私のブックマーク
マルチエージェントシステム
名古屋工業大学大学院工学研究科
伊藤孝行
itota@ics.nitech.ac.jp
1. はじめに
本稿では,マルチエージェントシステムの研究に関連するページを紹介する.ここでは,分散人工知能(DAI)という観点からの関連ページを中心に紹介する.マルチエージェントシステムは,複数のエージェントを対象とした分野である.そのため,単体のエージェントに関するページも深く関連する.単体のエージェントに関するブックマークの紹介として,本連載の「知的エージェント(WWWを中心に)」(https://www.ai-gakkai.or.jp/jsai/journal/mybookmark/14-5.html)がある.
本稿の構成は,2章で,マルチエージェントの入門や概要に関するページ,および,様々な関連ページをあつめたポータルサイトを紹介する.3章では,マルチエージェントシステムの分野の研究者が論文を発表するジャーナル,国際会議,および協議会に関するページを紹介する.4章では,マルチエージェントシステムに関して,国際的に著名な研究グループおよび研究プロジェクトのページを紹介する.5章では,関連の深い分野のページを紹介する.最後に6章でまとめる.
2. マルチエージェントシステム入門とポータルサイト
マルチエージェントシステムとは何か?といった,入門や概要を示したホームページとして,以下のURLがある.
- AI TopicsのMulti-Agent Systemsのページ(http://www.aaai.org/AITopics/html/multi.html)
マルチエージェントシステムの概要,文献ガイド,および有用なリンク集が示されている.
著名な研究者らによる大学の講義用ページには,スライドや配布用資料が公開されており,参考になる.
- Michael Wooldridge教授によるIntroduction to Multiagent
Systemsという入門書のページ(http://www.csc.liv.ac.uk/~mjw/pubs/imas/)
M.Wooldridge教授は,時相論理に基づくエージェント間の協調や交渉に関する研究を行っている. - Jeff Rosenschein教授の講義用ページ(http://www.cs.huji.ac.il/~imas/)
J. Rosenshein教授は,ゲーム理論を用いたエージェント間交渉の解析を行っている.
マルチエージェントシステム関連のページへのポータルサイトを以下にあげる.
- MultiAgentSystems(http://www.multiagent.com/)
最新記事がニュースサイトのように更新されていく.マルチエージェントシステムに関するニュース,会議,研究グループ等への多数のリンクが収録されている. - UMBC AGENTS(http://agents.umbc.edu/)
マルチエージェントシステムを含む,エージェントに関連する話題が集められている. - AgentLink(http://www.agentlink.org/)
欧州におけるエージェントに関する話題が豊富に集められている.
3. ジャーナル,国際会議,および競技会
マルチエージェントシステムの専門論文誌を以下にあげる.マルチエージェントシステムの分野では,AIの分野の研究者が多いことから,以下のAI関連の論文誌にも多くのマルチエージェントシステム関連の論文が発表されている.
- Journal of Autonomous Agents and Multi-Agent Systems(JAAMAS)(http://www.kluweronline.com/issn/1387-2532)
- Artificial Intelligence Journal(http://www.elsevier.nl/locate/artint)
- Journal of Artificial Intelligence Research(http://www.cs.washington.edu/research/jair/home.html)
関連する国際会議を以下にあげる.
- AAMAS2003(International Joint Conference on Autonomous Agents and Multi-Agent Systems)(http://www.aamas-conference.org/)
マルチエージェントシステムの研究のメインの国際会議と言える.今年で第2回目であり,オーストラリアのメルボルンで開催される.採択率はおよそ25%である.AAMASは,以下の3つの国際会議とワークショップが共同で開催する国際会議である.
- AGENTS(International Conference on Autonomous Agents)(http://autonomousAgents.org/)
- ATAL(International Workshop on Agent Theories, Architectures, and Languages)(http://mas.cs.umass.edu/atal/)
- ICMAS(International Conference on Multi-Agent Systems)
会議録(http://www.informatik.uni-trier.de/~ley/db/conf/icmas/)
その他にも下記の国際会議・ワークショップがある.
- PRIMA(Pacific Rim International Workshop on Multi-Agent systems)(http://www.lab7.kuis.kyoto-u.ac.jp/prima/)
PRIMA2003(http://prima.uos.ac.kr/)は韓国のソウルで開催される. - CIA2003(International Workshop on Cooperative Information Agents)(http://www.dfki.de/~klusch/cia2003.html)
- CoopIS2003(International Conference on Cooperative Information Systems)(http://www.cs.rmit.edu.au/fedconf/coopis/2003/)
- IAT2003(IEEE/WIC International Conference on Intelligent Agent Technology)(http://www.comp.hkbu.edu.hk/IAT03/)
日本では,エージェント合同シンポジウムJAWSが開催されている.JAWSは,以下の4つのエージェントに関連する各学会の研究会が合同で行うシンポジウムである.
- ソフトウェア科学会のマルチエージェントと協調計算研究会(MACC)(http://www.kecl.ntt.co.jp/csl/ccrg/events/macc/)
- 電子情報通信学会人工知能と知識処理研究専門委員会(http://www.ieice.org/iss/ai/jpn/index.html)
- 情報処理学会知能と複雑系研究会(http://research.nii.ac.jp/sigics/)
- 人工知能学会知識ベースシステム研究会(http://www.carc.aist.go.jp/sig-kbs/)
また,マルチエージェントシステムの分野には,AI研究者が多いことから,AI学会に関連の深い以下の会議等にも,マルチエージェントシステムに関する最先端の論文が発表されている.
- IJCAI(http://www.ijcai.org/)
IJCAI03(http://www.ijcai-03.org/index.html)はメキシコで開催される. - AAAI(http://www.aaai.org/)
- ECAI
ECAI2004(http://www.dsic.upv.es/ecai2004/)はスペインで開催される. - PRICAI
PRICAI2002(http://pricai-02.nii.ac.jp/)は東京で開催された.
マルチエージェントシステムの研究では,複数のエージェントの協調・交渉機構の設計が重要となる.各研究者が提案した協調・交渉機構の有用性を示すために,現実世界をモデル化した様々なテストベットが提案されている.そして,これらのテストベットを用いた競技会が開催されている.競技会を開催することによって,参加者の競争意識を高め,より洗練された成果が期待できる.
- RoboCup (http://www.robocup.org/)
サッカーを題材とした競技会で,2050年にはワールドカップで人間のチームにロボットのチームが勝利するという具体的な目標も設定されている.RoboCup2003(http://www.robocup.org/games/03Padova/317.html)は,イタリアのPaduaで開催される. - RoboCup Rescue(http://www.r.cs.kobe-u.ac.jp/robocup-rescue/)
RoboCupから派生した競技会で,都市の大規模災害支援を題材とした競技会である.シミュレーション部門とロボット部門があり,年々規模が拡大している. - TAC(Trading Agent Competition)(http://www.sics.se/tac/page.php?id=1)
電子商取引やオークションを対象とした競技会である.TAC2003では,複数のオークションでのショッピングを行う競技に加え,サプライチェーンマネージメントに関する競技も加えられた.
4. 研究者,研究グループおよびプロジェクト
ここでは,国際的に著名な海外のマルチエージェントシステムの研究者,研究グループおよびプロジェクトを紹介する.
- CMU Software Agent Group(http://www-2.cs.cmu.edu/~softagents/)
Katia Sycara教授が率いるグループのページ.世界的にマルチエージェント研究の先導的な役割を果たしているグループである.マルチエージェントシステムに関するテーマのほとんどをカバーしている. - Agents@USC(http://agents.usc.edu/)
USC(南カリフォルニア大学)のエージェント研究に関するグループ. - TEAMCORE Research Group(http://www.isi.edu/teamcore/)
Agents@USCのグループの一つ.Milind Tambe助教授が率いるグループのページ.マルチエージェントのチームを元にしたアプリケーションが開発されている. - Southampton大学,Nick Jennings教授のグループ(http://www.ecs.soton.ac.uk/~nrj/)
近年は,マルチエージェントシステムのオークション支援やビジネスプロセスマネージメントが中心に行われている. - MIT, Software Agents(http://agents.media.mit.edu/index.html)
Pattie Maes教授が率いていたグループのページ.Pattie Maes教授はすでにMedia Lab.を去っているが,過去のソフトウェアエージェントの研究を知るためには有益なページ. - UMASS Multi-Agent Systems Group(http://dis.cs.umass.edu/)
Victor Lesser教授の研究室.協調分散問題解決,交渉,組織等の研究を行っている. - IBM Information Economics Project(http://www.research.ibm.com/infoecon/)
IBMの情報経済に関するプロジェクト. - DFKI Multiagent Group (http://www.dfki.de/dmas/mu_m_ueb.htm)
ドイツの人工知能研究所におけるマルチエージェント研究グループ.電子商取引やインターネット上の情報エージェントに関する研究を行っている. - Stanford大学,Yoav Shoham助教授(http://robotics.stanford.edu/~shoham/)
AIでは多数の実績があり,ゲーム理論や電子商取引に関する研究を行っている. - CMU,Tuomas Sandholm助教授(http://www-2.cs.cmu.edu/~sandholm/)
組み合わせオークション,提携形成等に関する理論的な研究を行っている. - タルサ大学,DAI Hards (http://www.mcs.utulsa.edu/~research/)
Sandip Sen助教授が率いるグループ.GAや強化学習に基づくマルチエージェントシステム,提携形成および会議スケジューリングに関する研究を行っている. - ミシガン大学AI研究所(http://ai.eecs.umich.edu/)
マルチエージェントシステムの分野での著名な以下の研究者が在籍している.
- Edmund H. Durfee (http://ai.eecs.umich.edu/people/durfee/durfee.html)
- Martha E. Pollack (http://www.eecs.umich.edu/~pollackm/)
- Michael Wellman (http://ai.eecs.umich.edu/people/wellman/index.html)
- ワシントン大学SoftBot研究グループ(http://www.cs.washington.edu/research/projects/WebWare1/www/softbots/softbots.html)
Oren Etzioni助教授率いる研究グループ.ページ自体はふるいがSoftBotなどの独創的な成果を閲覧できる. - HP LABsのエージェントグループ(http://www.hpl.hp.com/agents/)
自動入札エージェントに関する成果をはじめとして様々なエージェント研究が行われている. - IBM Research Lab in HaifaのOnn Shehory博士(http://www.cs.biu.ac.il/~shechory/)
マルチエージェントの提携形成や電子商取引への応用などの研究を行っている. - Bar-Ilan UniversityのSarit Kraus博士(http://www.cs.biu.ac.il/~sarit/)
マルチエージェントの交渉・協調機構に関する研究を行っている.
5. 関連分野
マルチエージェントシステムの分野は,計算機や社会科学等,様々な分野との関係が強い.最後に,マルチエージェントシステムに深く関連する分野をあげておく.
【ゲーム理論と電子商取引】
ゲーム理論に関する入門ページは,非常にたくさん存在する.www.google.co.jpなどの検索ページで「ゲーム理論」と入力すれば,日本語でも良質な入門ページにたどり着くことができる.
- Game and Economic Behaviour(http://www.elsevier.com/locate/issn/0899-8256)
ゲーム理論やミクロ経済に関する論文誌.経済学者の論文が中心である. - Hal Varianのページ(http://www.sims.berkeley.edu/~hal/)
情報経済学に関する先導的な経済学者.エージェントによる組み合わせオークションの論文もある. - ACM SIGecom (http://www.acm.org/sigecom/)
ACMの電子商取引に関するSpecial Interest Group.毎年,ACM Conference on E-Commerce (EC03) (http://cs.gmu.edu/~menasce/ec03/s/ec03.htm)を開催している.
【マルチエージェント強化学習】
強化学習において,学習する主体が複数になった場合,マルチエージェント強化学習と呼ぶ場合がある.
- GECCO 2003 (http://gal4.ge.uiuc.edu:8080/GECCO-2003/)
強化学習,遺伝的アルゴリズム,遺伝的プログラミング等の研究者が集まる会議.マルチエージェント強化学習に関する成果も発表されている. - Reinforcement Learning: An Introduction (http://www-anw.cs.umass.edu/~rich/book/the-book.html)
R.S. SuttonとAndrew G. Bartoらによる強化学習に関する入門書をオンライン上で公開している.
【モバイルエージェント】
エージェントの具体的な実装方式の一つとして,モバイルエージェントがある.会議やワークショップとしては以下がある.
- 5th International Workshop on Mobile Agents for Telecommunication Applications (http://www-rp.lip6.fr/MATA03/)
- 6th IEEE International Conference on Mobile Agents (http://www.coginst.uwf.edu/ma2002/)
具体的なモバイルエージェントシステムとしては以下がある.
- IBM, Aglets (http://www.trl.ibm.com/aglets/)
- Toshiba, Plangent (http://www2.toshiba.co.jp/plangent/index_plangent_j.htm)
- Toshiba, picoPlangent (http://www2.toshiba.co.jp/plangent/)
- The University of Stuttgart, MOLE(http://mole.informatik.uni-stuttgart.de/)
- Dartmouth College, D’ Agents(http://agent.cs.dartmouth.edu/)
- AgentSpace/MobileSpaces (http://research.nii.ac.jp/~ichiro/agent/index.html)
- オムロン, Jumon(http://www.e-jumon.com/)
- Voyager (http://www.recursionsw.com/products/voyager/voyager.asp)
6. おわりに
本稿では,マルチエージェントシステムに関連するページを紹介した.マルチエージェントシステムは,AIやエージェントをはじめとして,様々な分野と密接な関係があり,すべてを網羅的に紹介することは困難である.そこで,本稿では,分散AIの分野を中心として,著者の興味のある関連分野を紹介した.