第62回 人工知能セミナー(2011.11.18)人間中心・現場中心のサービス工学技術


主催: (社)人工知能学会
日時: 2011年11月18日(金)
会場: キャンパスイノベーションセンター(田町)
照会先: account@ai-gakkai.or.jp
参加費: 会員 7,000円(賛助会員の社員の方も含みます)
非会員 9,000円,学生会員 2,000円,学生非会員 3,000円

概要

 現在、サービス産業の生産性向上に向けて、科学技術の貢献が強く望まれている。そのためには、サービス現場において、利用者やサービス業従事者と一体となって研究開発を進めることが重要である。サービス工学は、実サービスの観測、分析、設計、適応による最適設計ループを実行することでサービス産業の生産性向上とイノベーション促進を目指すものであり、これを工学的に加速するためには、現場で生成される大規模データを用いた計算モデル化と不確実性に対処した最適制御技術を確立することが必要である。 本セミナーでは、具体的なサービス産業の中で進められてきた現場中心、人間中心のサービス工学技術とその適用事例を紹介する。また、経済産業省、科学技術振興機構、社会技術研究開発センターなどが推進するサービス研究に関する取り組みを紹介する。

紹介する技術例

・ID-POSデータなどの大規模データからの顧客や商品を分類するカテゴリマイニング技術
・様々な状況下におけるサービスの需要予測技術
・顧客のライフスタイル理解のためのアンケート設計技術
・サービス現場におけるサービス提供プロセスと従業員スキル理解技術 など

プログラム

13:10-13:20 サービス工学のねらいと最近の研究動向

竹中毅(産業技術総合研究所)

概要:サービス工学の最近の動向とサービス工学の開発戦略について,日本や海外でのこれまでの取り組みを紹介する.また,これまでの産学官の議論をもとにサービス工学技術の開発戦略について議論する.


13:20 -13:50 大規模データに基づく生活者行動の理解

本村陽一(産業技術総合研究所)

概要:サービス工学の本質は、生活空間におけるサービス利用者と提供者の活動を対象とした計算モデル化と制御によるサービス品質とリソースの最適化である。生活者の活動を計算可能にするために大規模データを媒介とした計算モデル化技術、サービス現場への介入としての予測・最適化技術と適用手法を外食業、小売業、医療現場などにおける導入事例に基づき紹介する。こうした事例を通じてアクションリサーチの実践としてサービス工学の進め方を議論したい。


13:50-14:10 JST/RISTEX問題解決型サービス科学プログラムの取り組み

澤谷由里子(科学技術振興機構)

概要:2004年のイノベート・アメリカでのサービス科学創出の提言を契機に、日本においても多くの取り組みが行われている。科学技術振興機構 社会技術研究開発センターでは、2010年度から「問題解決型サービス科学研究開発」プログラムを開始した。本プログラムでは、サービス化する社会の問題やニーズをサービス・システムとして捉え、現場のデータを活用し、革新的な技術および統合・デザイン手法等を開発・検証することを目的とする。サービス科学研究開発では、異分野の研究者とサービス関与者との“価値共創 (Value Co-creation)”によって、サービス科学の基盤の構築と共に社会に実践的な価値を生み出していく。本講演では、このプログラムの取り組みを紹介する。


14:10-14:30 医療・介護サービスにおける場づくりと共創的イノベーション

三宅美博(東京工業大学)

概要:医療・介護サービスにおいて、サービス提供者は運動や認知の機能回復のように数値化しやすい側面を中心に改善を行ってきた。一方、利用者にとっては、人や社会とのつながりや生活改善のように数値化されにくい「場」的側面がより重要である。そこで本研究では、「場」を計測し評価するための基盤技術の確立、および、それに基づいて提供者と利用者の共創的サービスイノベーションを支援する場づくり手法について検討を進めている。


14:30-14:50 休憩


14:50-15:10 医療・介護サービス空間のコミュニケーション革新プロジェクトの目的と関連技術

平林裕治(清水建設技術研究所)

概要:JST/RISTEX問題解決型サービス科学プログラムの1プロジェクトである「音声つぶやきによる医療・介護サービス空間のコミュニケーション革新」の目的と計画、および関連するサービス科学技術について紹介する。「音声つぶやき」とは、ツイッターに代表されるリアルタイム性の高い情報共有の音声版。医療や介護などの行動型サービスでは、従来型の情報システムは利用時の負担感が課題であったが、行動推定により、適切な範囲で「音声つぶやき」を共有する技術により、負担を感じさせずに看護師や介護士の職員間連携、記録、業務確認などの間接業務を支援することを目指している。


15:10-15:30 訪日外国人に対する観光旅行サービスの企画支援プロジェクトと要素技術

原 辰徳(東京大学)

概要:本プロジェクトでは、訪日外国人の誘致が喫緊の課題である観光産業を題材に、顧客経験と設計生産活動の解明を通じて、顧客の異質性に対応するためのサービス科学の研究開発基盤を構築する。具体的には、外国人旅行者の立場から観光資源を再評価し、製造業で培われた部品化や再構成論理と組み合わせることで、魅力的かつ多彩な観光ツアーを短期間で設計・提供できるようにそのプロセスを高度化する。本講演では研究構想を紹介した後、現在実施中である(1)訪日外国人の観光行動に関する統計調査、(2)GPSロガーを用いた観光行動の時空間的調査、および(3)観光ツアーのサービス・システムのモデル化について報告する。


15:30-15:50 小売サービスにおける顧客フィードバック情報の全社的活用

原 垣花義浩(トリンプ・インターナショナル・ジャパン),本村陽一(産業技術総合研究所)

概要:小売サービスにおいては、カード会員のIDや購買履歴データなど大規模データの収集が進んできている。本発表では、産業技術総合研究所との共同研究において進めているID-POSデータなどの顧客フィードバック情報の全社的に活用する情報インフラ構築、店内プロモーションや店舗内のサービス最適化などの取り組みを紹介する。


15:50-16:10 顧客行動に基づく需要予測技術の開発

竹中 毅(産業技術総合研究所)

概要:大規模データを用いた小売・外食サービスにおける需要予測技術,顧客と商品のカテゴリマイニング技術について紹介する.また,ライフスタイルに着目した顧客行動理解技術について紹介する。


16:10-16:30 外食産業におけるサービス工学の実践

新村 猛(がんこフードサービス株式会社)

概要:外食産業は日本の就労人口の7%を占める主要産業でありながら、これまであまり科学的な介入が行われてこなかった。本発表では、行動観測技術をもとにした従業員スキルの理解、POSシステムを応用したサービス提供プロセスの改善技術、顧客理解のためのデジタルメニュー・アンケートシステム、購買履歴分析による顧客行動解技術など、外食産業におけるサービス工学の一連の取り組みを紹介する。


16:10-16:30 休憩


16:40-17:30 総合討論

指定討論者:大隈隆史

概要:サービス産業の生産性向上に向けての今後の課題、研究戦略について議論する。サービスの研究に関わる多くの事業者、研究者間での問題意識の共有を目指す。


第62回人工知能セミナー 参加申し込み

人工知能セミナー参加費
正会員・賛助会員 学生会員 学生非会員 非会員
7,000円 2,000円 3,000円 9,000円