Vol.28 No.4 (2013/04) 情報検索インタフェース(Search User Interface)


私のブックマーク

情報検索インタフェース(Search User Interface)

山本 岳洋(京都大学大学院 情報学研究科)

Takehiro Yamamoto(Graduate School of Informatics, Kyoto University)

はじめに

Googleに代表されるように,大量のデータから目的となる情報を探し出すための情報検索システムは,我々の生活において欠かせない存在となっています.本稿では,情報検索の中でも「情報検索インタフェース」というテーマで,関連する情報源を紹介したいと思います.情報検索インタフェースという研究には2つの側面があり,「使いやすい,新しい検索インタフェースを実現する」という目的と同時に.さまざまなインタフェースで得られた知見から「人はどのように情報を探すのか?」という普遍的な問いを明らかにしようとする面もあると考えています.実際,情報検索インタフェースに関する研究は,検索システムのユーザインタフェース的側面のみにとどまらず,ユーザとシステム間のインタラクション,あるいはユーザの情報探索行動における認知的な側面などに関連した研究がなされています.

特に,近年では探索的検索(Exploratory Search)HCIR(Human-Centered Information Rerieval)と呼ばれる,より人間中心の立場から情報探索行動を捉えようとする動きが高まってきており,情報検索インタフェース研究の重要性は増してきていると感じています.本稿では,こうした情報検索インタフェースの研究領域で,私が実際に参考にしている情報源をご紹介いたします.なお,情報検索に関しては,本誌企画の私のブックマーク「情報検索」にまとめられていますので,ご参照いただければと思います.
本稿で紹介する情報は一部そちらと重複がありますが,ご了承ください.

国際会議・コミュニティなど

まず,情報検索インタフェースに関連する国際会議を紹介します.なお,リンクは基本的に2013年5月時点で最新の会議のホームページに対して張っています.

以下は情報検索に関する主な国際会議です.

ACM SIGIR(ACM Special Interest Group on Information Retrieval)
ACM WSDM(ACM International Conference on Web Search and Data Mining)
ACM CIKM(ACM Conference on Information and Knowledge Management)
ECIR(Annual European Conference on Information Retrieval)
WWW(International World Wide Web Conference)
WWWは会議のホームページから論文が自由に取得可能です.

また,情報検索インタフェースに関する研究はHCI系の会議でも多く発表されています.

ACM CHI(ACM SIGCHI Conference on Human Factors in Computing Systems)
ACM UIST(ACM Symposium on User Interface Software and Technology)
IUI(International Conference on Intelligent User Interfaces)
個人的な印象ですが,UISTには面白いアイデアを実装した検索インタフェースが提案されることが多く,CHIには人間の検索行動の分析に焦点を当てた研究が多いように思います.

上記以外にも,画像,音声といったマルチメディアや可視化に関する国際会議にも多くの研究があります.可視化に関するより詳しい情報源についても,本誌企画の私のブックマーク「情報可視化」をご参照いただければと思います.

ACM MM(ACM International Conference on Multimedia)
ISMIR(International Society for Music Information Retrieval)
IV(International Conference Information Visualisation)

インタフェースや対話的なシステムに関する研究の関心事の1つに,「システムをどのように評価すべきか」という評価の方法論が挙げられます.以下に紹介する2つのコミュニティでは,共通の検索タスクに対して,複数の参加者が検索システムを作成しタスクに取り組むことで,参加者のシステムの評価だけではなく,その評価方法をどのように構築すべきかというところまで含めた議論が行われています.

NTCIR(NII Test Collection for IR Systems)
国立情報学研究所(NII)が主導して開催している,情報アクセスに関する評価型のワークショップで,2013年の時点ではNTCIR-10が開催されています.NTCIR-9ではVisExタスク(情報可視化を用いた対話的探索タスク)において,イベント収集,トレンド要約といった共通の検索タスクのもとで,タスク参加者が用意したシステムを共通のフレームワークで評価することで,対話的・探索的な情報システムの評価方法の議論がなされたようです.
HCIR(Symposium on Human-Computer Interaction and Information Retrieval)
HCIRに関する研究全般を扱った,比較的新しいシンポジウムです.このシンポジウムでも,共通の検索タスクに対して,参加者が対話的な検索システムを提案して共同で評価するという試みが行われているようです.

また,情報検索インタフェースに関する,国内の主な会議・研究会としては以下のものがあります.

情報処理学会 情報基礎とアクセス技術研究会(IFAT)
情報処理学会 ヒューマンコンピュータインタラクション研究会(HCI)
情報処理学会 データベースシステム研究会(DBS)
人工知能学会全国大会(JSAI)
Webインテリジェンスとインタラクション研究会(ARG WI2)
Webとデータベースに関するフォーラム(WebDB)
データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIM)
インタラクティブシステムとソフトウェアに関するワークショップ(WISS)
インタラクション

書籍

次に,情報検索インタフェースを扱った書籍について紹介します.以下に紹介する書籍のうち,いくつかはウェブで公開されており,自由に読むことが可能です.情報検索インタフェースの研究の歴史を把握し,近年の研究動向をつかむには,非常に適したコンテンツだと思います.

『Search User Interfaces』
ファセット型検索で知られるMarti A. Hearstによる,情報検索インタフェースをテーマとした数少ない書籍です.こちらから無料で読むことができるため,情報検索インタフェースに関する研究に興味のある方はぜひアクセスしてみてください.

『情報検索のためのユーザインタフェース』
こちらは上記書籍の邦訳になります.

『Methods for Evaluating Interactive Information Retrieval Systems with Users』
対話的な情報検索システムの第一線の研究者であるDiane Kellyによる,対話的な検索システムに関する概念と評価手法を体系的にまとめた書籍です.なお,こちらもウェブで無料で読むことができます.この本は,検索インタフェースのみならず,これから情報検索に関わる研究を始めようする人であれば一度は目を通しておくべき書籍だと思います.

『インタラクティブ情報検索システムの評価-ユーザの視点を取り入れる手法』
2013年4月に出版された,上記書籍の邦訳になります.

『The Turn』
検索インタフェースも含め,「人が情報を探す」ことに関連する広範な研究領域を網羅した書籍です.こちらも邦訳として『情報検索の認知的転回』

があります.

検索インタフェースの事例

ここでは,学術的な検索システムや,商用の検索システムを含め,上記で挙げた国際会議や書籍などでよく引用されている検索インタフェースの中から,いくつかピックアップして紹介します.学術目的で提案された検索システムで,ウェブを通じて自由にアクセス可能なものはなかなか無いのですが,現在でも実際にアクセス可能なシステムについては,そのURLもあわせて紹介しますので,興味のある読者の方は実際にアクセスしてシステムを体験していただければと思います.

クラスタリング型検索

システムが類似する検索結果を自動的にクラスタリング(グルーピング)し,ユーザに提示するクラスタリング型検索を扱った研究としてはScatter&GatherFindexがあり,現在でもアクセス可能な商用の検索エンジンとしてはClustyがあります.

ファセット型ナビゲーション

検索対象となるコンテンツを,文字列の検索クエリだけではなく,ファセット(観点)に基づいて探索していくシステムとして,ファセット型のナビゲーションが知られています.なかでも,Hearst教授によるFlamencourl1url2url3)が最も有名です.ファセットを用いたナビゲーションは商品検索やホテル検索などをはじめとして多くの商用検索システムで利用されている検索方式です.

検索結果に対する情報の付加

TileBarsは,ユーザが入力した検索クエリ中の単語が,ウェブページのどこに出現(適合)しているかを,
検索結果ページ上で,タイル型のインタフェースを用いて可視化したシステムです.ほかにも,タイル型のインタフェースを用いて,検索クエリとウェブページがどの程度適合しているのかを可視化したシステムとしては,HotMapAspecTilesなどがあります.また,適合性以外の尺度を可視化し,それが検索者の検索結果に対する信憑性判断に与える影響を分析した研究としてCowSearchがあります.

検索結果のサムネイル生成

Googleで検索をすると,検索結果がどのようなページなのかを検索結果ページ上でプレビュー表示することができます.このときのサムネイルの生成方法について研究したものとして,Woodruffらの研究や,WildThumbVisual Snippetsなどがあります.

2次元,3次元空間への提示

検索対象となるコンテンツを2次元や3次元空間上に配置する研究も多く行われています.2次元空間上に可視化する研究としては,webSOMTreeMapInfoSkyなどが,3次元空間上に可視化する研究としては,DataMountainConeTrees,また,学術ではないですが,search-cubeというシステムも公開されています.

検索結果に対するインタラクション

検索結果ページやテーブルなどの構造化されたウェブページを対象として,ユーザ側に自由に再ランキングやフィルタリング,ソーティングなどの機能を提供する仕組みとして,ShifterRerankurl),RerankEverythingurl)などがあります.

モバイル検索インタフェース

モバイル環境における検索インタフェースとしては,FaThumbMobile Findexなどが提案されています.両者とも,ファセットやクラスタリング型の,検索結果をグルーピングして提示する検索インタフェースです.

日本の企業による実証実験サイト

日本の商用検索エンジンを提供しているウェブサイトでは,実証実験的なページを設けて,実サービスとして運用する前段階の検索システムを実験的に公開しているところもあります.たとえば,Yahoo! JapanにはYahoo! ラボと呼ばれる実証実験サイトがあり,多くのサービスが公開されています.本稿を執筆時点では,検索インタフェースに関連する実験システムとして,Fasion NaviVisual Seekerなどが公開されています.また,NTTレゾナントが運営するGooでも,Gooラボという名前でさまざまなシステムが公開されており,検索インタフェースに関連したものとしては,かわいい検索Search Naviなどがあります.

おわりに

本稿では,「情報検索インタフェース」というテーマで関連する情報を紹介しました.情報検索インタフェースは,情報検索の一研究分野ではなく,HCI,情報図書館学,あるいは社会科学まで含めた,学際的な研究領域だと考えています.本稿で紹介した内容が,そうした情報検索インタフェース研究に興味を持ってくださるきっかけになれば幸いです.