学会概要


目次


会長就任のご挨拶

 
コロナ後を見据えた学会運営を目指して

津本 周作
(島根大学)

 野田五十樹会長から引き継ぎ,今期から会長として務めることになった.野田会長の任期中は,コロナ禍真っただ中のためすべての学会活動をオンラインとせざるを得ない時期で,これまでにない状況下,手探りで試行錯誤しながらの学会運営でご苦労が多かったのではないかと思う.改めて,困難な期間内での学会の舵取りを円滑に進めてこられたことに「お疲れ様でした.ご苦労様でした」と申し上げたい.
野田会長の学会運営を引き継いで,できれば,さらに新たな時代の学会活動を模索していくことが筆者の責務であり,それを考えると,身が引き締まる思いがしている.思い返すとちょうど 2年半ほど前,浦本会長の下,副会長の任期中に COVID-19の感染が国内でも報告されるようになり,理事会においても全国大会の対応についての議論が繰り返され,結局, 2020年度の全国大会はオンライン開催となった.社員総会は執行部ということもあり,現地参加をしたが,ほぼ理事全員がオンラインでの出席となる形で副会長の任期を終えた.その後 COVID-19の感染はさらに拡大し,人工知能学会のイベントは完全にオンライン化した.学会のみならず,すべての教育機関の活動がオンライン化し,筆者自身も大学教員として,任期後の 1年はひたすらオンライン講義の教材の作成に費やした.おそらく,ほとんどの大学教員はほぼ同様であったかと思われる. 1年空けて,次期会長として理事会に参加するようになったが,学会の運営についても, 1年以上かけて,オンラインでの活動が日常の職務として定着したことを実感した.
 ようやくコロナ禍という状況から抜け出そうとしているが,筆者自身このコロナ禍を振り返るとき,まずやってみたいことは,この 2年,会員の方々がどのように活動してきたか,また,そういう場合,学会活動に何を求めるかと聞いてみるということである.筆者の経験・感想を言えば,確かに,オンラインで済ませられる会議というものが存在することはわかった.教材をつくり,学生に自習されることの便利さもわかった.しかし,オンラインの会議では,大学内で突然起こり得る予想外の状況に対処するとき,往々にして保守的な対応で満足してしまうことになり,本当に重要なことは少人数で対面で会うことになり,教員間の情報共有がうまくいかないことが多々あった.また,学生に対しては,教材を見せて,レポートを書かせることはできるが,教えていることを本当に理解しているとは言いがたい状況に遭遇することが多く,理解していない学生とは直接面談することになった.局所的には学生の行動を把握できたが,学年ごとにある全体のカラーを捉えることができず,その学年に合わせた進捗の度合いを考えた講義ができず,学生との関係性が希薄になったような気がする.全体として,何か柔軟な対応が取りにくいというもどかしさを感じ続けた 2年であった.
 また,この期間は,オンライン,オンサイトはそれぞれに長所短所があり,それぞれの短所を補完することが重要であることを経験した期間であったともいえる.概して言えば,オンラインは縦型探索のような性質が強く,オンサイトは横型探索のような性質を有している.できれば,それぞれの探索の長所を生かしたようなハイブリッドなスタイルが望ましいのではないか.そして,これまで学会が提供してきたサービスやコンテンツは,どちらかというと横型探索的なものであり,縦型探索的なコンテンツ・サービスが足りないのではないかと感じた.知識を獲得したいと思い,入会してきている会員に対するサービスをどのようにすべきか,少なくともこの 1年間,次期会長という職の間じっと考えてきた.筆者としては,この 2年間の経験をプラスに生かして,新しい学会運営の姿を構想,実践していくことが重要だと思っている.
 さて,今年の全国大会からようやくハイブリッド開催を試験的に運用することになった.現地で参加された会員の皆さんは,現地開催によって,この 2年間の変化をどう実感されるのだろうか.今年の全国大会の経験を踏まえ,今後,学会の活動で,オンラインとオンサイト(対面)をどう両立させていくのかということを考えていくことが我々には求められているだろう.上にも述べたように,オンライン,オンサイトともに長所と短所があるので,一気にオンサイト化するのではなく,両者の両立をどう図るかが重要となってきている.できれば,全国大会をはじめとして主たるイベントはオンサイトを中心とすることにするが,オンラインで参加せざるを得ない会員にどのようなサービスとして提供するか,また,オンラインでしか提供できないサービスをどのようにオンサイトで会員に提供するかということも重要であろう.また,オンライン・オンサイトという軸とは少し異なるが,横型探索型中心であった学会のサービス・コンテンツに縦型探索型の方向性をもたせることも大事だと考えている.このような問題意識の下に,ここ 2年の任期の間,実験的な取組みを重ねていき,学会としてのサービスの在り方,社会貢献のための切り口を検討しながら,学会として方針を見極めて,次の世代につないでいきたいと考えている.
 

編集委員長のご挨拶

編集委員長就任にあたって

鳥海 不二夫
(東京大学)

 第三次人工知能ブームは 2006年頃から始まったといわれているが,それから 15年以上が経過し,深層学習をはじめとする人工知能技術は社会のさまざまな場面で使われている.人工知能というワードはハイプサイクルでいえば安定期に入りつつあるといえるのではないだろうか.
 世の中は常に新しい技術を表す言葉を求めている.その意味では,人工知能という言葉のブームが過ぎたことは間違いないだろう.数年前は,本屋に行けば人工知能学会監修のものをはじめとして人工知能関連書籍が一コーナをつくり,毎月のように新たな書籍が出版されていたが,先日本屋の技術書のコーナを見た際には,人工知能のスペースはかなり圧縮されており 10冊に満たない状況だった.「人工知能」後に技術的なバズワードとして世を席巻したワードは「 DX」や「 Society 5.0」だろう.しかし DXなども早々にブームを終えているようで, 2022年現在技術的なものでブームになっているものといえば「メタバース」や「Web 3.0」といったところだろうか.もちろん,ブームが去ったからといってそれを捨て去る必要はなく,研究は続くべきであるし,必要に応じて社会にも浸透していくであろう.
 というわけで, DXである.人工知能学会もさまざまな側面でディジタル化が進んでおり,編集委員会にもディジタルの波は押し寄せている.人工知能学会では 2001年には早くも論文誌のオンライン化が始まっており, 2015年には学会誌を Kindleでも販売するようになった.表に出るようなものではないが,編集委員会の会合はコロナ禍以前から Zoomを使ったハイブリッドで行っており,現在では Slackを導入して編集委員どうしの密なコミュニケーションを行っている.また,筆者が初めて編集委員になった 2013年頃にはすでにGoogle Driveでドキュメント管理を行っており,ディジタル化について先進的だったといえるのではないだろうか.
 しかし,編集委員会の本命である論文管理に関してだけは「ここだけ20世紀かな?」というレベルに留まってしまっているのは残念な点である.すでに多くの学会で論文誌の作成にはオンライン投稿査読システムを導入しているにもかかわらず,人工知能学会ではいまだに論文の投稿はメールで行い,査読依頼がメールで送られ,査読結果がメールで返される.初めて論文投稿した方や査読を依頼された方がぶったまげているのを見て心苦しく思ったことは,一度や二度ではない.
 過去に編集委員会ではオンライン投稿システムの導入に向けた動きはあったと記憶している.少なくとも栗原聡編集委員長の時代には編集委員として何度かテストを行ったことを覚えている.その後どういう経緯を経て現状維持がなされたのかはまだ不明であるが,このままの状態を維持すべきではないだろう.
 編集委員長の任期は 2年である. 2年の間に特に何を残したいという野望があるかと言われれば全くない.しかし「人工知能学会のくせにこんなアナログな方法で……」と言われ続けるのもどうかと思うので,任期の 2年間でオンライン投稿システムを含む編集委員会の DXの促進,あるいはそれに向けた道筋をつくる程度のことができればと現段階では考えている.もちろん,論文査読システムを導入するくらいで DXなどというのはおこがましいかもしれない.なんなら会合をすべてメタバース上で行い,論文査読にブロックチェーンを導入し,論文を NFTで売り出してみたりするのも面白そうな気もするが,バズワードに踊らされると何年か後に大変なことになりそうなので,あまり手を広げ過ぎないほうが良いだろう.
 現在連携を深めている New Generation Computing(NGC)を人工知能学会の公式英文ジャーナルにしようという動きもあり,人工知能学会誌,論文誌は今後大きく変化する予定である.学会誌,論文誌の発行という業務と新たなチャレンジを同時にこなしていくにはいろいろと困難があるようにも思うが,幸いなことに今年度から副委員長 2名体制となり,大澤博隆氏と三宅陽一郎氏が編集委員会の運営を補佐してくれることになっている.また,編集委員会には極めて優秀な編集委員と学生編集委員がそろっているので,その点は非常に心強い.
 というわけで, 2年後に編集委員長退任にあたってという文章を書く必要はないが,次期新編集委員長就任時に「ディジタル化の推進を……」と書かれないようにすることを控えめな抱負としたいと思う.
 

歴代会長

 

  氏名 就任期間
第19代 津本 周作 2022年6月22日~
第18代 野田 五十樹 2020年6月22日~2022年6月22日
第17代 浦本 直彦 2018年6月27日~2020年6月22日
第16代 山田 誠二 2016年6月24日~2018年6月27日
第15代 松原 仁 2014年6月13日~2016年6月24日
第14代 山口 高平 2012年6月14日~2014年6月13日
第13代 西田 豊明 2010年6月10日~2012年6月14日
第12代 堀 浩一 2008年6月12日~2010年6月10日
第11代 溝口 理一郎 2006年6月8日~2008年6月12日
第10代 石塚 満 2004年6月3日~2006年6月8日
第9代 田中 穂積 2002年5月30日~2004年6月3日
第8代 白井 良明 2000年5月26日~2002年5月30日
第7代 白井 克彦 1998年6月18日~2000年5月26日
第6代 田中 英彦 1996年6月26日~1998年6月18日
第5代 堂下 修司 1994年6月22日~1996年6月26日
第4代 志村 正道 1992年6月25日~1994年6月22日
第3代 辻 三郎 1990年6月23日~1992年6月25日
第2代 大須賀 節雄 1988年6月24日~1990年6月23日
第1代 福村 晃夫 1986年7月24日~1998年6月24日

 

令和四年度役員構成

令和四年度人工知能学会役員構成
 
全員:非常勤

役職名 種別 氏名 所属
会長 新任 津本 周作 島根大学
副会長 留任 森田 千絵 (株)東芝
副会長 新任 栗原 聡 慶應義塾大学
理事 留任 淺原 彰規 (株)日立製作所
理事 留任 荒井 幸代 千葉大学
理事 新任 和泉 潔 東京大学
理事 新任 岩田 具治 日本電信電話(株)
理事 新任 上田 晴康 富士通ゼネラル
理事 新任 太田 唯子 富士通(株)
理事 留任 大熊 智子 富士フイルム(株)
理事 新任 大原 剛三 青山学院大学
理事 留任 大向 一輝 東京大学
理事 留任 指田 直毅 富士通(株)
理事 留任 佐藤 佳州 パナソニック(株)
理事 留任 ジェプカ ラファウ 北海道大学
理事 留任 砂山 渡 滋賀県立大学
理事 留任 高間 康史 東京都立大学
理事 新任 立堀 道昭 日本アイ・ビー・エム(株)
理事 新任 鳥海 不二夫 東京大学
理事 新任 沼尾 正行 大阪大学
理事 留任 野村 俊之 日本電気(株)
理事 留任 服部 宏充 立命館大学
理事 新任 東中 竜一郎 名古屋大学
理事 新任 坊農 真弓 国立情報学研究所
理事 留任 牧田 光晴 LINE(株)
理事 新任 村田 博士 (一財)電力中央研究所
理事 新任 本村 陽一 産業技術総合研究所
理事 新任 山内 康晋 Toshiba Software India Pvt. Ltd.
理事 留任 山田 健太郎 (株)本田技術研究所
監事 留任 折原 良平 キオクシア(株)
理事 新任 森川 幸治 (株)LIFESCAPES
代表理事:会長,副会長 (理事は五十音順,敬称略)