学生企画

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テーマ:「AI研究者は今,哲学者たり得ているか?」

概要

今世紀の計算機のマシンパワーの加速度的増大に伴い、ヒトの脳を構成する神経細胞の働きを基に組まれた数理モデルであるニューラルネットワークなどの機械学習技術は目を見張る速さで発展しています。その成果の助けもあり、計算機は知的さを要求されると言われてきたチェスや囲碁などのゲームで人間を破り、多くの人が持つ携帯端末には生活を支援してくれる高度なシステムが当然のように搭載されるようになりました。このような目覚ましい技術の進歩をみていると、これまで人間の高度な知能が要求されると考えられてきた振る舞いや情報処理の一部が、計算機によって実現されつつあるようにも感じます。一方で、知能と呼ばれるものが何なのか、どうすれば実現できるのかという、計算機科学が成立するはるか以前から議論され続けてきた根源的/哲学的問いに、今の人工知能研究はどれだけ答えを与えられていると言えるでしょうか。あるいは、今の当研究分野の発展は、その深い問いに解を導く方向をめがけられていると言えるのでしょうか。

急速に日常に溶け込み始めた高度なソフトウェアに対して、何を目指し、どのように発展させるのか。今、それを方向付け、制御していくために、我々は単なる情報科学者である以上に、「哲学者」として、問題に向かわなければなりません。

現代社会が求めるニーズが今、人工知能に形而上学的方向をどのように求めているか、プラグマティズム(実用主義)的方向へのどのような発展を期待しているか、あるいは、それぞれが抱えるシーズや問題点を、研究者がどれだけクリアに認識しているのかを共有することは、このような発展の方向付けには無くてはならないものではないでしょうか。

このような昨今の人工知能技術研究・開発の現状を踏まえ、本年度の学生企画では、「AI研究者は今、哲学者たり得ているか?」という問いかけをテーマに掲げ、

(1) 形而上学的/真理探究的な学問としてのAI
(2) 実用主義にそぐう有用な技術としてのAI

という二項対立を仮定し、それぞれが備える哲学を整理しながら、“AIとは何か”、また、“AIと今後どう向き合っていくべきか”、“これから何をめがけてAIを探求していくのか”を、参加者の皆様個々人で再考できる機会になるような議論をしたいと思います。

具体的には、真理探求を目掛けるアカデミアの側面(1)と、技術の実利用中心の企業的側面(2)のそれぞれを対比的に眺めながら議論を進めていきたいと思います。形式としては、お2人の招待講師をお招きし、アカデミア・企業のそれぞれの側面から、本テーマと連動した招待講演をしていただいた後、参加者から募集した「問い」を中心に、招待講師のお2人による対談形式のディスカッションを行います。

一意な答えを定めるというよりは、それらの問題をどのように検討していけばいいのか、という方針を検討する場とするような、皆様が気軽に参加できる企画にしたいと考えておりますので、多くの皆様のご参加お待ちしております。

招待講演1

「AIと哲学? AIの哲学? 哲学のAI?」

堀 浩一 氏

堀 浩一 氏
(東京大学)

AI研究というのは、常に怪しい香りが漂う学問領域であったし、これからも、そうであろう。怪しい香りのしなくなった技術領域や科学領域は、AI研究からは卒業していく。怪しい香りを敏感に嗅ぎ取り、いちいち文句を言って厳しい論戦を挑んできてくれるのは、これまで哲学者だけであったし、これからも、そうであろう。我々は哲学者と議論しながら、自分が何を研究しようとしているのかを見つめ直し続けてきた。この、AIと哲学の間の望ましい関係は、今後も変わらないと考えるが、ここで、さらにもう一歩踏み込んでみたい。すなわち、AI研究にとって哲学が不可欠なだけでなく、哲学にとってAIが不可欠になる、という可能性を考え、議論してみたい。

招待講演2

「産業における人工知能の実用的発展と、人工知能を用いた商品価値生成」

三宅 陽一郎 氏

三宅 陽一郎 氏
(株式会社スクウェア・エニックス)

エンターテインメント産業は、顧客に日常にはない「体験」を提供する産業である。特にデジタルゲームにおいては、戦闘にせよ、会話にせよ、ユーザはほとんどの時間をキャラクターとのインタラクションに費やす。そこでキャラクターの知能の多様さと高さは、ユーザ体験の質に直結する。人工知能の質を高めることは、商品価値を高めることでもある。そういった人工知能は世界中で数億~数十億回、ユーザーの相手をすることになる。
また「メタAI」はゲーム内に実装される人工知能であるが、これはログなどから常にユーザーの心理状態を推定し、心理状態に応じてキャラクターの生成や攻撃タイミングをコントールし、一定の体験の品質を保障するものである。
さらに企業における実用的価値として、人工知能に人間の作業をアシストをさせることで、一人の作業効率が数倍~数十倍にも上がることになる。デバッグ作業やデータ製作において、人工知能が活躍することで起こるコストリダクションが人工知能に期待されている。
上記三点から、企業における人工知能の実用的側面と人工知能を用いた商品価値生成について解説する。

開催日時

6月4日(火) 13:20~15:00