基調講演

辻井 潤一
  • タイトル:言語理解と知識 -情報空間の構造化に向けて-
  • 日時:2010年6月9日 10:35-12:05(90分)
  • 講演者:辻井 潤一(東京大学)
  • 概要:
    Webなど,爆発的に増大する情報をその意味に基づいてうまく構造化することは,現在の情報技術にとって最大の課題の一つである.膨大な量のテキストから必要な情報を取り出したり,新たな情報を紡ぎだしたりするテキストマイニング技術は,このチャレンジの中核の技術である.マイニング技術は,これまで量の技術として発展してきたが,本講演では,言語の構造と意味とを結びつける言語理解技術がマイニングにどのように寄与し得るかの展望,および,そのための基盤技術の現状と課題について議論する.

招待講演(一般の方も無料で聴講できます.)

黒崎 政男
  • タイトル:人工知能は哲学である
  • 日時:2010年6月10日 13:00-14:30(90分)
  • 講演者:黒崎 政男(東京女子大学)
  • 概要:
    近世哲学の開祖のひとりホッブスは,有名な『リヴァイアサン』(1651)の冒頭で「人工人間(artificial man)」について述べる.「生命とは四肢の運動にほかならず,時計のようにバネと車でみずから動く自動機械は人工生命を持つと言ってよいのであるから,人間の技術は人工人間を創りうる」.ギリシャ時代のピグマリオン伝説をはじめとして,人類の歴史は常に人工人間の存在を想定してきた.これらに見られるような,アンドロイド(=man-like)型ロボットを想定するという人間の思想は,決してひまつぶしの,あるいは興味本位のものに留まらない.なぜならそれは,人間とはなにか,という哲学的問いのひとつの正当な視点にほかならないからである.
    知能は記号的操作による演算のみで成立するのかそれとも直観的な働きが不可欠なのか.機械の心とは関係論的把握によって捉えられる虚焦点なのか.ロボットと人間の境界がメルトダウンしていくことの意味はなにか.これらについて論じてみようと思う.