第41回 人工知能学会(2001.11.12)コミュニケーションの原点を探る - 言葉がわかるとは? 心が通じるとは? ロボットの言葉とは? -


主催: (社)人工知能学会
日時: 2001年11月12日(月)10:30~17:00
会場: 早稲田大学 国際会議場 3階 第3会議室
(新宿区 西早稲田 1-6-1 Tel. 03-5286-1755)
照会先: account@ai-gakkai.or.jp
定員: 120名定員に達しましたので、参加申込みを締め切りました
協賛予定: (社)情報処理学会,(社)電子情報通信学会,
(社)日本音響学会,(社)計測自動制御学会,
(社)日本ロボット学会,(社)日本心理学会,
(社)電気学会,日本認知科学会,言語処理学会,
日本赤ちゃん学会 (順不同)
参加費: 会員 6,000円(協賛学会員,助賛会員の社員の方も含みます.),
非会員 10,000円,学生会員 2,000円,学生非会員 3,000円

概要

 近年,人間の言葉を使った対話技術が,ロボットやおもちゃにまで使われるようになってきました.しかし,次世代の技術を考える時,あらかじめプログラムされた言葉を扱うだけではなく,状況に応じた言葉を獲得する技術や,人間が前提としている「わかりやすさ」の背景にある心のモデルを真剣に考える必要があります.
 私達は通常,言葉を使って他人に自分の意思を通じさせることを当然のことと考えています.しかし人間の幼児がどのようにして言葉を話せるようになってゆくのか,そこには大きな謎があります. 大人達の発する様々な音の中から意味のあるまとまりを取り出し,そこに意味を見出し自分でも使えるようになるということは,まさに驚異です.このような観点から,まず,今井むつみ講師には,幼児の言語獲得に関する最新の知見についてご講演いただきます.
 また,私たちを取り囲む人工物の増加に伴い,これらに対しても自分の意図を効率的に伝える必要が増えつつあります.現在は,人間が各機械ごとにその言葉・使い方・インタフェースを覚えることを強制されている状況ですが,どのようにすれば機械に人間の言葉を理解させることができるのでしょうか? 岩橋直人講師には,このような観点から,ロボットに人間の言葉を獲得させる研究の最先端を紹介していただきます.
一方で私達が意思を伝達しようとする時,必ずしも言葉を使うとは限りません.言葉が出る前の乳児相手の場合や,大人同士の場合でも,言葉なしに「心が通じる」という感覚を我々は共通してもっています.それはどのようなことなのでしょうか?このような問題を扱う「心の理論」について,子安増生講師に,その枠組とそこから得られた知見をお話しいただきます.
 さらに山本淳一講師には,このような心に関する学問的な知見が,心の発達に障害を持つ子供に対する教育の場面で応用されている実例についてご講演いただきます.
 このセミナーが,情報の時代に生きる我々にとって,コミュニケーションとは何か,言葉とは何か,心とは何かを再考するきっかけとなり,人工知能分野での研究や知見が総合されて,人と人の間,人間と人工物の間をよりスムーズにつなぐ技術へとつながってゆくことが望まれます.多数の皆様のご聴講をお待ちしています.

プログラム


10:30~10:40 開会の挨拶


10:40~11:50「乳幼児におけることばの学習のメカニズム」

今井 むつみ氏 (慶應義塾大学)

概要:乳幼児は驚くべきスピードでことばを学習し,語彙を増やしていく. その背後には未知のことばに遭遇したときに暫定的に外延の一事例からそのことばの意味を推論するという即時マッピングのプロセス がある.本講演では乳幼児がどのようなバイアスと情報リソースをどのように用いて即時マッピングを行っているのかを議論する.


11:50~13:00 昼食休憩


13:00~14:10「人間とのインタラクションによるロボットの言語獲得」

岩橋 直人氏 (ソニーコンピュータサイエンス研究所)

概要: 日常の言語コミュニケーションは,対話者間で共有している認知的経験を基盤として成立するといえる.ロボットに対して,同じようなコミュニケーションを実現したい.身体性を反映した人間とのインタラクションを通してロボットが言語を獲得,運用できるようにする基礎的な試みについて紹介する.


14:50~15:50「バイオインフォマティクスシステム」

石川 佳史氏/谷嶋 成樹氏 (三菱スペース・ソフトウェア(株))

概要:バイオインフォマティクスの技術分野にはin silico解析と呼ばれる計算機シミュレーション技術,ウェット系実験におけるデータ処理技術およびウェット系実験の効率化を図るラボラトリーオートメーション技術がある.これら三分野からなる広義のバイオインフォマティクスを利用するための計算機およびソフトウェアシステムの概観について説明し,さらに,バイオインフォマティクス分野においてソフトウェアベンダーが提供すべきサービス像についての提案も行う.


14:20~15:30「心がわかるとはどういうことか?」

子安 増生氏 (京都大学)

概要:「人間の心」,「動物の心」,「機械の心」.私たちはいろいろな場面で「心」というものを感じます.この能力は,霊長類としての人類が,進化の過程で獲得し,発展させてきたものであり,今やそれをロボットに移植する試みが行われています.「過剰関連づけ」と「検証」という2つのプロセスに支えられたこの能力について, 1970年代末から発展してきた「心の理論」研究をご紹介しながら,考えてみたいと思います.


15:40~16:50
「『心の理解』に困難をもつ発達障害児をどう教育・支援するか?」

子安 増生氏 (京都大学)

概要:子どもたちは,幼少期からのまわりの人間とのかかわりの中で,相手のことばを理解したり,それによって相手の「心」を推測したり,対人関係を調整したりすることができるようになる.発達障害児(自閉症児,学習障害児,注意欠陥多動児)の中には,そのようなかたちで「心」を理解することが困難であるようにみえる子どもたちがいる.「心の理解」が困難であるとはどういう状態なのか?何故,「心の理解」が困難であるのか?それは,個人の行動システムとして,また個人と環境との相互作用システムとしてどのように記述,説明できるのか?「心の理解」を教育・支援していくためには,「具体的に」どのような理論と方法論が必要であるのか?これらのことについて,私たちが行ってきた一連の研究を紹介しながら,「心の理解」をめぐる最新の行動科学,発達臨床心理学,発達障害学の知見について述べていく.


16:50~17:00 閉会の挨拶


第41回人工知能セミナー 参加申し込み受付終了

定員に達しましたので、参加申込みを締め切りました

人工知能セミナー参加費
正会員・賛助会員 学生会員 学生非会員 非会員
6,000円 2,000円 3,000円 10,000円