Vol.15 No.6 (2000/11) オントロジー


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オントロジー

武田英明

AIにおけるオントロジーはいまや大変幅広い文脈をもっている。AIにおいてオントロジーという用語が受け入れられたのは直接的には知識表現(KR)の分野での知識共有プロジェクトが大きな役割を担ったが、自然言語分野での大規模シソーラスや知識システム開発などとむすびつき、多様な文脈が生まれている。近年はWWWや電子商取引の基礎技術になると注目されている。このため多様なリソースが現在、WWWに公開されている。以下ではWWWでアクセス可能なものを使って、オントロジーの現状を紹介する。

1.INTORODUCTION オントロジーとは何か

まず知りたいのはオントロジーが何か、ということであろう。
これに関しては一つの答えを出すことは困難である。AIの中での歴史的にみればGruberの定義[1-1]がある。GruberはOntolinguaを提唱した人物であり、このころのオントロジー研究推進のシンボル的役割を果たした。現実にオントロジーの研究者が何を考えているかについてはKR96(TheFifth International Conference on Principles of Knowledge Representationand Reasoning)で行われたパネルの資料[1-2]が役に立つ。
このパネルでは先のOntolinguaなどを開発してきたスタンフォード大学のKSL(KnowledgeSystems Laboratory)[5-1]のRichard Fikes、エンタープライズオントロジーTOVE[4-5]の開発をしているトロント大学のMarkFox、 formal ontologyの研究グループ[5-2]を率いているItalian National ResearchCouncilのNicola Guarinoなどが参加している。
それぞれのオントロジーの位置付け方が違うのがよくわかる。またこのなかのGuarinoが書いた論文[1-3]がオントロジーを理解する助けになる論文の一つである。インターネットコマースなどの関係から理解するには[1-4]の中のオントロジーの説明も簡潔である。日本語では大阪大学の溝口理一郎氏のチュートリアル[1-5]がある。

[1-1]
Whatis an Ontology?
http://www-ksl.stanford.edu/kst/what-is-an-ontology.html
[1-2]
KR96 Panel for Ontologies
http://www-ksl.stanford.edu/KR96/Panel.html
[1-3]
KBKS95 paper
http://www.ladseb.pd.cnr.it/infor/Ontology/Papers/KBKS95.pdf
[1-4]
Ontology.Org – Enabling Virtual Business
http://www.ontology.org/main/papers/faq.html
[1-5]
Tutorial of Ontological Engineering
http://www.ei.sanken.osaka-u.ac.jp/japanese/tutorial-j.html

2. ONTOLOGY BASE オントロジーを見る/使う

理屈はどうあれ、オントロジーを見てみるあるいは使ってみるというのもオントロジーを理解する一つの方法であろう。いくつかのオントロジーがWWWを通じて公開されている。
Cyc Project[4-2]は元々は大規模知識ベースを構築することが目的であったが、その成果のうち、上位部分(抽象的部分)はCYCオントロジーとしてフリーではないが、プロジェクトのページからWWWで入手可能である[2-1]。約3000個の用語が含まれている。
Ontolinguaで作られたオントロジーはスタンフォード大学KSLのontology serverを利用して蓄積され、利用可能である[2-2]。
SENSUS[4-4]はWordNetなどさまざまなシソーラスを元にそれらを再構成して利用可能にしようするプロジェクトであり、WEB用のインタフェース(Ontosaurus)[2-3]を通じてアクセスすることができる。
イタリアのCNR-ITBMのオントロジーグループ[5-3]によるON9[2-4]は主に医療分野のための基礎概念を提供している。これもWWWで公開されている。
自然言語におけるシソーラスについては様々あるが、オントロジー研究者になじみ深いWordNet[2-4]はデータファイルあるいはWWWから利用することができる。Mikrokosmosも言語系のプロジェクトであるが、この中のオントロジーも参照可能である[2-6]。

[2-1]
Cyc Public Ontology
http://www.cyc.com/cyc-2-1/index.html
[2-2]

Stanford KSL Network Services
http://www-ksl-svc.stanford.edu/
[2-3]
Ontosaurus
http://mozart.isi.edu:8003/sensus/sensus_frame.html
[2-4]
ON9
http://saussure.irmkant.rm.cnr.it/onto/ON9.2a/index.html
[2-5]
WordNet
http://www.cogsci.princeton.edu/~wn/
[2-6]
Introduction to Mikrokosmos Ontology
http://crl.nmsu.edu/Research/Projects/mikro/htmls/ontology-htmls/onto.index.html

3. LANGUAGE, FORMAT & STANDARD オントロジーを書く

オントロジーに関係するフォーマットあるいは規格に関わる情報は多数存在する。オントロジーそのものを記述するフォーマットであるOntolingua[3-1]やその中で使われている知識表現記法KIF[3-2]は初期のころからよく使われたフォーマットである。OKBC(Open Knowledge Base Connectivity)[3-3]では、KIF + Ontolingua Frame Ontologyを知識交換言語のプロトコルとして提案している。これはFIPAでも採用されている。

FIPA(The Foundation for Intelligent Physical Agents)[3-4]はマルチエージェントシステムの標準化を提案する団体であるが、この中でオントロジーサーバのためのプロトコルの標準も提案している。

OIL(Ontology Interchange Language)[3-5]はKRにもWWWにもなじみやすいオントロジーの記述方法を提供するプロジェクトであり、XMLとRDFに基づく構文でかかれている。OILの構文はXOL(XML Ontology Exchange Language)[3-6][3-7]を元にしている。これは生物学の研究者の情報交換のニーズから始まったのものであるが、仕様は一般性がある。OKBC-liteのセマンティックスをXMLのシンタックスで書いている。

オントロジーの内容の方に関してはIEEE Standard Upper Ontology (SUO) Study Group[3-8]が一般目的用上位レベルオントロジーの標準化を提案している。ここではオントロジーを自然言語と論理で記述しようとしている。

なお、上記のものは基本的にフレームを知識表現の基本としているが、これとは別にJohn Sowaが提唱するCoceptual Graphもオントロジー記述のフォーマットの一つである。これはSowa本人のページ[3-9]、あるいは[3-10]からフォーマットからシステムまで様々な情報を得ることができる。OML(Ontology Markup Language)[3-11]はOILやXOLと同様にXMLのシンタックスを用いている記法であるが、セマンティックスはConceptual Graphを利用している。これはHTMLそのもののタグにオントロジーを埋め込むというSHOEプロジェクト[3-12]の流れを汲んでいる。

このようにオントロジーとXMLはいまや密接になっている。WWWコミュニティからもよりセマンティックスを取り込もうというアプローチも盛んである。この点に関してはSemantic Web[3-13]やRDF Schema[3-14]を参照されたい。

IDEF[3-15]は視覚的な記号を用いて様々な活動をモデル化するための標準を提供しているが、このなかでIDEF5はオントロジーのための標準を提供している。

[3-1]
Knowledge Interchange Format (KIF)
http://logic.stanford.edu/kif/kif.html
[3-2]
Ontolingua Home Page
http://www.ksl.Stanford.EDU/software/ontolingua/
[3-3]
Open Knowledge Base Connectivity Working Group
http://www.ai.sri.com/~okbc/
[3-4]
FIPA
http://www.fipa.org/
[3-5]
OIL
http://www.ontoknowledge.org/oil/
[3-6]
XOL Ontology Exchange Language
http://www.ai.sri.com/pkarp/xol/
[3-7]
bio-ontology
http://smi-web.stanford.edu/projects/bio-ontology/
[3-8]
Standard Upper Ontology Study Group
http://ltsc.ieee.org/suo/index.html
[3-9]
Conceptual Graphs
http://www.bestweb.net/~sowa/cg/
[3-10]
Conceptual Graphs Home Page
http://www.cs.uah.edu/~delugach/CG/
[3-11]
Ontology Markup Language (OML)
http://wave.eecs.wsu.edu/CKRMI/OML.html
[3-12]
SHOE
http://www.cs.umd.edu/projects/plus/SHOE/
[3-13]
Semantic Web roadmap
http://www.w3.org/DesignIssues/Semantic
[3-14]
Resource Description Framework (RDF) Schema Specification 1.0
http://www.w3.org/TR/rdf-schema/
[3-15]
IDEF
http://www.idef.com/

4. PROJECTS オントロジー関わるプロジェクトを知る

現在進行中あるいは過去のオントロジーに関わるさまざまなプロジェクトの情報が参照可能である。すでに過去のプロジェクトであるが歴史的に意味で重要なARPAKnowledge Sharing Effortのページは今でも公開されている[4-1]。前述のCyc Projectも開発そのものは終了しているが言語、オントロジーなどを提供している[4-2]。またヨーロッパの知識工学に関する代表的なプロジェクトであったCommonKADSは現在も改良が加えられつつ、公開されている[4-3]。自然言語系からの取り組みとしては前述のSENSUSも重要なプロジェクトである[4-4]。分野特定のオントロジーのプロジェクトとしてはエンタープライズオントロジーTOVEを開発したトロント大学のページも有益である[4-5]。エンタプライズオントロジーにはほかにはイギリスのAIAI(ArtifcialIntelligence Applications Institute)のページも参考になる[4-6]。

近年のプロジェクトとしてはDAML(DARPA Agent Markup Language Program)[4-7]がオントロジーに関係している。この中でのスタンフォード大学KSLはオントロジー統合の研究などをするようである[4-8]。同じスタンフォード大学のデータベースグループのGio WiederholdらはScalable Knowledge Composition (SKC)プロジェクトというのを行っている[4-9]。オントロジーを含む知識ベース開発環境としては同じくスタンフォード大学のKnowledge Modeling Groupが長年にわたってProtege[4-10]というシステムを作っており、多くの人/グループが利用している。ここではツールキットを得ることができる。

On-To-Knowledgeプロジェクト[4-11]は主にヨーロッパの企業と大学で行われているIT分野でのオントロジー利用の図るプロジェクトである。このプロジェクトの一環として後述のOILも開発されている。
その他オントロジーエディタOntoEdit[4-12]、WWWページに注釈をいれることで知識流通をはかるOntoBroker[4-13]なども開発されている。

[4-1]
ARPA Knowledge Sharing Effort
http://ksl-web.stanford.edu/knowledge-sharing/
[4-2]
Cycorp: Makers of the Cyc Knowledge Server for artificial intelligence-based Common Sense
http://www.cyc.com/
[4-3]
CommonKADS, Engineering and Managing Knowledge
http://www.commonkads.uva.nl/
[4-4]
sensus
http://www.isi.edu/natural-language/resources/sensus.html
[4-5]
TOVE Manual
http://www.eil.utoronto.ca/tove/ontoTOC.html
[4-6]
The Enterprise Project
http://www.aiai.ed.ac.uk/~entprise/enterprise/
[4-7]
DAML.org
http://www.daml.org/
[4-8]
DAML Project for Stanford Knowledge Systems Laboratory
http://www.ksl.stanford.edu/projects/DAML/
[4-9]
CALABLE KNOWLEDGE COMPOSITION
http://www-db.stanford.edu/SKC/
[4-10]
The Protege project
http://camis.stanford.edu/projects/protege/
[4-11]
Welcome to Ontoknowledge
http://www.ontoknowledge.org/
[4-12]
Ontology Engineering Environment OntoEdit
http://ontoserver.aifb.uni-karlsruhe.de/ontoedit/
[4-13]
OntoBroker Homepage
http://ontobroker.aifb.uni-karlsruhe.de/

5. SITES オントロジーを研究する

上記のプロジェクトを行っている研究グループを含めて、中心的な研究拠点および集約的なフォーラムをいくつか挙げる。

オントロジー研究の一つの核はスタンフォード大学KSL(Knowledge Systems Laboratory)であろう[5-1]。ここのWWWには過去の論文を含めて様々な情報が提供されている。ヨーロッパではNicola Guarinoの率いるLADSEB-CNR(Institute for Systems Science and BiomedicalEngineering of the Italian National Research Council)のOntological Foundationsof Conceptual Modeling and Knowledge Engineeringのグループが活発な活動をしている[5-2]。同じくイタリアのITBM-CNR(the Biomedical Technologies Institute of the Italian National Research Council)のもオントロジーの研究グループがある[5-3]。

SemanticWeb.org[5-4]は米スタンフォード大学、独カールスルーエ大学らの研究グループが運営するサイトで、オントロジーをWWWに使おうとする研究を集めている。ここにはオントロジーとXMLの関係なども説明されている。

Ontology.org[5-5]はインターネットコマースにおけるオントロジーの利用に関する産学のフォーラムである。XML関連およびビジネス関連の情報やリンクがある。
国内では大阪大学溝口研究室[5-6]、静岡大学山口研究室[5-7]がAI系のオントロジー研究の拠点として挙げられる。

[5-1]
Stanford Knowledge Systems Laboratory
http://www-ksl.stanford.edu/
[5-2]
Ontology, conceptual modeling, and knowledge engineering
http://www.ladseb.pd.cnr.it/infor/Ontology/ontology.html
[5-3]
The CNR-ITBM Ontology Group Home Page
http://saussure.irmkant.rm.cnr.it/onto/
[5-4]
SemanticWeb.org
http://www.semanticweb.org/
[5-5]
Ontology.Org – Enabling Virtual Business
http://www.ontology.org/
[5-6]
Mizoguchi Lab Home Page, ISIR, Osaka Univ.
http://www.ei.sanken.osaka-u.ac.jp/
[5-7]
Yamaguchi Laboratory
http://panda.cs.inf.shizuoka.ac.jp/

6. CONFERENCES オントロジー研究を発表する

オントロジーとタイトルに名打った会議(conference)としては98年に初めてInternational Conference on Formal Ontology in  Information Systems[6-1]が開かれ、第2回目が2001年に開かれる予定である[6-2]。Workshopとしては、様々な角度からオントロジーに関わる会議が、KRやIJCAI、AAAI、ECAIなどの国際会議に付随する形で毎年のように開かれている。最近のものでonline proceedingsが手に入るものとしては、ECAI-2000 Workshop on Ontology Learning [6-3]、ECAI-2000 Workshop on Applications of Ontologies and Problem-Solving Methods[6-4], IJCAI-99 workshop on Ontologies and PSMs[6-5]などがある。なお、これまでWorkshopとして行われきたEKAWは今年からconferenceとしてEKAW2000(International Conference on Knowledge Engineering and KnowledgeManagement)[6-6]が開催される。この会議ではオントロジーは主要テーマの一つである。
[7-6]にも過去のOnline Proceedingsや開催予定の会議の情報がある。

[6-1]
FOIS’98
http://www.ladseb.pd.cnr.it/infor/ontology/FOIS98/FOIS98.html
[6-2]
FOIS-2001
http://www.fois.org/
[6-3]
Ontology Learning ECAI-2000 Workshop
http://ol2000.aifb.uni-karlsruhe.de/
[6-4]
ECAI’00 workshop on Applications of Ontologies and PSMs
http://delicias.dia.fi.upm.es/WORKSHOP/ECAI00/index.html
[6-5]
IJCAI-99 workshop on Ontologies and PSMs
http://www.swi.psy.uva.nl/usr/richard/workshops/ijcai99/home.html
[6-6]
EKAW2000
http://www-sop.inria.fr/acacia/ekaw2000/

7. INDEX オントロジーを調べる

オントロジーに関するWWW情報を集めているインデックスページはいくつかあるが、あまり更新してないものも多い。この中でKBS/Ontology Projects Worldwide[7-1]は網羅的でよく更新もされいるようである。 他にも[7-2][7-3][7-4][7-5]等があるが、あまり更新されていないようである。研究グループやプロジェクトのページにもそれぞれあるので、そこからたどることができる。論文も同様で各研究グループなどにある。ほとんど電子的にアクセスできる。

[7-1]
KBS/Ontology Projects Worldwide
http://www.cs.utexas.edu/users/mfkb/related.html
[7-2]
Ontology
http://www.cs.man.ac.uk/~franconi/ontology.html
[7-3]
Ontology: A Resource Page
http://www.site.uottawa.ca/dept/Ontology/
[7-4]
The Ontology Page
http://www.medg.lcs.mit.edu/top/
[7-5]
Sites Relevant to Ontologies and Knowledge Sharing
http://ksl-web.stanford.edu/kst/ontology-sources.html

謝辞

本稿をまとめるあたっては、草稿段階から大阪大学の溝口理一郎氏と池田満氏に協力していただきました。不足している項目など有益な助言とコメントを多数いただきました。ここに感謝いたします。またこの原稿をまとめるにあたってはオントロジー工学調査委員会での活動[1]も参考にさせていただきました。

参考文献

[1] 大規模知識ベースに関する調査研究報告書,財団法人日本情報処理開発協会, 1998