基調講演・招待講演・特別講演


基調講演

5月27日(火) 11:00~12:10 A会場(大ホール)

「バディAIがいる世界へ」

栗原 聡 氏
(慶應義塾大学理工学部 教授/人工知能学会 会長/慶應義塾大学共生知能創発社会研究センター センター長)

SNSでの暴走するアテンションエコノミーを触媒として,地球規模の環境変動から混迷化する世界情勢はその悪化を加速させており,もはや人間社会は臨界状態にあり,このままでは相転移が起こりカオス的状況に突入することになりかねない.これを回避するシナリオにおけるキーワードがバディAIであり,これを実現し,バディAIがいる世界を最初に体現するのは日本かもしれない.今や,道具型AI実現への旅は終わろうとしており,新たな展開,それは自律汎用型AI実現へのチャレンジであり,すでにAIエージェントの開発が熱を帯びてきているが,その先の,人と共生するAIの到達点がバディAIである.本講では,バディAIについて,そして人間社会の臨界状態からの転換をもたらすシナリオについて考察する.

[ 略歴 ]
慶應義塾大学理工学部 教授/人工知能学会 会長/慶應義塾大学共生知能創発社会研究センター センター長.慶應義塾大学大学院理工学研究科修了.博士(工学).NTT基礎研究所,大阪大学,電気通信大学を経て,2018年より現職.科学技術振興機構(JST)さきがけ「社会変革基盤」領域統括.オムロンサイニックエックス社外取締役,総務省・情報通信法学研究会構成員など.マルチエージェント,複雑ネットワーク科学,計算社会科学などの研究に従事.著書『AIにはできないー人工知能研究者が正しく伝える限界と可能性』(角川新書),『AI兵器と未来社会キラーロボットの正体』(朝日新書),編集『人工知能学事典』(共立出版,2017)など多数.

招待講演1

5月28日(水) 11:00~12:10 A会場(大ホール)

「アバターと未来社会」

石黒 浩 氏
(大阪大学基礎工学研究科教授/ATR石黒浩特別研究所客員所長)

本講演では,講演者がこれまで開発してきた自律型ロボットやアバター(遠隔操作型ロボットやCGキャラクター)の技術について紹介すると共に,そのアバター技術がどのように世の中を変えていくかを議論する.少子高齢化が進展し労働力不足が懸念される中で,介護や育児をする必要がある人や高齢者など,様々な背景や価値観を有する人々が,自らのライフスタイルに応じて多様な活動に参画できるようにすることが重要であり,そのために,人が身体,脳,空間,時間の制約から解放された社会を実現することが必要である.そのような社会を実現するのがアバターである.

[ 略歴 ]
大阪大学大学院基礎工学研究科教授(大阪大学栄誉教授),ATR石黒浩特別研究所客員所長(ATRフェロー),ムーンショット方研究開発制度プロジェクトマネージャー,大阪関西万博EXPO2025テーマ事業プロデューサー,AVITA株式会社CEO代表取締役.遠隔操作ロボット(アバター)や知能ロボットの研究開発に従事.人間酷似型ロボット(アンドロイド)研究の第一人者.2011年,大阪文化賞受賞.2015年,文部科学大臣表彰受賞およびシェイク・ムハンマド・ビン・ラーシド・アール・マクトゥーム知識賞受賞.2020年,立石賞受賞.2024年,市村学術賞功績賞受賞.

招待講演2

5月29日(木) 11:00~12:10 A会場(大ホール)

「AIのリスクと安全性〜AI広島プロセスからAISI設立まで」

村上 明子 氏
(AIセーフティ・インスティチュート所長)

近年,AIの社会実装が進み,それに伴ってAIのリスクも無視ができないものとなった.AIをより深く活用していくためには,どのようなリスクがあるのかを知り準備をしておくことが不可欠になっている.本講演では,世界でのAI安全性の動き,ならびに世界でもほぼ初期に立ち上がったAI安全性機関であるAIセーフティーインスティテュート(AISI)の活動内容をご紹介し,今後AIの研究に必要な安全性の配慮についての重要性を指摘したいと考えている.

[ 略歴 ]
1999年日本アイ・ビー・エム(株)入社,同社東京基礎研究所において研究に従事.
2021年に損害保険ジャパン株式会社に転職,損害保険のデジタル・データの利活用の推進をしている.
2022年4月より同社執行役員CDO(チーフデジタルオフィサー)としてDXを牽引,2024年よりCDaO(チーフデータオフィサー)となり,データ戦略を担う.
2024年2月,AI Safety Instituteの設立とともに,初代所長となる.損害保険ジャパンとは兼任となる.