チュートリアル講演


チュートリアル講演1

6月16日 (木) 13:30~15:10 D会場

「「富岳」における世界最大規模のディープラーニングへの挑戦」

田渕 晶大 氏
(富士通)

ディープラーニングは急速な発展を遂げ,そのモデル開発に必要な計算量も増加を続けている.計算量の多い学習をハイパーパラメータなどの条件を変えて何度も試行するためである.そのため,ディープラーニングのさらなる高性能化には,スーパーコンピュータのような多数の計算機を持つ高性能なシステムを大規模に活用して学習を行う技術が重要となっている.そこで本講演では,スーパーコンピュータ「富岳」を用いて大規模に複数のモデル学習を同時に行い,学習性能を測るベンチマークで世界一を達成した際の取り組みについて紹介する.

[ 略歴 ]
2013年 筑波大学情報学群情報科学類卒業
2018年 同大学大学院システム情報工学研究科博士後期課程修了.博士(工学).
2018年 富士通研究所(現富士通)入社,現在に至る.
コンパイラやディープラーニングの大規模分散学習など高性能計算の研究開発に従事.

チュートリアル講演2

6月17日 (金) 10:00~11:40 D会場

「全ては1量子ビットから始まる:量子×AIによる量子アドバンテージ時代の幕開け」

Rudy Raymond 氏
(日本IBM東京基礎研究所研究員/東京大学非常勤講師/慶應義塾大学プロジェクトリサーチャー)

IBMは2017年に5量子ビットのノイズ付き量子コンピューターを発表してからわずか4年半ほどで127量子ビットのEagleプロセッサーを搭載した量子コンピューターを稼働させ,人工知能や最適化などの分野で量子コンピューターを商用活用するための研究開発を加速させる.本講演では1量子ビットにおける量子アドバンテージを出発点にIBMの量子コンピューターを使って量子機械学習と最適化の最新手法を紹介する.参加者はIBM Quantumのサイト(https://quantum-computing.ibm.com/)で事前に登録してアカウントを取得することで本講演の内容の一部を体験できる.

[ 略歴 ]
量子ネットワーク符号と量子計算量に関する研究で2006年京都大学大学院情報学研究科博士課程修了.情報学博士.日本IBM東京基礎研究所にてアルゴリズムとデータ解析,最適化の研究に従事し,産業界における人工知能応用のプロジェクトに多数貢献.2017年から同研究所にて量子アルゴリズムとソフトウェアのテクニカルリード.最近の業績は変分量子アルゴリズムの新規手法でノイズ付き量子デバイスによる分類性能の改善と最適化の効率向上.情報処理学会量子ソフトウェア研究会の優秀発表賞(2021年),IEEE International Conference on Quantum Computing and Engineering (QCE)ベスト論文賞(2020年)と日本オペレーションズ・リサーチ学会待ち行列研究部会論文賞(2015年)を受賞.2018年から慶應義塾大学量子コンピューティングセンターにてIBM Quantum Network at Keio Universityのメンバー企業を支援し,実問題とデバイスに適した量子アルゴリズムの研究開発に従事.2019年から東京大学にてIBM Quantumによる量子コンピューティング入門の授業を担当.

チュートリアル講演3

6月14日 (火) 14:20~16:00 D会場

「自然言語処理とVision-and-Language」

西田 京介 氏
(日本電信電話株式会社 NTT人間情報研究所 特別研究員)

BERTやGPT-3に代表される,巨大なニューラルネットワークを大量のテキストで自己教師あり学習した汎用言語モデルの登場により,一部の自然言語理解のベンチマークタスクでは人工知能が人間のスコアを凌駕するまでに成長した.こうした大量のデータで事前に学習するアプローチは,Vision-and-Languageと呼ばれる画像情報と言語情報を組合せた課題解決を行う研究分野にも導入され,画像に対する質問応答などのタスクで大きな成果を挙げている.本チュートリアルでは,自然言語処理およびVision-and-Language分野について汎用モデルを中心に最新の動向を紹介する.さらに応用タスクとして,我々が取り組んでいる文書画像の読解について現在の到達点および今後の展望について触れる.

[ 略歴 ]
2008年 北海道大学大学院情報科学研究科 複合情報学専攻 博士後期課程 修了,博士(情報科学).
2009年 日本電信電話株式会社入社.2018年より特別研究員(現職).
言語処理学会年次大会最優秀賞(2018, 2021)・優秀賞(2019, 2020),ICDAR 2021 Competition on Document Visual Question Answering: Infographics VQA runners-up(2021),日本データベース学会上林奨励賞(2017),情報処理学会山下記念研究賞(2015)など受賞.

チュートリアル講演4

6月15日 (水) 13:20~15:00 D会場

「機械学習と公平性」

神嶌 敏弘 氏
(産業技術総合研究所)

機械学習やデータ科学は,与信,採用,保険などの重要な決定に使われるようになってきた.そこで,これらの決定を,人種や性別などのセンシティブ情報に対して公平性を担保しつつ行うような機械学習やデータ科学の手法が研究されている.前半では,機械学習の予測が不公平になる原因と,その原因ごとの事例を紹介する.そして,機械学習で用いられる形式的公平性規準について説明し,同時には達成できない規準があるといった性質を紹介する.後半では,機械学習で公平性に関わる課題を不公平発見と不公平防止に分け,それぞれについて代表的な手法を取り上げる.前者はデータやモデルに不公平な判断があるかを見つけるもので,後者は形式的公平性を保証しつつ予測する技術である.

[ 略歴 ]
1992年 京都大学工学部情報工学科卒業
1994年 同大学院工学研究科情報工学専攻修士課程修了
1994年 電子技術総合研究所入所
2001年 博士(情報学).
2001年 研究所は産業技術総合研究所へ再編.
データマイニングや機械学習,特にAI倫理や推薦システムに関する研究に従事.
2019年人工知能学会 AI ELSI賞.

チュートリアル講演5

6月15日 (水) 9:00~10:40 D会場

「AI哲学マップ – 人工知能と哲学の対話から新しい研究地図を作る -」

清田 陽司 氏
(LIFULL AI戦略室主席研究員)

三宅 陽一郎 氏
(スクウェア・エニックス AI部 ジェネラルマネージャー/リードAIリサーチャー)

人工知能学会誌 レクチャーシリーズ「AI哲学マップ」では,2021年から毎号,人工知能研究者と哲学者をお呼びして対話を収録してきた.その目的は,人工知能分野全体の形を,人工知能を包む哲学から見つめ直し,人工知能のこれからの可能性を描き出すことにある.また,第二次AIブーム期の人工知能と哲学の対話がその後に影響を残したように,第三次AIブームと言われるこの期間に,人工知能と哲学の対話を次の時代に向けて託すためでもある.人工知能学会「AIマップβ」は,AI分野全体を描き出す大きな仕事であり,「AI哲学マップ」はそこに哲学の層を加えることで,「AIマップβ」上にあるそれぞれの研究分野に,これまで思いもかけなかった角度,見過ごされてきた2つの分野の架け橋,新しい研究領野の発見を目指す.それによって人工知能研究者に新しい気付きや驚きを与えることをミッションとする.本プロジェクトは現在も継続中であり,これまで得た知見から構成した「AI哲学マップ」の全体像を提示する.

[ 略歴 (清田 陽司) ]
(株)LIFULL AI戦略室主席研究員.2004年京都大学大学院情報学研究科博士課程修了.東京大学情報基盤センターに助教として在籍中の2007年に東京大学発スタートアップ(株)リッテルを共同創業し,企業買収を経て2011年からLIFULLにて不動産テック分野の研究開発にたずさわっている.本誌編集委員長,情報科学技術協会理事,情報処理学会UBI研究会幹事などを担当.情報処理学会,言語処理学会,日本データベース学会,IEEE等各会員.東京大学空間情報科学研究センター客員研究員などを兼務.2018年より(株)メディンプル代表取締役を兼職.博士(情報学,京都大学).

[ 略歴 (三宅 陽一郎) ]
(株)スクウェア・エニックス AI部
ジェネラルマネージャー/リードAIリサーチャー.博士(工学,東京大学).2011年(株)スクウェア・エニックス入社,現職.立教大学大学院人工知能科学研究科特任教授,九州大学客員教授,東京大学客員研究員.本学会理事・シニア編集委員,日本デジタルゲーム学会理事,国際ゲーム開発者協会日本ゲームAI専門部会代表.著書に『戦略ゲームAI解体新書』(翔泳社)『ゲームAI技術入門』(技術評論社)『人工知能が「生命」になるとき』(PLANETS)『人工知能のための哲学塾』(BNN新社)シリーズ.