人工知能学会 倫理委員会は、今後の人工知能研究コミュニティにおけるダイバーシティ&インクルージョンの推進や、情報系の各学会との連携強化について議論するシンポジウムを、2021年2月15日(月)にオンライン開催します。

シンポジウム開催のねらい

人工知能学会では、会誌「人工知能」2020年9月号にて特集「ダイバーシティとAI研究コミュニティ」を企画し、ジェンダー(性別・LGBTQ)・国籍・AIエージェントへのキャラクタ付与など、ダイバーシティに関わるさまざまな課題についての7編の記事を掲載しました。
本学会発行の「AIマップβ」には、本学会が多様な分野を背景にもつ研究者の参入を歓迎し、分野に関してのダイバーシティを高めながら発展を遂げてきた経緯が反映されています。一方で、別の軸から本学会の現状を見ると、いくつかの課題が指摘されます。2010年以降に本学会に入会した会員 約3600名に占める女性の割合は7%に満たず、ジェンダーについての大きな偏りがあります。全国大会や研究会、各種委員会などの開催形態は、育児や介護、心身の障害など、さまざまな個人的事情を抱えた人々にとっては、参加しやすいとはいえないかもしれません。このような課題の存在によって重要な問題が見落とされ、人工知能研究の遂行や社会実装、社会との対話がスムーズにいかないケースが多々見られることは、上記特集の各記事においても指摘されています。
ダイバーシティ&インクルージョンは、世界各国の情報系研究コミュニティ全般でも大きな課題とされています。国際会議や国際誌の運営メンバーの選定にもダイバーシティが要件とされるようになっていることから、日本の研究コミュニティのプレゼンスの観点でも、重要な課題となっています。
本学会倫理委員会では、会誌2020年9月号特集の内容をベースに、本学会や情報系研究コミュニティにてダイバーシティ&インクルージョンに関わる活動をされている方々による議論を行い、広く課題を共有し、今後の具体的なアクションにつなげることを目的に、シンポジウムを開催することになりました。本学会の会員の方々はもちろん、人工知能研究の今後の発展に関心をお持ちの方々のご参加を歓迎いたします。
なお、今回のシンポジウム開催に際して、特集「ダイバーシティとAI研究コミュニティ」の全8記事を無料公開いたします。参加者の方々におかれましては、ぜひ記事にお目通しいただき、ダイバーシティ&インクルージョンの課題への理解の一助につなげていただけると幸いです。

シンポジウム概要

主催:人工知能学会 倫理委員会
日時:2021年2月15日(月)15:00-17:00(14:45より入室可能)
場所:Zoomウェビナーによるオンライン開催
参加費:無料
参加方法:以下のフォームより参加をお申し込みください。開催の1週間前までにZoomウェビナーへの参加方法をご案内いたします。
【参加申込フォーム】

プログラム

15:00-15:05 開会ご挨拶(倫理委員会 委員 江間 有沙)
15:05-15:15 趣旨説明・論点の整理(編集委員会 委員長 清田 陽司)【スライド
15:15-16:00 各登壇者からの講演(各15分)
 伊藤 貴之 氏(お茶の水女子大学)【スライド
 坊農 真弓 氏(国立情報学研究所)
 橋本 隆子 氏(千葉商科大学)【スライド
16:00-16:10 休憩
16:10-16:55 パネルディスカッションと質疑応答
 パネリスト:伊藤 貴之 氏、坊農 真弓 氏、橋本 隆子 氏
 司会:清田 陽司
16:55-17:00 閉会ご挨拶(倫理委員会 委員長 武田英明)

登壇者/司会者 プロフィール

伊藤 貴之 氏(お茶の水女子大学)
1992年早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了、日本アイ・ビー・エム株式会社東京基礎研究所研究員。1997年早稲田大学より課程外で博士(工学)。2003年京都大学COE研究員(客員助教授相当)兼職。2005年お茶の水女子大学理学部情報科学科助教授、2011年同大学教授。2011〜2017年に同大学シミュレーション科学教育研究1センター長。2019年から同大学文理融合AI・データサイエンスセンター長兼務。情報可視化、マルチメディア、インタラクションなどの研究に従事。2020年10月から日本学術会議連携会員として、第三部理工学ジェンダー・ダイバーシティ分科会に所属。
坊農 真弓 氏(国立情報学研究所)
2005年神戸大学大学院総合人間科学研究科博士課程修了。(株)国際電気通信基礎技術研究所メディア情報科学研究所研究員。京都大学大学院情報学研究科研究員、日本学術振興会特別研究員(PD)を経て、2009年より国立情報学研究所・総合研究大学院大学助教。2014年より同准教授。多人数インタラクション研究および手話・指点字・触手話などのマイノリティ相互行為研究に従事。2020年6月から情報処理学会Info-WorkPlace委員会委員長を担当し、育児中・介護中といった様々なライフイベントの只中にいる会員の発想などの取り込みと、情報処理分野全体の発展に向けた取り組みを行っている。博士(学術)。
橋本 隆子 氏(千葉商科大学)
千葉商科大学 副学長、商経学部 教授 国際センター長。博士(工学)。お茶の水女子大学理学部卒業後、(株)リコーにソフトウェア研究者として勤務。2009年4月より千葉商科大学准教授。2015年4月より教授。2016年4月経済研究所所長、2019年4月国際センター長就任。データマイニング、ソーシャルメディア解析の研究を行う傍ら、女性技術者支援の活動も推進。IEEE Women In Engineering Committee 会長(2015~2016)、IEEE MGA Membership Recruitment Recovery Committee 会長(2017〜2018)、内閣府男女共同参画推進連携会議議員(2013~2015)、ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ外部評価委員(2016〜 )、総務省国立研究開発法人審議会専門委員(2017〜 )、日本学術会議連携委員(情報学)(2017〜2023)などを歴任。2019 IEEE MGA Larry K. Wilson Transnational Award を受賞。情報処理学会フェロー。
司会: 清田 陽司(株式会社LIFULL)
2004年京都大学大学院情報学研究科博士課程修了。2004〜2012年東京大学情報基盤センター 助手・助教・特任講師として、自然言語処理アプリケーションや図書館情報ナビゲーションシステムの研究に従事。2007年に大学発スタートアップ(株)リッテルを共同創業し、ビッグデータ処理基盤の事業展開などに取り組む。企業買収を経て、2011年から(株)LIFULL 主席研究員として不動産テック分野の研究開発やデータ資源の共有を通じた産学連携推進に従事。2014〜2018年 人工知能学会編集委員、2018〜2020年 同編集委員会副委員長を経て、2020年から同編集委員長を担当し、特集「ダイバーシティとAI研究コミュニティ」企画などを実施。東京大学空間情報科学研究センター客員研究員、(株)メディンプル代表取締役などを兼務。博士(情報学)。

コメント・質問の受付と参考資料

質問フォーム

2021年2月15日のシンポジウムに向けて、人工知能研究コミュニティにおけるダイバーシティ&インクルージョンに関するコメントや質問を受け付けます。寄せられたコメントや質問に関して、できるだけシンポジウムで言及し、建設的な対話を深めるための第一歩としていきたいと考えています。
以下の質問フォームから皆さまのご意見やコメントをお寄せください。
【質問フォーム】

参考資料

本シンポジウムで議論の対象となるダイバーシティ&インクルージョンをめぐるさまざまな課題への理解を促進するとともに、建設的な対話を促すことを目的に、会誌「人工知能」2020年9月号の特集「ダイバーシティとAI研究コミュニティ」の全記事を2021年1月6日より無料公開しています。ぜひ事前にお目通しいただくとともに、身近な方々とこのテーマについて語り合う材料としていただけると幸いです。
人工知能 Vol. 35, No. 5(2020年9月号)特集「ダイバーシティとAI研究コミュニティ」

問い合わせ先(メディア取材専用)

清田:kiyota[atmark]csis.u-tokyo.ac.jp