特別講演・招待講演

特別講演

有川節夫先生

  • タイトル:応用のきく基礎研究と基礎のある応用研究を
  • 日時:2012年6月12日(火) 13:30-15:00(90分)
  • 講演者:九州大学総長 有川 節夫
  • 概要:
    創成期から約半世紀に亘って人工知能を中心にした情報学の教育と研究に携わってきた.また,情報学の基盤の在り方に関しても,文部科学省等を中心にした各種委員会に係わってきた.この6,7年間は,大学の管理運営に没頭し,情報学の研究や教育に直接的に係わることは少なくなってきたが,上記の各種委員会活動等を通じて,少し現場から退いたところから様々な提言等を行っている.この講演では,情報学,特に人工知能について,これまでの経験に基づいて具体例を示しながら,標題はその一例であるが,大事にしてきた信念・理念について話をし,大学等における研究の進め方全般についても考えを述べてみたい.具体的には,これまでに携わってきた情報検索やその基本技術としてのパターン照合アルゴリズム,帰納推論,類推の理論,機械学習,発見科学等の人工知能の基礎理論の展開と実際に関する諸課題への取り組みについて振返ってみることから始め,これまでに立ち上げてきた学際的な研究者コミュニティや国際会議,文部科学省等の委員会での審議の状況,情報基盤センターや図書館,大学全体の運営等に言及し,その上で,現在の情報学・人工知能の研究・教育について現役の研究者や学生に対する期待と希望について話してみたい.

招待講演

浅田稔先生
  • タイトル:認知発達ロボティクスによる発話ロボットへの挑戦
  • 日時:2012年6月13日(水) 13:10-14:40(90分)
  • 講演者:大阪大学教授 浅田 稔
  • 概要:
    言語は,二重の意味でシンボリックである.アイコニックからインデキシャル,そしてシンボリックに至る言語特有の参照形式の意味合いと,言語という人間に特異的と思える認知機能の象徴的な意味合いである.この観点から,人工知能の分野における最も困難な究極の課題の一つが言語能力の獲得であろう.我々は,ロボティクス研究者の立場から,言語に代表される認知機能の発達過程を構成的に理解するアプローチを推進しており,認知発達ロボティクスを標榜している.そのカギは,「身体性」と「社会性」である.本講演では,認知発達ロボティクスによる初期言語発達のモデル化の試みについて,これまでの研究を紹介し,構成的手法による言語発達の新たな理解の可能性について議論する.まず最初に認知発達ロボティクスの概要を紹介し,その中で音声模倣実験について,「身体性」と「社会性」の意味合いを検証する.次に実際の養育者との相互作用を模擬したオウム返し教示による母音獲得学習を紹介し,ロボットによる母音獲得の可能性を示す.さらに,実環境での相互作用のあり方に近い状況における,音声模倣と語彙の共発達過程について,計算機シミュレーションに基づき,模倣時の養育者側の二つのバイアス効果について検討し,そのモデル化の意味を議論する.最後に,今後の課題を述べる.