オーガナイズドセッション


オーガナイズドセッション一覧

  • OS-1 データセットとベンチマークの技術的・社会的な視点(鈴木 健二,原 聡,谷中 瞳 ,菅原 朔)
  • OS-2 計算社会科学(鳥海 不二夫,榊 剛史,笹原 和俊,瀧川 裕貴,吉田 光男)
  • OS-3 大規模言語モデルとデータサイエンス(砂山 渡,森 辰則,高間 康史,西原 陽子)
  • OS-4 人間とAIの協調:エージェンシーと道徳性に関する社会的合意形成に向けて(上浦 基,久木田 水生,河島 茂生,直江 清隆,Rafal RZEPKA)
  • OS-5 創造性とAI(渡辺 修平,菅野 太郎,松尾 豊,草彅 真人,原田 亨,小泉 光司)
  • OS-6 地震研究と人工知能(長尾 大道,内出 崇彦,加納 将行,庄 建倉,久保 久彦)
  • OS-7 可視化とAIと科学・文化・社会(伊藤 貴之,脇田 建)
  • OS-8 金融・会計・経済における情報学(中川 慧,平野 正徳,坂地 泰紀,酒井 浩之,水田 孝信,星野 崇宏)
  • OS-9 Affective Computing(熊野 史朗,日永田 智絵,森田 純哉,岡田 将吾,菅谷 みどり,鈴木 健嗣)
  • OS-10 人工知能を駆使した疾患動態研究(岩見 真吾,藤生 克仁,中村 己貴子,岡本 有司,小島 諒介,川上 英良,本田 直樹)
  • OS-11 政治経済におけるAIの利活用(木村 泰知,小川 泰弘,渋木 英潔,高丸 圭一,内田 ゆず,乙武 北斗,秋葉 友良,門脇 一真,小林 暁雄)
  • OS-12 知能の統合と創発 – 自律化、汎用化・実世界化へ – (山川 宏,栗原 聡,谷口 彰,宮澤 和貴)
  • OS-13 AIと制約プログラミング(波多野 大督,宋 剛秀)
  • OS-14 信頼と納得の人-AIインタラクション(福地 庸介,前川 知行,寺田 和憲,山田 誠二,今井 倫太)
  • OS-15 モノづくりデータサイエンス基盤(笹嶋 宗彦,多鹿 陽介,加藤 直樹)
  • OS-16 サイバー世界とリアル世界を架けるAI(鷲尾 隆,西山 直樹,吉岡 琢,小松崎 民樹,山崎 啓介,窪澤 駿平)
  • OS-17 数理最適化(梅谷 俊治,藤原 秀平,岩永 二郎)
  • OS-18 医学・生物学データを活用したAIの創出(藤原 幸一,久保 孝富)
  • OS-19 AI技術開発におけるジェンダード・イノベーションと公平性(柏木 志保,新田 泉)
  • OS-20 インタラクションとAI(下西 慶,近藤 一晃,酒井 元気,湯浅 将英,酒造 正樹)
  • OS-21 不動産とAI(橋本 武彦,清田 陽司,山崎 俊彦,諏訪 博彦,清水 千弘,吉原 勝己)
  • OS-22 音楽認識・生成技術が紡ぎ出す未来の社会(北原 鉄朗,中村 栄太,浜中 雅俊)
  • OS-23 AIによる故人再現の可能性と課題(折田 明子,斉藤 邦史,佐藤 啓介)
  • OS-24 Behavioral Data Science: 行動インサイトとAI・機械学習・最適化(戸田 浩之,倉島 健,深澤 佑介,赤木 康紀,落合 桂一)
  • OS-25 生成AI時代に医歯薬学・生命科学の革新を目指すAI応用(矢田 竣太郎,荒牧 英治,河添 悦昌,堀 里子,木﨑 速人)
  • OS-26 AIが生み出す偽・誤情報との付き合い方を考える(宮原 克典,西田 知史)
  • OS-27 サロゲートAIモデルの気象・海況/船舶への応用(木村 考伸,竹縄 知之,松岡 大祐)
  • OS-28 大規模・高品質な生成AI時代における人工生命と人工意識(堀井 隆斗,堀部 和也,鈴木 啓介,吉田 尚人)
  • OS-29 デジタル人文学とAI(大向 一輝,嘉村 哲郎,亀田 尭宙,中村 覚)
  • OS-30 AIによるスマートマニュファクチャリングとシステム健全性管理(矢入 健久,堤 誠司,今村 誠,植野 研)
  • OS-31 デジタルゲームの人工知能(三宅 陽一郎,濱田 直希)
  • OS-32 Mechanistic Interpretability(高槻 瞭大,峰岸 剛基,宮西 洋輔,高木 優)
  • OS-33 AIを活用したマーケティング実践(西村 直樹,池田 春之介,関根 翔,大橋 耕也,佐々木 直,川上 孝介,松本 健,磯 智大,小林 健)
  • OS-34 AIアライメント(林 祐輔,坂本 航太郎,和地 瞭良,阿部 拳之森村 哲郎)
  • OS-35 非構造データからの情報抽出(中田 百科,村田 達郎,山下 雄大)
  • OS-36 日常生活知識とAI(福田 賢一郎,江上 周作,宮田 なつき,Qiu Yue,鵜飼 孝典,川村 隆浩,市瀬 龍太郎,岡田 慧)
  • OS-37 AIを用いた空間・時系列データのモデリング手法と応用(田部井 靖生,沖 拓弥,竹内 孝,藤井 慶輔,武石 直也,西田 遼)
  • OS-38 ヒューマン・イン・ザ・ループAI(李 吉屹,荒井 ひろみ,鹿島 久嗣,小山 聡,森 純一郎,堤 瑛美子,新 恭兵)
  • OS-39 創作者と人工知能が創る創作の未来(上野 未貴,大澤 博隆,森 友亮,森 直樹)
  • OS-40 ひと中心の未来社会とAI(梶 洋隆,梶 大介,浅田 祐樹,高椋 佐和,豊田 平司郎,堺 浩之,城殿 清澄)
  • OS-41 世界モデルと知能(鈴木 雅大,岩澤 有祐,河野 慎,熊谷 亘,松嶋 達也,Paavo Parmas,谷口 尚平)
  • OS-42 大規模言語モデルの安全対策 ― 大いなる力には、大いなる責任が伴う(金子 正弘,小島 武,磯沼 大,丹羽 彩奈,大葉 大輔,村上 明子,関根 聡,内山 将夫,Danushka Bollegala)
  • OS-43 人工知能と創造性 — 人の模倣を超えて(小林 茂,徳井 直生)
  • OS-44 言語とコミュニケーションの創発(長野 匡隼,谷口 忠大 ,上田 亮,鈴木 麗璽,中村 友昭,橋本 敬)
  • OS-45 知的対話システム(稲葉 通将,東中 竜一郎,徳久 良子)
  • OS-46 生成AIとナレッジグラフ(古崎 晃司,森田 武史,黒川 茂莉,広田 航)
  • OS-47 AIと人のインタラクションによる価値創造とエンパワーメント(熊谷 雄介,森 正弥,平手 勇宇,益子 宗,川原 圭博)

OS-1 データセットとベンチマークの技術的・社会的な視点

オーガナイザ

  • 鈴木 健二(ソニーグループ株式会社)
  • 原 聡(電気通信大学)
  • 谷中 瞳 (東京大学)
  • 菅原 朔(国立情報学研究所)

内容・テーマの例

近年のAIの発展は目覚ましく,大規模言語モデルや画像生成AIなどの生成AIの躍進によって,技術が革新的に進化している.その生成AIの学習には,大量のデータが必要である.そして, 多角的な観点によるベンチマークの重要性も増している.
AIの研究開発において最も重要であるデータセットに関わる課題は,社会的な影響も大きい.技術的な課題にとどまらず,倫理的・法的・社会的な課題を含めた学際的な議論が望まれている.
本オーガナイズドセッションでは,データセットとベンチマークに関する技術的課題および倫理的・法的・社会的課題に関する研究の両者を対象とする.
技術的課題としては,データセットの構築や生成技術,データの多様性,データ品質,データ前処理技術,データの可視化手法,データバイアス緩和手法,プライバシー保護技術,偽情報に対する技術的対策,ベンチマークにおける評価指標,ベンチマーク用データセット,ベンチマークにおける再現性などが含まれる.生成AIに限らず,大規模言語モデルや画像生成AIに加え,認識系AI,行動学習,意思決定に関するデータセットやベンチマークに関する様々な分野からの研究発表を募集する.
倫理的・法的・社会的課題(ELSI)としては,データセットの取扱いに関する著作権法上の課題,プライバシー・個人情報保護,公平性,説明責任,透明性,セキュリティ対策,偽情報対策,各国および各地域の規制の最新動向,AIおよびデータのガバナンスなどが含まれる.

キーワード

  • データセット
  • ベンチマーク
  • 大規模言語モデル
  • 生成AI
  • 倫理的・法的・社会的課題(ELSI)

OS-2 計算社会科学

オーガナイザ

  • 鳥海 不二夫(東京大学)
  • 榊 剛史(株式会社ホットリンク)
  • 笹原 和俊(東京科学大学)
  • 瀧川 裕貴(東京大学)
  • 吉田 光男(筑波大学)

内容・テーマの例

Webのソーシャル化や実空間での様々な行動センシングが進行している現在,人々の自発的な情報行動やコミュニケーションなどの詳細はデジタルに記録・蓄積されるようになりました.このような大規模社会データを情報技術によって取得・処理し,分析・モデル化して,人間行動や社会現象を定量的・理論的に理解しようとする学問が「計算社会科学」 (Computational Social Science)です.
計算社会科学OSでは,大規模社会データ分析研究,社会シミュレーションによる理論的研究,(ウェブを使った大規模行動実験)による実験的研究などを使い,人間行動や社会現象を理解することを目指した研究を募集します.

キーワード

  • 計算社会科学
  • 大規模社会データ分析
  • 社会シミュレーション
  • バーチャルラボ

OS-3 大規模言語モデルとデータサイエンス

オーガナイザ

  • 砂山 渡(滋賀県立大学)
  • 森 辰則(横浜国立大学)
  • 高間 康史(東京都立大学)
  • 西原 陽子(立命館大学)

内容・テーマの例

 昨今のデータ利活用の促進やデータサイエンティストの育成が求められる状況の中で,大規模言語モデルとその応用に注目が集まってきています.これまでのデータ利活用においては,コンピュータを用いてデータから得られる客観的な指標をもとに,人間がその意味解釈を行って,知識創発につなげていくことが必要となっていました.しかし,大規模言語モデルの登場により,コンピュータであってもデータに意味を見出したり,アイディアの生成を期待できる状況となってきています.一方で,最終的な意思決定を行うのは人間であるという点は変わることがないため,この意思決定に向けたより強力なサポートを,大規模言語モデルによって実現できる可能性が高まってきています.
 そこで本セッションにおきましては,データに意味を与える作業,得られた意味の集合と既知の情報から新しいアイディアを創発する作業など,データ利活用に大規模言語モデルを採り入れた環境の提案や構築,データ利活用の自動化に関する研究発表を幅広く募集します.また,データ利活用における大規模言語モデルの役割など,実装の前段階における枠組みの提案も歓迎いたします.データ利活用を主目的としたアプリケーションでなくても,大規模言語モデルを用いて,データに対して何らかの意味づけを行いながら人間をサポートするアプリケーションも対象とします.

・大規模言語モデルとデータ利活用
・大規模言語モデルを用いたデータ利活用の自動化
・大規模言語モデルを用いたデータ利活用のためのインタラクション
・データサイエンティストの育成
・大規模言語モデルを用いたアプリケーション

キーワード

  • 大規模言語モデル
  • データサイエンス
  • データ利活用
  • データへの意味づけ
  • 知識創発と意思決定

OS-4 人間とAIの協調:エージェンシーと道徳性に関する社会的合意形成に向けて

オーガナイザ

  • 上浦 基(同志社大学高等研究教育院)
  • 久木田 水生(名古屋大学大学院情報学研究科)
  • 河島 茂生(青山学院大学総合文化政策学部)
  • 直江 清隆(東北大学大学院文学研究科)
  • Rafal RZEPKA(北海道大学情報科学研究院)

内容・テーマの例

2023年末に広島AIプロセスがG7サミットで合意され、また2024年にはEUでAI規制法が成立した。こうした国際的規制成立の背景にある、歴史的・文化的・哲学的な水準にまで遡って、AIシステムやAIと人間の関係がどうあるべきかを考えることは、今やサービスやプロダクトが即座にグローバルな影響をもたらすがゆえに、一層重要なこととなっている。換言すれば、特定の国や地域の中でのみ、あるいは、特定の開発者または利用者の小集団内部でのみ通用する道徳的観念や慣習に基づいて、AIの開発や利用が推進されるリスクについて広く認識され、またAIに対する国内外の社会的合意形成のために適切な資源配分がなされるべきである。これまで知的主体としての人間に対してのみ問われてきた道徳的概念および行為が、知的人工物を含めた環境下でどのように理解され実践されるべきか、という、新たな問いに対して、欧米では、L. Floridi、M. Coeckelbergh、P.-P. Verbeek、W. Wallach & C. Allen、S. Vallorらが議論を展開し、社会的な影響を与えている。本セッションでは、エージェンシーagency、自律性autonomy、道徳性morality、責任responsibility、主体subject/客体object、説明可能性explicability 等の概念を軸に、国内外あるいは開発者・利用者間の合意形成に資する概念的共通基盤の可能性を検討し、今後のAIのさらなる高度化にも耐えうる、国内のAI倫理領域の充実を目指す。

キーワード

  • エージェンシー
  • 道徳性
  • 責任
  • 主体/客体
  • 説明可能性

OS-5 創造性とAI

オーガナイザ

  • 渡辺 修平(株式会社リコー 先端技術研究所)
  • 菅野 太郎(国立大学法人東京大学)
  • 松尾 豊(国立大学法人東京大学)
  • 草彅 真人(株式会社リコー)
  • 原田 亨(株式会社リコー)
  • 小泉 光司(Brunel University London)

内容・テーマの例

労働人口減少に伴う労働力の低下が深刻な社会問題化となる中,LLMに代表される生成AIの急速な発展により,単純作業やプログラミングなどが簡便になり,生成AIを活用して様々な領域で素早く価値創出する人々が増えてきている.
このような変化の中で,持続的に高い価値を創出するためには,私たち一人ひとりの創造性を最大限に引き出すことがこれからの重要な課題であると考える.
本OSは「創造性とAI」をテーマに,従来のAIが人間を支援する単なるツールとしての役割を超えて,AIとの共創を通じて人間の潜在的な創造性を引き出す新たな可能性について議論する.さらに,AIを用いた人のセンシングやデータ解析,フィードバックによる,創造的な活動時の状態やメカニズムの解明といった基礎的な内容についても議論する.

上記を踏まえ,具体的には,創造性のAIモデリング研究や創造的活動を支援・向上させるAIシステムの研究,創造性に関わる認知プロセスの神経科学的・心理学的研究,AIを用いた創造性評価手法に関する研究,創造的協働を促進するインタラクション研究,創造性とウェルビーイングの関係性に関する研究を募集するが,これらに限らず創造性に関わる研究を幅広く募集する.

キーワード

  • 創造性
  • 共創
  • 対話システム
  • LLM
  • ウェルビーイング

OS-6 地震研究と人工知能

オーガナイザ

  • 長尾 大道(東京大学地震研究所)
  • 内出 崇彦(産業技術総合研究所)
  • 加納 将行(東北大学)
  • 庄 建倉(統計数理研究所)
  • 久保 久彦(防災科学技術研究所)

内容・テーマの例

近年の発展著しい人工知能・機械学習は自然科学の分野においても浸透しつつあり、地震研究においても成果が着実に積み上がってきている状況である。地震に関する観測は陸海の広範囲において継続的におこなれており、人工知能・機械学習をはじめとする最新の情報科学技術を駆使して観測ビックデータを解析することによって地震現象の解明や地震災害の防災・減災が進むことが期待されている。そのような中で、わが国では情報科学の知見を採り入れた新たな地震調査研究を推進することを目的とした「情報科学を活用した地震調査研究プロジェクト(STAR-Eプロジェクト)」が2021年度から文部科学省において開始しており、今後の更なる発展が期待される。本オーガナイズドセッションでは、地震をはじめとする自然災害分野における基礎から応用にわたる人工知能研究および関連する研究の発表を幅広く募集する。本オーガナイズドセッションを人工知能研究者と地震研究者の交流の場としたい。

キーワード

  • 地震
  • 自然災害
  • ビックデータ
  • 機械学習
  • 情報科学

OS-7 可視化とAIと科学・文化・社会

オーガナイザ

  • 伊藤 貴之(お茶の水女子大学)
  • 脇田 建(東京科学大学)

内容・テーマの例

 可視化はデータをビジュアルに表現することで、そのままでは目にしにくい情報の理解を促す技術の総称である。可視化の応用範囲は非常に幅広く、科学技術、文化情報、社会現象など、ほぼ全ての学術分野がその対象となる。このような状況を鑑みて提案者の一人は、可視化技術の応用を網羅的に紹介した「可視化と科学・文化・社会」という書籍を2023年に発刊している。
 一方で、近年の情報可視化の研究はAIと連携したものが急激に増えている。例えば可視化を駆使した対話操作型のデータ分析の過程で機械学習や進化計算を反復的に呼び出すVisual Analyticsというシステムもあれば、説明性の高いAIを実現するために可視化を適用する研究も増えている。
 以上の背景を鑑みて、本セッションでは可視化とAIを連携した技術、また可視化とAIの連携技術の活用事例を幅広く議論する。例として以下のようなテーマでの発表を募集する。
・科学技術の発展を支援するための可視化。
・文化・歴史・芸術などの理解と解釈を支援するための可視化
・計算社会科学などによって導かれる人間行動や、ビジネス情報に見られる社会現象の可視化。
・AIの実用に関する諸問題を解決するための可視化。
・これらに限らず、科学技術、文化情報、社会現象に関する可視化全般、AIと連携した可視化全般、汎用的な可視化技術全般。

キーワード

  • 可視化
  • 科学技術
  • 文化情報
  • 社会現象

OS-8 金融・会計・経済における情報学

オーガナイザ

  • 中川 慧(野村アセットマネジメント株式会社)
  • 平野 正徳(株式会社Preferred Networks)
  • 坂地 泰紀(北海道大学)
  • 酒井 浩之(成蹊大学)
  • 水田 孝信(スパークス・アセット・マネジメント株式会社)
  • 星野 崇宏(慶應義塾大学)

内容・テーマの例

ファイナンス・会計・経済分野は、日々変動する市場価格、規制や制度の変更、そして取引データや財務報告、統合報告といった複雑かつ膨大な情報に囲まれた領域である。
株式市場の変動、金利や為替レートの変化、マクロ経済環境の動向、グローバルな経済政策の影響やさらには気候環境変動など、さまざまな要因が企業の財務状況や投資家の判断に深く関わっている。このような複雑でダイナミックな環境の中で、専門家は、正確で迅速な意思決定を求められ、日々進化する技術や手法を駆使することが不可欠である。このような背景から、金融・会計分野では、理論と実務が密接に結びついている。そこで本セッションでは、膨大な情報を分析し専門家の意思決定および業務効率化の支援技術や、複雑なデータの特性を理解し適切な予測を行う技術、さらに市場制度やESG、SGDsや気候環境変動に関する取り組みを高度化する技術など
ファイナンス・会計・経済分野に関わる基礎から応用までの幅広い研究課題全てを対象とし、これらの領域に対して人工知能を中心とした情報技術の利用を拡大することを目的とした発表と議論を行う。

キーワード

  • ファイナンス
  • 会計
  • 経済
  • ESG/SDGs
  • 機械学習
  • データ分析

OS-9 Affective Computing

オーガナイザ

  • 熊野 史朗(NTT コミュニケーション科学基礎研究所)
  • 日永田 智絵(奈良先端科学技術大学院大学)
  • 森田 純哉(静岡大学)
  • 岡田 将吾(北陸先端科学技術大学院大学)
  • 菅谷 みどり(芝浦工業大学)
  • 鈴木 健嗣(筑波大学)

内容・テーマの例

本オーガナイズドセッションは2025年で6回目の開催を迎え,さらに注目を集めている.Affective Computingは,人の感情を機械に認知させ,感情的に振舞わせるだけでなく,機械に感情を持たせることを目指す学際的な分野として発展してきた.その中心にある人工知能技術は,感情の典型的な自動推定にとどまらず,マルチモーダル・マルチエージェントによる表現学習や,大規模言語モデル(LLM)を用いた感情の理解や生成など,新たな可能性を切り開いている.黎明期には,心理実験下での感情カテゴリや感情次元の認知に重点が置かれていたが,近年では,機械学習技術と計測機器の進化により,オンライン実験や実環境下での解析が可能になっている.さらに,痛み,鬱,ストレス,共感,ウェルビーイングなど,より高次の感情や心理状態も扱えるようになってきた.本分野は,IEEE Transactions on Affective Computingや国際会議International Conference on Affective Computing and Intelligent Interaction (ACII)といった場で急速に発展しており,今後のさらなる飛躍が期待される.本オーガナイズドセッションでは,国内外の研究者が集い,人工知能分野における感情計算論の現在地と未来の可能性について深く議論する場を提供する.

キーワード

  • 感情
  • 情動
  • 計算論
  • 主観
  • 行動
  • 生理

OS-10 人工知能を駆使した疾患動態研究

オーガナイザ

  • 岩見 真吾(名古屋大学 大学院理学研究科 理学専攻 生命理学領域)
  • 藤生 克仁(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 中村 己貴子(中外製薬株式会社 トランスレーショナルリサーチ本部 医科学薬理部)
  • 岡本 有司(京都大学 大学院医学研究科 人間健康科学系専攻)
  • 小島 諒介(京都大学 大学院医学研究科 人間健康科学系専攻)
  • 川上 英良(千葉大学 大学院医学研究院 人工知能(AI)医学)
  • 本田 直樹(名古屋大学 大学院医学系研究科 システム生物学分野)

内容・テーマの例

近年、機械学習を中心とした人工知能(AI)技術の進化は目覚ましく、生命科学の分野でも、従来のビッグデータに基づく統計解析を超えて、AIを含む先端的な数理科学技術を活用した革新的な研究が急速に台頭しています。医療分野では、例えば、画像解析やリアルタイムモニタリングなどのAI応用が不可欠な技術として広く受け入れられています。本セッションではさらに一歩踏み込み、AI技術と最先端の数理科学技術を駆使・融合したアプローチによる、様々な疾患の進行動態の特徴付けや将来予測、さらにはそれらの実臨床への応用に関する研究の最前線をテーマとし、最新の成果について議論します。具体的なテーマとしては、疾患の発症予測や層別化、治療効果予測、疾患進行の定量化、バイオマーカーやデジタルマーカーの探索研究などが挙げられます。また、大規模な患者コホートから得られた前向きまたは後ろ向きの臨床データを統合・分析する研究も歓迎します。対象疾患は心疾患、がん、肝疾患、精神疾患などに限らず、広く門戸を開き、異分野融合の視点から幅広く議論する場にしたいと考えています。

キーワード

  • 機械学習・深層学習
  • 数理科学
  • 臨床データ
  • 臨床医学、社会実装

OS-11 政治経済におけるAIの利活用

オーガナイザ

  • 木村 泰知(小樽商科大学)
  • 小川 泰弘(名古屋市立大学)
  • 渋木 英潔(BESNA研究所)
  • 高丸 圭一(宇都宮共和大学)
  • 内田 ゆず(北海学園大学)
  • 乙武 北斗(福岡大学)
  • 秋葉 友良(豊橋技術科学大学)
  • 門脇 一真(株式会社日本総合研究所)
  • 小林 暁雄(農業情報研究センター)

内容・テーマの例

現代の情報化社会では、政治や経済に関連する情報が日常生活、ビジネス、国際関係に大きな影響を及ぼしている。この情報の正確性と信頼性は極めて重要であるものの、多様な情報源からの正しく情報を評価することはますます困難になっている。この課題に対処するため、人工知能の技術が重要な役割を果たすことになる。「政治経済におけるAIの利活用」をテーマにしたオーガナイズドセッションでは、以下の側面を探求する。 1.技術・手法の共有: 研究者や専門家が、最新の技術や手法、研究結果を共有することにより、政治経済情報に対する情報処理の発展を促進することができる。このセッションでは、AIを利用した情報処理技術や研究成果が共有され、情報の信頼性を高める方法について議論される。 2.偽情報や誤情報への対策:偽情報・誤情報や偏見に基づく情報の拡散を防ぐために根拠抽出が必要である。その自動化は、民主主義の健全な発展と経済の安定に寄与することが期待される。AIはそのための強力なツールとなる。 3.社会への貢献:政治経済情報の自動的な簡略化や根拠に基づく検証は、社会における情報の透明性を高め、十分な情報に基づいた意思決定を可能にする。これは、社会の全体的な発展に大きく貢献すると考えられる。このセッションは、人工知能技術を用いて、政治経済分野における情報の正確性と信頼性に関する課題に対処する。これにより、科学技術の発展と社会の進歩の両方に貢献することが期待される。

キーワード

  • デジタル民主主義
  • 政治経済
  • 地方議会
  • 根拠抽出
  • ファクトチェック

OS-12 知能の統合と創発 – 自律化、汎用化・実世界化へ –

オーガナイザ

  • 山川 宏(東京大学)
  • 栗原 聡(慶應義塾大学理工学部)
  • 谷口 彰(立命館大学)
  • 宮澤 和貴 (大阪大学)

内容・テーマの例

大規模言語モデルや基盤モデルなどのAI技術の急速な進展により、統合的な知能を備えたAIシステムの展望が開けつつある。特に、大規模言語モデルを基盤としたエージェントとしてのシステムや、AGIに向けた様々なアプローチが具体的な検討段階に入っている。これらの統合においては、マルチモーダルのように異なる特性を持つ要素の連携や、即応的処理と熟考的思考の統合、実世界情報からの認識と論理的推論の接続などが含まれる。そこでは複数のAIシステムの協調による処理や、脳の情報処理原理を参照したアーキテクチャの設計に加え、それらの相互作用から創発される新たな知的機能の解明も重要な課題となる。さらに、エージェントの自己改善や発達的学習による能力の段階的な獲得、そしてマルチエージェント環境における社会的学習、知識共有、倫理の創発などの仕組みも注目される。一方で、統合AIの自律性と制御可能性の両立、意思決定プロセスの説明・解釈可能性の確保、さらには倫理的アラインメントの実装など、人との共生を見据えた本質的な課題も明確になってきた。本OSでは、これら統合AI実現に向けた基盤技術から実装手法まで、幅広い議論を展開する。特に、個別の要素技術にとどまらず、システム全体としての統合方法論や評価手法、さらには実践的な課題解決に向けた取り組みを重視する。このような議論を通じ、より高度な知的システムの実現とその創発的な能力の理解に向けた具体的な道筋を示すことを目指す。

キーワード

  • エージェント化
  • 自己改善
  • 自律汎用知能
  • 脳型アーキテクチャ
  • メタ認知
  • 自己認識

OS-13 AIと制約プログラミング

オーガナイザ

  • 波多野 大督(理化学研究所)
  • 宋 剛秀(神戸大学)

内容・テーマの例

制約充足問題および制約最適化問題 (以下,まとめて CSP と呼ぶ) は, それ ぞれ与えられた制約を満たす解および最適解を探索する問題である. 制約プ ログラミングは, CSP を取り扱うプログラミングパラダイムである. 人工知 能研究で生じる多くの組合せ問題は CSP として定式化できるこ とから, 制約 プログラミングは, 1980年代から現在に至るまで人工知能分野で 活発に研究 されてきた. 本オーガナイズドセッションでは,「AI と制約プログラミング」 に関する研 究発表・議論を行う場を提供することを目的し,AIにおける探索 や推論, 制約 に関する理論, アルゴリズム, 言語, モデル, システムなど AI と制約プログ ラミングに関する基礎から応用問題まで幅広く募集する.以下 にテーマの例を 挙げる. - ソルバー (CSP, SAT, MaxSAT, PB, SMT, ASP な ど) - 推論・探索アルゴリズム (CDCL, 列挙 など) - 知識コンパイル (BDD/ZDD/MDD などの Decision Diagram) - マルチエージェント (分散CSP, 提携構造形成問題 など) - 応用 (モデル検査, スケジューリング, プランニ ングなど) 制約プログラミングはCP国際会議や各種ソルバーの競技会が毎年開 催されるな ど国際的な関心が高い.本オーガナイズドセッションでは,国内 の研究者を一堂に会して,国内コミュニティの活性化を目指す.

キーワード

  • 制約充足問題・制約最適化問題
  • SAT/MaxSAT/PB/SMT/ASP BDD/ZDD/MDD
  • 列挙問題
  • マルチエージェント

OS-14 信頼と納得の人-AIインタラクション

オーガナイザ

  • 福地 庸介(東京都立大学)
  • 前川 知行(静岡大学)
  • 寺田 和憲(岐阜大学)
  • 山田 誠二(国立情報学研究所)
  • 今井 倫太(慶應義塾大学)

内容・テーマの例

AI技術の進歩により,人間の意思決定に有用な情報処理が行えるようになってきている.AIの出力を実際の意思決定に利用していくにあたり,AIが人から信頼されるようになることが課題となる.この課題を解決するには,単にAIの性能を向上させるだけではなく,人が置かれている文脈を捉え,納得感のあるインタラクションができるシステムを設計する必要がある.本オーガナイズドセッションでは,AIシステムが人から適切な信頼を得るためのインタラクションに関する研究発表を広く募集する.主なテーマは以下の通りであるが,これらに限定されるものではない.

・自然言語における文脈理解
・社会的関係性に基づく表情表出
・環境的文脈を考慮したHRI・HAI
・自閉スペクトラム症者の認知
・信頼感の遷移モデル
・AIの説明提示による信頼較正
・コンテクストライディング

キーワード

  • 自然言語処理
  • 文脈
  • 環境情報
  • 発達障害
  • 信頼工学
  • 説明可能AI
  • アルゴリズム忌避

OS-15 モノづくりデータサイエンス基盤

オーガナイザ

  • 笹嶋 宗彦(兵庫県立大学 情報科学研究科)
  • 多鹿 陽介(パナソニックインダストリー株式会社)
  • 加藤 直樹(兵庫県立大学 情報科学研究科 数理最適化センター)

内容・テーマの例

2019年からの国の教育方針の転換とともに,データサイエンスの教育と研究が広く行われるようになっています.こうした状況の中で,我が国を支える製造業の分野においてもデータを活用する試みが始まっており,製品設計から、製造ラインの最適化や人的リソースの配置,品質管理など,数理最適化の技術やAI技術の実応用が行われています.
一方,製造業の現場においては経験に基づき人が最適化を行っているのが中心であり、データサイエンスの専門家の人材不足によりツールによるデータ分析などに留まっている現状があります。データは大量にあるもののそれらを製造業の様々な価値ある課題解決に十分活用できていないという問題があります.
そこで本セッションにおいては,製造分野におけるデータサイエンスの活性化に軸足を置いた,データサイエンスとその基盤技術についての研究発表を,企業とアカデミアの双方から広く募集します.製造業における設計・製造・販売にいたるオペレーションの最適化やAI技術の導入,そのための基盤技術などを,理論,実証実験から実例まで,幅広く取り扱います.また,製造業に深く関わる材料分野の研究や,ベテランの退職に伴って起きている現場ノウハウの保存と技術伝承,少子高齢化に伴っておきる人材育成の課題など,製造業のデジタル化に関わる次のような諸問題を本セッションでは対象と致します.
・製造業とデータサイエンス
・製造業と最適化問題
・製造業とAI技術導入
・製造現場のノウハウや技術の保存と伝承
・製造業における人材育成

キーワード

  • 製造業
  • データサイエンス
  • 数理最適化
  • DX
  • 材料工学
  • AI人材育成

OS-16 サイバー世界とリアル世界を架けるAI

オーガナイザ

  • 鷲尾 隆(関西大学)
  • 西山 直樹(住友重機械工業株式会社)
  • 吉岡 琢(株式会社Laboro.AI)
  • 小松崎 民樹(北海道大学)
  • 山崎 啓介(産業技術総合研究所)
  • 窪澤 駿平(日本電気株式会社)

内容・テーマの例

あらゆる分野のデジタル化(DX)の中で、人間活動はリアル世界のみならずサイバー世界でも様々な処理を行うものへと変貌を遂げつつある。このようなリアル世界とサイバー世界が融合した活動には、極めて複雑高度で効率的、高精度な振る舞いや処理が要求され、それに応える人工知能への期待は大きい。しかしながら、機械学習や深層学習、パターン認識などの研究ではアルゴリズムのサイバー世界での性能向上に重きが置かれ、ヒューマンインタフェース研究でも両世界の融合を重視した包括的研究は少なかった。リアル世界とサイバー世界両方の様々な課題設定や制約の下で、十分な性能を発揮する基礎的な原理や手法・技術を目指す研究は十分ではない。昨年の開催に引き続き、本オーガナイズドセッションは、サイバー世界とリアル世界をまたいで複雑高度な知的処理を効率的、高精度に実施できる人工知能の原理・手法・技術に関する研究開発成果の発表の場を提供する。そして、従来研究の不十分な点とそれを克服するための研究課題を改めて洗い出し、今後の人工知能がより深く様々な人間活動に実装される研究開発を加速する機会としたい。
テーマの例
リアル世界の状況をサイバー世界に取り込むセンシング・計測のAIによる高度化(計測インフォマティクス)
サイバー世界の処理結果をリアル世界に反映・実装するアクチュエーション・制御のAIによる高度化(プロセスインフォマティクス)
サイバーとリアルで生きる人間に必要な両世界のインターフェイスのAIによる高度化(ヒューマンインタフェースAI)

キーワード

  • サイバーフィジカルシステム
  • 計測インフォマティクス
  • プロセスインフォマティクス
  • ヒューマンインタフェース
  • データ同化

OS-17 数理最適化

オーガナイザ

  • 梅谷 俊治(株式会社リクルート)
  • 藤原 秀平(株式会社ALGO ARTIS)
  • 岩永 二郎(株式会社エルデシュ)

内容・テーマの例

数理最適化は、データ分析やそれにもとづく予測の結果を踏まえて、意思決定や計画策定を実現する問題解決における出口を担当する技術です。
最近では、機械学習によるデータ分析や予測の技術が普及するのにともない、製造業や物流業にとどまらない幅広い分野における現実問題の多くが最適化問題に定式化できることが再認識されるようになりました。
また、現在では、有償・無償を含めて多くの数理最適化ライブラリが利用できるようになり、現実問題を解決するための有用なツールとして急速に普及しつつあります。
本オーガナイズドセッションでは、数理最適化に関心を持つ幅広い分野の研究者および実務家が交流を深める機会を作ることを目的とします。
数理最適化の基盤技術から応用事例まで、さらには人工知能(AI)技術との融合など、数理最適化に関連する幅広いテーマの発表を募集します。
連続最適化は機械学習における重要な要素技術であり、近年、人工知能(AI)の文脈で盛んに研究されてきました。
一方で、組合せ最適化は制約プログラミングやプランニングなど一部の人工知能(AI)と関連があるものの研究者間の交流は十分とは言えない状況です。
本オーガナイズドセッションが、数理最適化と人工知能(AI)の技術と背景の深い理解さらには融合を深めるきっかけとなれば幸いです。

キーワード

  • 数理最適化
  • 最適化問題
  • 連続最適化
  • 組合せ最適化

OS-18 医学・生物学データを活用したAIの創出

オーガナイザ

  • 藤原 幸一(名古屋大学)
  • 久保 孝富(NAIST)

内容・テーマの例

ウェブ上で画像やテキストデータが蓄積されてきた流れに追従するように,近年では医学や生物学,獣医学分野においても膨大なデータが収集,蓄積されるようになっている.たとえば,臨床現場ではカルテや検査,レセプトデータが蓄積され,生物学では遺伝子などの配列データやタンパク質の構造,代謝産物,さらにはそれらを組み合わせたマルチオミクスデータによって,複雑な生命現象や疾患メカニズムの解明が試みられている.獣医学分野では,たとえば動物の行動把握やヒトとのインタラクションについても,積極的に研究がなされている.これらの医学・生物学分野のデータの特徴として多様なモダリティがあり,それらのデータ形式は動画像や音声,時系列,配列,自然言語,グラフなど非常に広範に及ぶ.これらの解析は個別のモダリティでは積極的に勧められているが,マルチオミク解析などを除くと,その統合的な解析については緒に就いた段階といえる.これはヒトや生物では,対象とする現象の表現の特定が困難でどのモダリティに着目すればよいかの判断が容易ではないこと,データを収集できる量が限定的であること,様々なアーチファクトが混入すること,個体差が強く対象間での汎化が難しいことなど,機械学習における課題が凝縮されたケースになっているためであると考えられる.本セッションでは,医学・生物学データを活用した新たなAIの創出と,その基礎科学への貢献および社会実装について議論する.

キーワード

  • 機械学習
  • 生体信号処理
  • 臨床医学
  • 生物学
  • 獣医学

OS-19 AI技術開発におけるジェンダード・イノベーションと公平性

オーガナイザ

  • 柏木 志保(お茶の水女子大学)
  • 新田 泉(富士通株式会社)

内容・テーマの例

AIの活用が広がる中で,ジェンダーバイアスへの懸念が高まっている.ローン審査や人材採用などにAIが活用される事例では,バイアスが強化されるという報告がなされた.このような状況を受け,AIの公平性やバイアス是正の研究が進展している.
バイアス是正技術の多くは,数学的に定義された公平性指標を高めるようにデータやモデルを修正するが,修正されたモデルはジェンダーバイアスが生じる社会的な要因を必ずしも反映しているわけではない.また,AIが活用される業種やステークホルダーによって公平性の定義や基準が異なるため,AIを実社会に適用する際には,AIが導きだした結果を公平な結果として人々が受け入れるかどうかの検討が必要である.
ジェンダーバイアスに配慮したAI技術を開発するために,本セッションではジェンダード・イノベーションとAIの公平性研究の融合をテーマとする.ジェンダード・イノベーションは,性差に基づいた分析を研究開発に導入し新たな発見やイノベーション創出を目指すアプローチである.
本セッションでは,AIの公平性に関する研究成果や実践事例,ジェンダーや多様性の課題解決を目指すAIの最新研究や実践事例を募集する.また,ジェンダード・イノベーションの研究者を交え,Human Resource領域などの事例で,ジェンダード・イノベーションの視点からAI研究や技術開発の課題、ロールモデルや研究者ネットワーク構築の重要性について討論する.

キーワード

  • AI倫理
  • AIの公平性
  • 信頼されるAI
  • ジェンダーバイアス
  • ジェンダード・イノベーション
  • 研究者間ネットワークの構築

OS-20 インタラクションとAI

オーガナイザ

  • 下西 慶(京都大学)
  • 近藤 一晃(京都大学)
  • 酒井 元気(日本大学)
  • 湯浅 将英(湘南工科大学)
  • 酒造 正樹(湘南工科大学)

内容・テーマの例

インタラクションの理解とモデル化に関する研究は、個人や集団レベルでのコミュニケーション能力の向上に繋がることから期待が高まっている.さらに近年発展してきている機械学習の技術と,音声・画像・言語などのメディア処理,ユビキタスコンピューティング,ウェアラブルコンピューティングを統合することで,インタラクションの理解とモデル化,その支援技術に関する研究基盤が整ってきている.これらの基盤技術は、ユーザーの多様な表現やコミュニケーションスタイルに対応するためにますます重要となっている。今回のセッションでは、これらのトピックに焦点を当て、最新の研究成果や展望について情報交換を行い、未来のインタラクションに向けて探求していくことが目的である。

キーワード

  • コミュニケーションの質のモデル化
  • ウェアラブルデバイス
  • 社会的信号処理
  • フィードバック法
  • インタラクションへの介入
  • ワークショップデザイン
  • CSCW (computer supported cooperative work)

OS-21 不動産とAI

オーガナイザ

  • 橋本 武彦(株式会社GA technologies)
  • 清田 陽司(麗澤大学)
  • 山崎 俊彦(東京大学)
  • 諏訪 博彦(奈良先端科学技術大学院大学)
  • 清水 千弘(一橋大学)
  • 吉原 勝己(NPO法人福岡ビルストック研究会)

内容・テーマの例

AIにとってデータは最重要のリソースであるが、不動産業界は現在も紙・FAXでのやり取りが主であり、データの整備が遅れている。
また情報の非対称性が指摘される業界で、民間企業の調査でも国際的にみて透明度が高い水準になく、情報の公開もまだまだ進んでいない。
加えて不動産を一意に特定するIDが存在しないため、慣例的に物件名と住所でやり取りがなされており、入力ミスや表記揺れによるミスマッチなどのリスクを孕んでいる。結果、データ品質の低下とともにシステムによる効率化の妨げとなっており、業界の生産性が長らく向上しない一因となっていた。
このような事態を打開すべく、国交省では”不動産ID”や”不動産情報ライブラリ”などの取り組み、デジ庁では”アドレス・ベース・レジストリ”などの取り組みが進められている。

このセッションでは、不動産情報の整備、公開、活用に関するAIの最新の取り組みや課題を共有し、研究・開発活動の活性化を目指す。具体的には、以下に挙げるような(しかし以下に限定されない)テーマを扱う。
・不動産分野への生成AI技術の応用
・マルチメディアとしての不動産ビッグデータの活用
・経済学、建築学、地理学、都市学など、不動産と密接に関連をもつ分野との連携

キーワード

  • 不動産
  • 生成AI
  • 言語処理
  • 画像処理
  • オープンデータ

OS-22 音楽認識・生成技術が紡ぎ出す未来の社会

オーガナイザ

  • 北原 鉄朗(日本大学文理学部)
  • 中村 栄太(九州大学)
  • 浜中 雅俊(理化学研究所)

内容・テーマの例

 近年の深層学習などの進展により、音楽情報学分野では音楽の生成技術や認識技術の性能が飛躍的に向上している。これにより、近い将来に情報技術を用いた音楽の新しい形の創作や鑑賞が可能になると考えられる。一方で、自動作曲は1950年代から既に研究され、60年代から自動作曲技術を取り入れた芸術活動が発展するなど、音楽情報学は情報学の黎明期から自動創作・生成AIの研究が盛んに行われた分野でもある。本OSでは、音楽生成と認識技術に関する最新の研究についての議論に加えて、それらの研究が今後発展することで、どんな社会や音楽文化が今後実現されうるかという統一テーマについて議論する。
 本OSは、2024年に続いて2回目の開催である。2024年は本OSに加え、企画セッション「KS-18 楽器の街・浜松で考える《Music×AI》の未来」を実施し、人工知能技術と音楽の未来について多角的に議論した。今年度は、これらの議論を踏まえ、より幅広い方々からの投稿を期待したい。想定される研究発表内容としては、音楽認識技術を用いた音楽の検索・推薦・鑑賞や楽器演奏に対する支援技術、音楽生成技術を用いた音楽創作支援、あるいはそれらの融合技術や社会応用、文化的な影響の分析などが想定される。
 なお、通常の要素技術や応用システムの開発研究の研究内容に併せて、その研究が発展することで、どんな社会が今後実現されうるかを、原稿および発表内で議論(1段落程度、1~2分程度)していただくことで、多分野にまたがる研究の議論と交流の機会としたい。

キーワード

  • 音楽生成
  • 音楽認識
  • 音楽分析
  • 音楽知能情報処理
  • 人工知能と社会

OS-23 AIによる故人再現の可能性と課題

オーガナイザ

  • 折田 明子(関東学院大学)
  • 斉藤 邦史(慶應義塾大学)
  • 佐藤 啓介(上智大学)

内容・テーマの例

日常生活のデジタル化が進み、サービスの利用者の死後にはデバイスやデータが残されるようになった。これらの「デジタル遺品」は、意図的に保存や削除をされることもあるが、そのまま放置されることもある。
昨今は、これらの遺されたデータを人工知能が学習し、亡くなった人を生成してあたかも「よみがえった」かのように再現することが可能になった。AI美空ひばりは歌声の再現にVRの外見を組み合わせ、賛否を巻き起こす結果となった。こうした故人AIは、新たな追悼の機会や創作、後世へのデジタル史料の継承などさまざまな可能性を持つ一方、遺族や関係者、また社会的に有害な影響を及ぼしたりする可能性もある。
本OSは、RISTEXプログラム「亡き人のAI生成に関するトラスト形成と合意形成」に参画している情報社会学者、哲学・倫理学者、法学者およびデジタル遺品にまつわるジャーナリストによる研究成果の発表とパネルディスカッションを行うとともに、本領域に関心を持つ研究者による研究発表を募集する。具体的には、故人と人工知能技術を用いた故人の生成に関する研究、故人のAI生成サービスに関する研究、故人のAI生成に関わる社会・倫理・法的問題に関する研究などを幅広く募集する。

テーマの例:
・故人AIに関する技術開発
・故人のAI生成に関するサービス
・故人AIに関する社会的問題
・故人AIに関する倫理・法的問題 等

キーワード

  • 故人AI
  • 生成AI
  • デジタル遺品
  • プライバシー
  • 倫理

OS-24 Behavioral Data Science: 行動インサイトとAI・機械学習・最適化

オーガナイザ

  • 戸田 浩之(横浜市立大学)
  • 倉島 健(NTT人間情報研究所)
  • 深澤 佑介(上智大学)
  • 赤木 康紀(NTT人間情報研究所)
  • 落合 桂一(東京大学)

内容・テーマの例

本OSでは,人間の行動データをより効果的かつ実践的に活用するために,社会科学・人文科学で培われている人間の意思決定や行動の傾向・パターンを示す「行動インサイト」をAIに取り入れる「Behavioral Data Science」に関する幅広い研究を募集します.行動インサイトを既に活用している研究に加え,行動インサイトの活用が有望と考えられる研究や,行動インサイトとAIの統合における議論を深める上で重要と思われる行動データに関する研究も歓迎します.典型的には,個人や集団の行動の数理モデリング・予測研究や,個人や集団の行動変容を促す介入策を探索する最適化研究などが挙げられます.行動インサイトの活用により,モデルの説明性が高く,また,学習データが不足している際にも予測,最適化が行えるといった重要な特徴を持つことが期待されます.また,社会科学・人文科学分野の既存の行動インサイトに閉じず,近年,データ化が進む人間行動に関するビッグデータを解析しそこから得られた知見や傾向を活用するような研究も含みます.

キーワード

  • 行動データ
  • Behavioral Data Science
  • Prescriptive Analytics
  • 機械学習
  • 最適化
  • 行動変容
  • 意思決定
  • 行動経済学
  • 情報推薦
  • エージェント

OS-25 生成AI時代に医歯薬学・生命科学の革新を目指すAI応用

オーガナイザ

  • 矢田 竣太郎(筑波大学)
  • 荒牧 英治(奈良先端科学技術大学院大学)
  • 河添 悦昌(東京大学)
  • 堀 里子(慶應義塾大学)
  • 木﨑 速人(慶應義塾大学)

内容・テーマの例

大規模言語・マルチモーダルモデル(LLM, LMM)に基づく生成AIが社会実装され始めて久しい。学術への応用も盛んで、情報科学分野では生成AIによる研究自動化の例も見られるようになった。かねてより、自然言語処理や画像処理を医歯薬・生命科学分野に適用する研究は多数見られ,診断支援,フェノタイピング,副作用抽出などの応用が進展している。しかし医用画像システムが医療機器の認定を受け始めた以外には,医薬学研究や臨床現場での実用化、あるいは研究手法にパラダイムシフトを与えるような革新的な応用にはまだ課題が残されている。本OSでは,医歯薬学・生命科学上の成果に結びつく実際的な支援を,AI技術によって実現しようとする取り組みを広く募集する.2024年度に「医歯薬学・生命科学の革新を目指した言語処理」と題して開催したOSを、画像や音声といったあらゆるモダリティに拡大して実施する。未知の副作用の検出,創薬,新規タンパク質の創生などの挑戦的な研究支援に加え,LLM・LMMを活用した新たな研究アプローチの提案,臨床現場での実用化に向けた取り組みなども歓迎する.研究の規模や手法は問わない.実際の医歯薬学・生命科学的成果を挙げられた研究に限らず,それを目指す途上の研究も歓迎する.第1回の議論を発展させ,言語・音声・画像・動画・3Dモデル等の処理技術が工学として他の研究領域にもたらす方法論上の革新可能性について,さらなる知見の共有と議論の深化を目指す.

キーワード

  • 研究支援システム
  • 医療情報学
  • 医薬品情報学
  • 生命情報学
  • 大規模言語モデル
  • 大規模マルチモーダルモデル

OS-26 AIが生み出す偽・誤情報との付き合い方を考える

オーガナイザ

  • 宮原 克典(北海道大学)
  • 西田 知史(情報通信研究機構)

内容・テーマの例

正しい情報へのアクセスが信頼できる形で確保されていることは、公正な社会の大前提である。しかし、近年の生成AIの発展は、社会への偽情報や誤情報の拡散を加速させ、この大前提を根本的に脅かす可能性を秘めている。本OSでは、生成AIによる偽・誤情報の拡散が人間社会に対してもつ意味を見極め、今後の人間社会はどのように対応していけばよいかを考察する。「正しい情報と偽・誤情報の違いは何か」「どうして人は偽・誤情報を信じるのか」「人はどれほど偽・誤情報に脆弱なのか」「偽・誤情報の蔓延する情報環境は人間社会にどのような影響を与えうるのか」といった根本的な問いから探究し、AIの影響を受けた情報環境と賢く付き合う力を育成し、公正な人間社会の発展に貢献するような情報環境を構築するためには、どうすればいいのか、哲学、認識論、認知科学、神経科学、社会学、安全保障論などの観点から、参加者全員で議論を深めたい。

発表テーマの例
•偽・誤情報と正しい情報の違いは何か?
•なぜ偽・誤情報を信じてしまうのか?
•人はどれくらい偽・誤情報に弱いのか?
•偽・誤情報の蔓延した情報環境は人間社会にどのような影響を与えるか?
•偽・誤情報との賢い付き合い方とは何か?

キーワード

  • 偽・誤情報
  • 生成AI
  • AI倫理
  • 社会認識論
  • 認知・神経科学
  • 安全保障論

OS-27 サロゲートAIモデルの気象・海況/船舶への応用

オーガナイザ

  • 木村 考伸(古野電気株式会社)
  • 竹縄 知之(東京海洋大学)
  • 松岡 大祐(海洋研究開発機構)

内容・テーマの例

近年、世界の海運業界はグローバルな貿易拡大に伴い、船舶運航の効率化や安全性の向上はますます重要な課題となっています。
一方で、気候変動による影響や海洋環境の複雑化により、従来の手法では対応が難しい問題が増加しており、これらの課題に対処するため膨大なデータをリアルタイムで処理し物理現象をシミュレートするAI技術(サロゲートモデル)を活用することにより、従来の数理的なアプローチを大きく上回る予測精度の向上や迅速な意思決定支援を可能にすることが期待されています。

気象・海況における物理現象を高度にシミュレートするAIモデル、潮波風などの流体現象に対する船舶への影響を個々の船に合わせ模擬可能なAIモデル、運航時のリアルタイム観測データから波浪等を予測可能なAIモデルや、船舶のセンシングデータを統合した解析により操船判断を支援するAIモデル、等の研究は船舶運航の最適化や予測精度のさらなる向上に寄与し、船員の負担軽減とリスク管理の強化を可能にする技術として多くの注目を集めています。

これらの気象、海況、船舶に関連した基礎から応用にわたる人工知能研究および関連する研究を広く募集します。

本セッションでは上記目における、リアルデータとシミュレーションに対するAI技術を用いた統合的な役割を議論し今後の発展を見据えます。

キーワード

  • サロゲートモデル
  • 流体力学(CFD)
  • 海況推定
  • 気象推定
  • 船舶運航支援
  • 大規模言語モデル(LLM)

OS-28 大規模・高品質な生成AI時代における人工生命と人工意識

オーガナイザ

  • 堀井 隆斗(大阪大学)
  • 堀部 和也(理化学研究所)
  • 鈴木 啓介(北海道大学)
  • 吉田 尚人(京都大学)

内容・テーマの例

生命システムの根源的な特徴である主体性(agency)は,環境との相互作用の中でいかにして創発するのだろうか?この問いに対して,人工生命研究や認知ロボティクスは,意識・知能・信念といった現象を構成的アプローチによって解明しようと試みてきた.特に近年では,深層学習をはじめとする機械学習技術の革新的な進展により,これらの研究分野は新たな展開を見せている.生命現象の様々な側面—発生,発達,認知プロセス,社会的相互作用—についての理解が深まり,またコンピュータシミュレーションの枠を超えて,実環境における人工エージェントとヒトとの相互作用研究へと発展している.
一方で,大規模言語モデルや画像生成AIに代表される現代の生成AI技術は,明示的な主体性を持たないにもかかわらず,人間に匹敵する高度な認知能力を示すようになった.これらのシステムの急速な社会実装は,私たちに「生命らしさ」の本質とは何かという根本的な問いを突きつけている.
このような背景のもと,本ワークショップでは,生命・意識・知能に関する多様な研究アプローチを募集する.具体的には以下のようなテーマを想定している:
・ 自己組織化する人工生命システムの理論的研究
・ 発達・進化の観点からの認知アーキテクチャのモデリング
・ 実環境における主体間相互作用の実験的研究
・ 意識や主観的経験に関する計算論的アプローチ
特に,最新の機械学習技術と伝統的な人工生命アプローチを橋渡しするような研究提案を歓迎する.様々な分野の研究者との建設的な議論を通じて,生成AI時代における主体性の本質に迫りたい.

キーワード

  • 人工生命
  • 人工意識
  • 主体性/自律性/行為者性
  • 主観体験/クオリア

OS-29 デジタル人文学とAI

オーガナイザ

  • 大向 一輝(東京大学)
  • 嘉村 哲郎(東京藝術大学)
  • 亀田 尭宙(人間文化研究機構)
  • 中村 覚(東京大学)

内容・テーマの例

多くの学問領域と同様に、人文学においても大規模なデータベースやコーパスが整備され、これらを対象とした言語処理やマルチメディア情報処理等によって新たな知見を得る「デジタル人文学」・「人文情報学」と呼ばれる分野が注目されています。デジタル人文学ではネットワーク分析や知識表現、機械学習を用いた文字認識など、従来の研究プロセスを拡大・効率化する手段としてAI技術が用いられる一方、今後は基盤モデルが生成する情報が人間文化に与える影響や、社会システムを支えるAI研究者・技術者の価値観を人文学の研究対象として扱う必要性が生じています。本セッションでは、デジタル人文学の先端的な研究とともに、学際領域としての議論を喚起するような発表を広く募集します。

キーワード

  • 思想・歴史・文学研究におけるAIの応用
  • 多言語テキスト分析
  • 多言語手書き文字認識
  • 時空間・概念の知識表現
  • 人文学データの構造化・共有
  • AIにおける思想・歴史・文学研究の応用

OS-30 AIによるスマートマニュファクチャリングとシステム健全性管理

オーガナイザ

  • 矢入 健久(東大先端研)
  • 堤 誠司(JAXA)
  • 今村 誠(東海大学)
  • 植野 研(東芝)

内容・テーマの例

Smart Manufacturingおよび System Health Management(SM&SMH,システム健全性管理)は,統計学,信頼性工学,機械工学,AIの分野で,異常検知,不良要因推定,部品寿命予測の観点から,機械,電気・電子,土木・建築,化学,金属などの分野(ドメイン)ごとに研究が深められ,おもに,製造分野やインフラ分野にて,設計支援,生産管理,品質管理,設備管理,運用・保守・点検の効率化,サプライチェーン管理などが実践されてきています.一方で,近年,SM&SHMのためのAI関連技術として,データ駆動型アプローチが活発に研究・利用されています.このアプローチでは大量の学習データが必要ですが,産業システムでは十分なデータが必ずしも利用可能ではないことが多くあります.このため,ドメイン知識に基づくモデルベースアプローチとの融合がますます重要になっています.本セッションでは,AIに基づく方法論・ツール・基盤技術の観点から,ベストプラクティスや課題の共有を通じて,現場ニーズにこたえるための分野横断的な議論を行います.生産現場やインフラでの,機械学習や深層学習による設計・製造支援,保守点検効率化,異常検知,不良要因推定,故障予測,シミュレーション連携,残存耐用期間(RUL)の予測など,また,生産管理や設備管理,品質管理,点検保守における最適化や計画問題なども対象テーマとなります.

キーワード

  • 異常検知
  • 故障予測
  • 不良要因推定
  • 設計支援
  • 品質管理
  • 機械学習・深層学習

OS-31 デジタルゲームの人工知能

オーガナイザ

  • 三宅 陽一郎(立教大学)
  • 濱田 直希(KLab株式会社)

内容・テーマの例

ディジタルゲームの人工知能は、近年、様々な大学、企業において集中的に研究されている。連続空間においてリアルタイムで動作する人工知能を作ることを主とするデジタルゲームは、実空間への人工知能への応用のテストステージとしても、また日本における大きな産業であるゲーム産業においても、研究対象として、ますます大きな広がりを持っている。本セッションはディジタルゲームに応用可能な人工知能技術に関する総合的なセッションである。キャラクターAI、ゲーム全体をコントロールするメタAI、地形解析・空間内における物・人の分析などを行う空間AIなど、基本となる人工知能から、ユーザーデータ解析、機械学習の応用、言語AIの応用、自動QAまで、学術研究から産業応用まで幅広いテーマを扱う。擬似リアルタイムでユーザーとインタラクティブに動作する人工知能について、アカデミック、産業を問わず広く発表を募集する。ディジタルゲームの人工知能はステートマシンやプランニングなど記号主義と、ディープニューラルネットワークを始めとするコネクショニズム的アプローチの融合がなされてつつあり、人工知能学会誌2023年9月号の特集など、急速にアカデミックな研究と産業応用の距離が縮まりつつある。特に深層強化学習、モンテカルロ木探索は囲碁AIにおける応用を経て、学術・産業のディジタルゲームの人工知能において集中的な研究が展開されており、学術と産業で良い共創的関係が形成されつつある。本セッションにおいて産業・学術の研究者が交流しお互いを刺激し合うことで、ディジタルゲームAIの研究を通じて人工知能全般の研究を盛り上げる機会としたい。

キーワード

  • デジタルゲーム
  • ゲームAI
  • キャラクターAI
  • メタAI
  • 強化学習
  • 空間AI
  • 自動QA

OS-32 Mechanistic Interpretability

オーガナイザ

  • 高槻 瞭大(一般社団法人AIアライメントネットワーク・東京大学)
  • 峰岸 剛基(東京大学)
  • 宮西 洋輔(株式会社サイバーエージェント・北陸先端科学技術大学院大学)
  • 高木 優(国立情報学研究所)

内容・テーマの例

Mechanistic Interpretabilityは、現代の深層学習モデルがどのように情報を処理しているのか、その内部メカニズムを細部まで理解することを目指す研究領域である。急速に進化するAI技術において、モデルの内部構造を可視化し、説明することは、信頼性と透明性の向上のみならず、安全性やモデル設計の最適化にもつながる。
なお類似の概念として説明可能AI(XAI)があるが、Mechanistic Interpretabilityはモデルの内部メカニズムの解析により重きをおいており、モデル内部の特徴量間の厳密な因果関係の特定を目指すという特色がある。
本セッションでは、特徴量可視化、推論時介入などを通した回路発見、普遍性、訓練ダイナミクスといった、本分野の代表的なテーマに焦点を当てる。さらに、大規模言語モデルに限らず、視覚やマルチモーダルモデルの解釈、さらには神経科学や物理学など他分野への応用といった幅広い研究発表を募集する。今後、本分野が急激に発展していくことが予想される中、未だ少数である国内研究者のネットワーキングや情報共有、ひいては本分野への参入促進に有用な機会となることを期待する。

キーワード

  • 特徴量可視化(Feature Visualization)
  • 回路発見(Circuit Discovery)
  • 普遍性(Universality)
  • スパースオートエンコーダ(Sparse Autoencoder)
  • 訓練ダイナミクス
  • AI安全性

OS-33 AIを活用したマーケティング実践

オーガナイザ

  • 西村 直樹(リクルート)
  • 池田 春之介(リクルート)
  • 関根 翔(メルカリ)
  • 大橋 耕也(メルカリ)
  • 佐々木 直(講談社)
  • 川上 孝介(博報堂テクノロジーズ)
  • 松本 健(JINS)
  • 磯 智大(ラクスル)
  • 小林 健(東京科学大学)

内容・テーマの例

人工知能(AI)技術の急速な発展により、マーケティング分野においても革新的な分析手法や戦略が生まれている。消費者行動分析においては大規模データの高度な分析が可能となり、機械学習を用いた高精度な需要予測、個別化された商品推薦やインセンティブ設計、さらにはコンテンツ生成に至るまで、その応用範囲は拡大している。
本オーガナイズドセッションでは、実務家がAIを活用したマーケティングの実践事例や課題を共有し、研究者がマーケティング課題に対する先端の研究を普及させるための交流と議論の場を提供することを目指す。消費者行動分析、需要予測、価格決定、推薦システム、インセンティブ設計、コンテンツ生成などマーケティングに関する幅広いテーマに関する実務家、研究者からの発表を募集する。

キーワード

  • 消費者行動分析
  • 需要予測
  • 価格決定
  • 推薦システム
  • インセンティブ設計
  • コンテンツ生成

OS-34 AIアライメント

オーガナイザ

  • 林 祐輔(AIアライメントネットワーク)
  • 坂本 航太郎(東京大学)
  • 和地 瞭良(LINEヤフー株式会社)
  • 阿部 拳之(株式会社サイバーエージェント)
  • 森村 哲郎(株式会社サイバーエージェント)

内容・テーマの例

人工知能(AI)は複雑なタスクを少ない人間の関与で処理し,新たな成果を生むことが期待される一方で,意図しない動作や制御不能なリスクも孕む.このため,AIが人間の価値観と意図に従い,社会進歩に貢献することを保証する技術である「AIアライメント」の重要性が増してきている.今日では,LLMの事後学習を経由して人間の価値観と意図に従った振る舞いをさせるAIアライメント研究が活発に進められている.AIアライメントは単なる技術課題に留まらず,AIが人間や社会とどのように相互作用し,環境と調和するかという複雑な問題を含む.この側面からは,AIアライメントは多様なステークホルダー間の合意形成やマルチエージェント間の協調の問題と捉えることができる.これは経済学,集団力学,集合知の研究としてこれまでも部分的に議論されてきたものである.Learning in Games分野の進展,オンライン最適化分野,マルチエージェント強化学習,さらには集合的予測符号化理論の発展により,AIアライメントは大きく進展しており,また,集団意思決定,文化進化,言語創発の関係や科学研究コミュニティのモデル化など新たな研究領域が開拓されつつある.本セッションでは(1)Learning in Games分野,(2)オンライン最適化分野,(3)マルチエージェント強化学習分野,(4)集合的予測符号化理論の展開,からのAIアライメントの技術発展やその課題の重要性を議論し,人工知能のみならず,自然言語処理,認知科学,神経科学,メタ科学など,広範な分野の研究者と学際的な交流を促進する場を目指す

キーワード

  • AIアライメント
  • Learning in Games
  • 集合的予測符号化
  • マルチエージェント均衡
  • AI安全性

OS-35 非構造データからの情報抽出

オーガナイザ

  • 中田 百科(株式会社リクルート)
  • 村田 達郎(株式会社リクルート)
  • 山下 雄大(Megagon Labs)

内容・テーマの例

近年のAIの進展により、非構造データからテキストを抽出するOCRの性能が飛躍的に向上している。特にLLMやマルチモーダルのモデルの登場によって、従来のテキスト抽出から一歩進んで、単語間の関係や文脈を踏まえた高精度な情報抽出が可能となってきている。表構造やフォーマットなどが乏しい文書画像であっても、適切に情報を構造化してユーザに提示できるようになると期待される。広告画像やweb画面、ひいては試験問題など、現実世界にはこういった画像が多数存在するため、産業応用のポテンシャルが高く関連研究が一層盛んになっていくと考えられる。ただし、OCRやLLMあるいはその前後の画像処理や自然言語処理など、処理プロセスは多様かつ複雑化しており、今後の効率的な研究のためにはノウハウの迅速な共有が不可欠となってくる。そこで本セッションでは、非構造データからの情報抽出に関する研究発表を幅広く募集し、議論や交流を深める機会を設けることを目的とする。対象データは、画像だけでなく動画や音声など一般の非構造データを含める。

キーワード

  • 非構造データ
  • 情報抽出
  • 関係抽出
  • OCR
  • LLM
  • マルチモーダル

OS-36 日常生活知識とAI

オーガナイザ

  • 福田 賢一郎(産業技術総合研究所)
  • 江上 周作(産業技術総合研究所)
  • 宮田 なつき(産業技術総合研究所)
  • Qiu Yue(産業技術総合研究所)
  • 鵜飼 孝典(富士通株式会社)
  • 川村 隆浩(農業・食品産業技術総合研究機構)
  • 市瀬 龍太郎(東京科学大学)
  • 岡田 慧(東京大学)

内容・テーマの例

日常生活空間での人の活動は,各家庭の居室配置や生活習慣含め,人やモノおよびその相互作用など個別性が高いさまざまな要素で構成される.この個別性の高い状況を適切に解釈して日常生活を支援するためには,常識知識と個別知識を組み合わせや,知識の取得・更新が必要となる.例えば,高齢者支援や子供の見守り,家庭向け汎用ロボットなどへの応用では,当該者の身体性や屋内の環境などの個別知識,タスク遂行に係る行為の知識,身体の知識に加えて,事故リスクやサービスの専門知識,対象物や出来事に関する常識的な知識などが必要になるであろう.
そこで本OSでは昨年度,一昨年度に引き続き,上記課題の解決に向けて,画像,動画,音声,人間モデル,テキスト,知識グラフ,センサデータなど,様々なモダリティのデータや基盤モデルを組み合わせて状況を推論するAIシステムやロボットシステムの発表,様々なデータセットの構築と活用に関する発表などを集めて議論を行う.
また,AI,ロボットだけでなく,介護,子育て,日常生活における安全支援などの領域からの論文発表も募ることで幅広い議論を通して課題の共有と日常生活空間へのAIの埋め込みの加速を期待する.

キーワード

  • 日常生活
  • 人間行動理解
  • 基盤モデル
  • 知識グラフ
  • ヒューマンロボットインタラクション

OS-37 AIを用いた空間・時系列データのモデリング手法と応用

オーガナイザ

  • 田部井 靖生(理化学研究所革新知能統合研究センター)
  • 沖 拓弥(東京科学大学 環境・社会理工学院
  • 竹内 孝(京都大学大学院情報学研究科)
  • 藤井 慶輔(名古屋大学大学院情報学研究科)
  • 武石 直也(東京大学先端科学技術研究センター)
  • 西田 遼(産業技術総合研究所 人工知能研究センター)

内容・テーマの例

 都市や自然環境など、多様な空間で計測されるデータのAIによる活用が進み、その進歩は社会や科学の分野への貢献をもたらしつつあります。都市の混雑情報や移動データはリソース配分の効率化に役立ち、GPSや画像認識を用いた移動体の追跡データは動物の生態理解やスポーツ選手の技能評価に活用されています。さらに近年では、デジタルツインなどの仮想空間で計測されるリアルな人間行動の分析においても、AIの活用に期待が集まりつつあります。
 この文脈において、空間および時系列データのモデリングと解析が重要になっています。これらのデータから得られる行動パターンは、さまざまな分野における重要な意思決定に影響を与えるため、その理解は効果的な戦略と施策の鍵を握っています。しかし、空間および時系列データの普遍的特性を活用する高度なAI技術はまだ確立されておらず、そのようなAI技術が社会に与える影響やリスク、信頼性についても議論を深める必要があります。
 このセッションでは、AIを用いた空間および時系列データのモデリングと解析手法、そしてその応用について議論します。工学やコンピュータ科学をはじめ、自然科学や人文科学、経済学、社会学、環境学、心理学の分野からの参加を期待し、データ取得と解析、意思決定や政策決定への利用可能性、産業応用、教育分野での応用、社会での実応用など、広範なテーマでの議論を目指しています。異なる分野からの参加を通じて、新たな課題の発見や未解決問題の解決への貢献を目指します。

キーワード

  • 時空間データ
  • 深層学習
  • 生成AI
  • 機械学習
  • 軌跡・活動・行動データの情報処理

OS-38 ヒューマン・イン・ザ・ループAI

オーガナイザ

  • 李 吉屹(山梨大学)
  • 荒井 ひろみ(理化学研究所 AIP)
  • 鹿島 久嗣(京都大学)
  • 小山 聡(名古屋市立大学)
  • 森 純一郎(東京大学)
  • 堤 瑛美子(法政大学)
  • 新 恭兵(京都大学)

内容・テーマの例

ヒューマン・イン・ザ・ループ(Human-in-the-loop)AIは、人間とAIが適切に役割を分担し、協働することで、さまざまな困難な問題の解決を目指している。近年、AIの自動化や予測能力は著しく向上しているが、高度な判断や倫理的な問題においては、依然として人間による補完が必要である。今後、AIがさらに社会に受け入れられ、発展していくためには、ヒューマン・イン・ザ・ループAIの考え方が欠かせない。本セッションでは、ヒューマン・イン・ザ・ループAIの理論的背景から、実現に向けた方法論の開発、その実践、さらには社会からの要請に至るまで、幅広い観点から議論を行う。例えば、人間参加型の機械学習、品質の高いデータセット作成、さまざまなバイアスへの対処、プライバシー保護、AIの意思決定プロセスの説明可能性などのトピックや、AIへの人間の介入とその戦略および、実践的な事例研究等のトピックが含まれる。 本セッションでは、これらのトピックに関する研究発表と議論を通して、AIと人間が連携して取り組むべき現実の問題を解明し、研究や産業界の発展に貢献することを目的とする。想定されるキーワードを以下にあげるが、必ずしもこれらに限定されるものではなく、幅広い観点からの投稿を期待する:ヒューマンコンピュテーション、クラウドソーシング、AIの説明可能性、人間参加型機械学習、データ収集とアノテーション、バイアスと公平性、プライバシー保護、AIの倫理、科学・産業におけるヒューマン・イン・ザ・ループAI応用、生成AIとヒューマンフィードバック、教育とAI

キーワード

  • ヒューマンコンピュテーション
  • クラウドソーシング
  • 機械学習
  • AIの倫理
  • HCI
  • 大規模言語モデル(LLM)
  • 人とAIの協調

OS-39 創作者と人工知能が創る創作の未来

オーガナイザ

  • 上野 未貴(京都情報大学院大学)
  • 大澤 博隆(慶応義塾大学)
  • 森 友亮(東大先端研/慶應SFセンター)
  • 森 直樹(大阪公立大学)

内容・テーマの例

近年,生成 AI をはじめとした AI 技術の創作分野への応用が急速に進展し,創作や物語を巡る環境が大きく変わりつつある.
本セッションでは,生成 AI 技術を活用した創作物の生成・解析,人間の発想・創作過程の分析,さらにユーザーと AI が協調する創作支援や、物語作成過程を未来のビジョン作成に応用する SF プロトタイピングなど,創作と物語に関する研究を広く募集する.
対象となる創作物としては,漫画・映画・演劇・アニメ・小説などの映像/文芸作品およびゲーム・チャットボットなどの対話/インタラクティブ作品,さらにはスペキュラティブデザインなどのアート作品/ワークショップなど,物語応用,その他広義の創作活動に関する研究も歓迎する.

本セッションでは,生成 AI を始めとした AI 技術に関する理論的研究から,創作者の創作過程の分析と補助,ChatGPT や Stable Diffusion を用いた実践的応用事例に至るまで,多様なアプローチの研究を取り上げる.

本セッションが,研究者と創作者,さらには生成 AI を始めとした AI 技術に興味を持つ参加者同士が交流し,創作分野における AI 技術の可能性や課題,今後の創作・物語の役割について議論する場となることを目指す.また,本OS 後に特集号を合わせて組むことで,創作・物語応用の研究知見を広げる.本 OS をもとに創作者と AI が共存する未来の創作を探る第一歩として,新たな視点と発見を促す機会を提供したい.

キーワード

  • 創作者と人工知能
  • 物語生成・分析
  • 生成 AI・大規模言語モデル(LLM)
  • スペキュラティブデザイン
  • SF プロトタイピング

OS-40 ひと中心の未来社会とAI

オーガナイザ

  • 梶 洋隆(トヨタ自動車株式会社)
  • 梶 大介(株式会社デンソー)
  • 浅田 祐樹(株式会社デンソー)
  • 高椋 佐和(株式会社アイシン)
  • 豊田 平司郎(トヨタ自動車株式会社)
  • 堺 浩之(株式会社豊田中央研究所)
  • 城殿 清澄(株式会社豊田中央研究所)

内容・テーマの例

深層学習などに代表されるAI技術が人々の生活や社会システムの中で当たり前のように使われるようになって久しい.ひと中心の未来社会におけるAI技術は,便利さや効率の追求はもちろんのこと,多様な個人のWell-Beingと社会の受容性・レジリエンスを高め,カーボンニュートラルなどの地球環境への配慮も欠かさないという多元性と,その要求の変化に対応していく機能が求められる.本セッションではテーマやキーワードに関連する研究発表を幅広く募集し,具体的な応用や問題設定の提示,それに対する解決策やアプローチを追究することで,より良い未来を創り出すためのAI技術の方向性を模索したい.

キーワード

  • 人・もの・情報とモビリティ
  • 人-機械,人-人のインタラクション
  • 学習理論・数理最適化
  • つながる社会とネットワーク科学
  • 責任あるAI

OS-41 世界モデルと知能

オーガナイザ

  • 鈴木 雅大(東京大学)
  • 岩澤 有祐(東京大学)
  • 河野 慎(東京大学)
  • 熊谷 亘(オムロンサイニックエックス)
  • 松嶋 達也(東京大学)
  • Paavo Parmas(東京大学)
  • 谷口 尚平(東京大学)

内容・テーマの例

世界モデルとは,エージェントを取り巻く環境・身体など様々な要素を学習によって内部的に構築する枠組みである.こうした世界モデルを用いることで,直接には観測できない,過去/未来・反実・観測不能な状態を予測や推論できるようになり,目的に応じた行動選択の性能を高めることができる.
世界モデルのように環境のモデル化を考えることは,制御工学における内部モデルや認知科学におけるメンタルモデルなどでも議論されており,必ずしも新しいアイディアではない.しかし深層学習の発展により,従来は困難だった高次元で複雑な世界の部分観測データに基づくモデル化が実現できるようになったことは大きなブレイクスルーである.さらにここ数年の基盤モデルの進展によって,ロボティクスへの応用や自然言語との統合などの研究が進められている.
本企画セッションでは(1)深層学習を用いて外界をモデル化する方法論,(2)学習した世界モデルの利用方法,そして(3)AIの諸問題における世界モデルの重要性についての議論を行う.世界モデルという概念を介して,人工知能だけでなくロボティクス,自然言語処理,3DCGによる現実世界のモデリング,認知科学,神経科学などの分野の研究者と共同して学際的な議論を行う場となることを目指す. 

キーワード

  • モデルベース強化学習
  • 深層学習
  • 状態表現学習
  • 基盤モデル
  • 知能の汎用性

OS-42 大規模言語モデルの安全対策 ― 大いなる力には、大いなる責任が伴う

オーガナイザ

  • 金子 正弘(MBZUAI)
  • 小島 武(東京大学)
  • 磯沼 大(The University of Edinburgh/東京大学)
  • 丹羽 彩奈(MBZUAI)
  • 大葉 大輔(ELYZA/東京科学大学)
  • 村上 明子(AIセーフティーインスティチュート)
  • 関根 聡(情報学研究所 大規模言語モデル研究開発センター)
  • 内山 将夫(情報通信研究機構)
  • Danushka Bollegala(The University of Liverpool/Amazon)

内容・テーマの例

大規模言語モデル(LLM)は、私たちの生活や仕事に新たな可能性をもたらす一方で、その影響力の大きさゆえに、誤情報の拡散、個人情報の不適切な取り扱いや社会的差別の助長などの悪影響をもたらす危険性もあります。そのため、LLMに対して安全性を確保するための対策を講じる必要があります。本セッションでは、悪意あるユーザに対する防御手法、透明性と説明可能性の確保、差別やバイアスのある生成の低減、道徳的または倫理的価値観にアライメントする手法、プライバシーや著作物に対する忘却手法などのLLMの安全性を高める研究および、これらの多言語・多文化における取り扱いの研究を対象としています。このセッションを通じて、安全性に取り組む研究者同士の知見共有と議論を促進し、国内のコミュニティーを盛り上げていきたいと考えています。さらに、これまでLLMの安全性に馴染みのない方々にも、その重要性と課題を知る機会を提供できたらと思います。

キーワード

  • 大規模言語モデル(LLM)
  • 公平性
  • 透明性
  • 説明性
  • 頑健性

OS-43 人工知能と創造性 — 人の模倣を超えて

オーガナイザ

  • 小林 茂(情報科学芸術大学院大学)
  • 徳井 直生(株式会社Qosmo)

内容・テーマの例

人工知能と創造性をめぐっては、これまでにも議論が積み重ねられてきました。特に、2022年から2024年にかけ、画像や音楽を生成する生成系AIの台頭に伴い、著作権など人間の権利をめぐる議論はクリエーターをはじめ多くの人々を巻き込んだものとなりました。本学会でも、ELSIなどの文脈で人間が人工知能をつくることに関する議論は盛んです。しかしながら、古くは哲学者Henri Bergsonが「ホモ・ファベル」という概念で指摘していたように、人間は道具を製作すると同時に道具によってまた変容する生物です。この事実を考えてみると、人工知能というテクノロジーによって人間が変容することに関する議論や、人間が見出す意味とその変化に関する議論が必要です。例えば、音楽生成AIはいっけん音楽を生成しているようにみえ、その観点から議論されてきました。しかしながら、実際には生成といっても人間の創造的行為の成果物をデータとして学習したモデルにより模倣しているに過ぎず、むしろ「消費」や「聴取」の新たな形態として位置付けた方が妥当かもしれません。認知科学者のMargaret Bodenによる三つの分類を参照するなら、現在の人工知能はせいぜい「結合的創造性」に留まっていると考えるのが妥当でしょう。本セッションでは、人工知能と人間の協働により、コンセプトそのものを拡張し、新たなジャンルを生み出すような「変革的創造性」を実現するにはどうすればいいかを、工学、哲学、芸術などの領域を越境的に活動する研究者・実践者の参加により議論します。

キーワード

  • 人工知能
  • アート
  • 音楽
  • 創造性
  • 哲学

OS-44 言語とコミュニケーションの創発

オーガナイザ

  • 長野 匡隼(電気通信大学)
  • 谷口 忠大 (京都大学)
  • 上田 亮(東京大学大学院)
  • 鈴木 麗璽(名古屋大学)
  • 中村 友昭(電気通信大学)
  • 橋本 敬(北陸先端科学技術大学院大学)

内容・テーマの例

近年,大規模言語モデルの進展により,言語処理能力を持つ人工知能が急速に発展し,AGI(汎用人工知能)実現への期待が一層高まっている.一方で,「知能」の源泉である言語の起源や,実世界での接地に関しては依然として多くの課題が残されている.こうした課題に構成論的アプローチから取り組む「創発コミュニケーション」に関する研究が注目を集めている.創発コミュニケーションは言語が生み出される過程をモデル化することを目的とし,身体性を持つエージェントによる言語や記号の創発に関する記号創発ロボティクスや言語の世代間の進化に着目した言語進化,複数エージェントがコミュニケーションを介して行動決定するマルチエージェント強化学習など,様々な分野が関連した研究領域である.本セッションでは,ロボティクス,複雑系科学,言語進化,自然言語処理,認知科学など,多様な分野の研究者が集い,記号創発に関連する研究成果を共有し議論を行うことで,学際的なコミュニティの形成を目指す.これにより,新たな研究領域の開拓や分野横断的な協力体制の強化を図る.

キーワード

  • 創発コミュニケーション
  • 言語進化
  • 実験記号論
  • 記号創発ロボティクス
  • マルチエージェント強化学習

OS-45 知的対話システム

オーガナイザ

  • 稲葉 通将(電気通信大学)
  • 東中 竜一郎(名古屋大学)
  • 徳久 良子(愛知工業大学/理研)

内容・テーマの例

対話システムは,音声エージェント,スマートスピーカー,コミュニケーションロボットなど様々な形で我々の生活に浸透しつつある.
初期のシステムはその場限りのやり取りを目的としていたが,近年では大規模言語モデル(Large Language Model; LLM)の進歩を受け,より長期的かつ複雑なインタラクションを指向する対話システムの研究が活発化している.
同時にマルチモーダル,マルチパーティ対話といったより複雑なコミュニケーション形態への関心も高まっている.

本オーガナイズドセッションでは,次世代の対話システム実現を目指した研究発表を広く募集する.
LLMによって実現可能なシステムのみならず,LLMのみでは実現困難と思われるチャレンジを含む研究を歓迎したい.
例えば,高度な対話戦略の実現,マルチモーダル情報統合による円滑なコミュニケーション,複数参加者間の複雑なインタラクションを円滑に進めるための対話制御,対話参加者間の相互理解を促進し協調的な対話を実現するためのコモングラウンド(共通基盤)の形成と維持,個々のユーザの特性や状況に合わせ最適な対話体験を提供するパーソナライズ手法といった要素技術に関する研究を含む.加えて,対話システムにおけるプライバシーの保護,バイアス軽減など倫理的課題への対応や社会受容性の向上に貢献する研究など,対話システムと人間社会との調和を図る上での課題解決にも繋がる発表も期待する.

キーワード

  • 対話システム
  • マルチモーダル
  • マルチパーティ
  • コモングラウンド
  • パーソナライズ

OS-46 生成AIとナレッジグラフ

オーガナイザ

  • 古崎 晃司(大阪電気通信大学)
  • 森田 武史(青山学院大学)
  • 黒川 茂莉(株式会社KDDI総合研究所)
  • 広田 航(ストックマーク株式会社)

内容・テーマの例

生成AIの幻覚(ハルシネーション)の問題もあり、生成AIに体系化されたナレッジを与える手段が必要とされています。一方で、人間が「指さし」で確認できる体系化されたナレッジの集合としてナレッジグラフがあります。本セッションでは、ナレッジグラフを用い生成AIに体系化されたナレッジを与え、応答の精度を上げたり、逆に生成AIからの出力に基づいてナレッジグラフを拡張するといった、生成AIとナレッジグラフの相互作用を促進する研究を募集します。

テーマ例は以下の通りとなります。
<生成AI→ナレッジグラフ>
・生成AIを用いたエンティティ抽出、エンティティリンキング
・ナレッジベース、ナレッジグラフの構築・補間
・ナレッジグラフの文章化
<ナレッジグラフ→生成AI>
・ナレッジを用いた生成AIの応答精度向上(RAG、GraphRAG、ハルシネーション抑制)
・生成AIの説明可能性向上
・生成AIの出力の構造化(シーングラフ等との連携)
・ナレッジグラフを用いた生成AIの学習データ、ベンチマーク作成

また、上記技術を活用したWebや実空間の領域別アプリケーションに関する研究も募集します。

本セッションは、2024年実施した企画セッション「生成AI時代のナレッジグラフ」をオーガナイズドセッションに組み替えて、幅広く発表を募集することを企図しています。

キーワード

  • 生成AI
  • 大規模言語モデル(LLM)
  • ナレッジグラフ
  • オントロジー
  • GraphRAG

OS-47 AIと人のインタラクションによる価値創造とエンパワーメント

オーガナイザ

  • 熊谷 雄介(株式会社博報堂DYホールディングス)
  • 森 正弥(株式会社博報堂DYホールディングス)
  • 平手 勇宇(楽天グループ株式会社 楽天技術研究所東京)
  • 益子 宗(芝浦工業大学 デザイン工学部)
  • 川原 圭博(東京大学)

内容・テーマの例

本セッションでは、AIと人間のインタラクションによる価値創造とエンパワーメントに焦点を当て、人間中心のアプローチに基づいた研究や実践を探求します。
AIとのインタラクションが生み出す人間能力の拡張や意思決定の支援など、新たな価値をAIと共創する可能性を追求するとともに、生活者の視点に立った技術研究とその社会への活用を目指します。
具体的には、
(1) AIと人間の協働による創造性の向上や問題解決能力の強化
(2) AIによる人の創造性支援や意思決定支援の方法論
(3)価値創造を促進するAIシステムに求められる要件
(4)現状のAI技術における限界や課題
(5)倫理的・社会的な配慮事項
などを議論します。
本セッションを通じて、AIと人間の協調による新たな価値創造の可能性を探り、人間中心の視点からAI技術の発展と社会実装を議論する場を提供し、AIがより豊かで持続可能な社会の実現に貢献することを目的とします。

キーワード

  • Human-Centered AI
  • Human-in-the-loop
  • HCI
  • ユーザ支援
  • 公平性