Map company

http://www.ontopia.net/

[5.5] Ontoprise GmbH

http://www.ontoprise.de/home_en

[5.6] DAML UML Enhanced Tool (DUET )

http://grcinet.grci.com/maria/www/CodipSite/Tools/Tools.html

[5.7] DAML/UML Based Ontology Toolset

http://ubot.lockheedmartin.com/ubot/

[5.8] SWTA: Semantic Web Technology Amsterdam

http://www.fensel.com/

[5.9] The START Natural Language Question Answering System

http://www.ai.mit.edu/projects/infolab/ailab.html

6. セマンティックWebとエージェント

DAMLの「A」はAgentの「A」であることからも,エージェントはセマンティッ クWeb の応用技術として重要視されています.特に,次のものは,DAMLプロジェ クトで中心的役割を担っています.

また,次のプロジェクトは,DAMLプロジェクトとは独立して活発ですが,DAML との技術的リンクを提供しています.

DAML プロジェクトとは,直接,連携していませんが,セマンティックWebやWeb サービスとエージェントの関連を強く主張しているプロジェクトとして, Agentcities[6.5] が充実しています.このプロジェクトは, EUのIST (http://www.cordis.lu/ist/) に採択されているのですが,さらに, openNet (http://www.agentcities.org/openNet/) として更なる発展を目指しています. また, SEWASIE: Semantic Webs and AgentS in Integrated Economies [6.6] も,セマンティックWebとエージェントの関連を強く主張しているプロジェク トです.

[6.1] Semantic Web Research Group

http://www.mindswap.org/

[6.2] CMUの ntelligent Software Agents Lab

http://www-2.cs.cmu.edu/~softagents/

[6.3] UMBC Agent Web

http://agents.umbc.edu/

[6.4] SRIのOpen Agent Architecture (OAA)

http://www.ai.sri.com/~oaa/

[6.5] Agentcities Web

http://www.agentcities.org/

[6.6] SEWASIE: Semantic Webs and AgentS in Integrated Economies

http://www.sewasie.org/

7. セマンティックWebを実践する

セマンティックWeb のプラットホームとして,独自にWeb サービスのシステム を構築するなら, XMLコンソーシアムが提供する Webサービス開発ガイド [7.1] が充実しています.ここでは,各種プラットホームごとに解説されていて,参 考になります.とりあえず,フリーの環境で構築するなら, Apach SOAP[7.2] DotGNU Project[7.3] Mono Project[7.4] などを参考にすれば良いでしょう. JAVA プラットホームなら, Java(TM) Technology and Web Services [7.5] (関連日本語ページ:J2EE & Web Service[7.6]) が代表的です.また, Web services for Perl[7.7] は,Perl によるプラットホームに関して丁寧に説明されていますが, Webサービスの情報ポータルとしても充実しています. どうしても,本家の.Net (ドットネット) 製品にこだわるなら, マイクロソフトの公式ページ (http://www.microsoft.com/japan/net/) よりも,マイクロソフトの .NET Framework 開発チームにより運用されている GotDotNet Home Page [7.8] が参考になります.特に,サンプルコードが充実しています.

Web サービスの相互運用や連携などを実践する際に,公開されている Web サー ビスを集めたいなら, XMethods[7.9] や Salcentral[7.10] にアクセスするのが良いでしょう.また,公開されているオントロジーにアク セスするなら, 過去の特集 (https://www.ai-gakkai.or.jp/jsai/journal/mybookmark/) における オントロジー (https://www.ai-gakkai.or.jp/jsai/journal/mybookmark/15-6.html) にて紹介されたもの以外では,

などが良いでしょう.基準となるメタデータとしては, Dublin Core Metadata Initiative (DCMI (http://dublincore.org/)) Dublin Core Metadata Element Set [7.13] が標準的に利用されつつあります. 最後に,とりあえず,実践したいので,RDF のコンテンツとして適当なサンプ ルを求めるのであれば, RSS (http://web.resource.org/rss/1.0/) のコンテンツなら比較的容易に収集可能です.また,利用や実践に関しては, 簡単なRDF Site Summary (RSS)の説明 [7.14] に,十分な説明や,利用ツール,コンテンツポータルの情報などが提供されて
います.

[7.1] Webサービス開発ガイド

http://www.xmlconsortium.org/websv/dev_guide/index.html

[7.2] Apach SOAP

http://ws.apache.org/soap/

[7.3] DotGNU Project

http://www.gnu.org/projects/dotgnu/

[7.4] Mono Project

http://www.go-mono.com/

[7.5] Java(TM) Technology and Web Services

http://java.sun.com/webservices/

[7.6] J2EE & Web Service

http://jdc.sun.co.jp/j2ee/index.html

[7.7] Web services for Perl

http://www.soaplite.com/

[7.8] GotDotNet Home Page

http://gotdotnet.com/

[7.9] XMethods

http://www.xmethods.net/

[7.10] Salcentral

http://www.salcentral.com/

[7.11] DAML Ontology Library

http://www.daml.org/ontologies/

[7.12] OpenCyc.org

http://www.opencyc.org/

[7.13] Dublin Core Metadata Element Set

http://dublincore.org/documents/dces/

[7.14] 簡単なRDF Site Summary (RSS)の説明

http://www.kanzaki.com/docs/sw/rss.html

8. おわりに

「私の」ブックマークということで,セマンティックWebに関連すると考えられ るもので,個人的に利用しているページを中心に紹介しました.セマンティッ クWebは,今後も発展し続けると思われるので,今回は,特に,情報収集や実 践に焦点をあてました. このため,重要と思われる研究プロジェクトや研究組織,研究者やツールなど, 他にも紹介すべきものは数多くありますが,スペースの関係で今回は見送りま した.

また,「ブックマーク」ということで,今回,中心的に取り上げませんでした が,当面,最新の研究成果や議論などは, International Semantic Web Conference (ISWC http://iswc.semanticweb.org/) セマンティックウェブとオントロジー研究会(http://www.ei.sanken.osaka-u.ac.jp/sw-ont/index.htm) が中心的な役割を担うと考えられます.

その他の会議などの報告や,e-ビジネスに関するスタンダード,オントロジー を基礎とした知識管理などに関して,他にも重要なサイトが数多くあります. さらに,今回紹介した各サイトの詳しい構成なども重要かと思います.これら に関しては,別の機会に特集として取り上げられることを期待します.

最後に,貴重なコメントを頂いた大阪市立大学大学院の北村泰彦先生に感謝い たします.

(産業技術総合研究所 和泉 憲明 niz@ni.aist.go.jp)