人工知能学会倫理委員会は、The Future Societyなどと連携して、人工知能と社会についての対話や議論を行うためのオンラインプラットフォーム”AI Initiative”の運営に参加します。このプラットフォームは日本語のほか、英語、フランス語で公開されています。
”AI Initiative”での「オンライン市民対話」は、2017年9月から2018年2月まで4段階で行われ、誰でも好きな時に自由に参加をすることができます。また、倫理委員会では、このオンライン市民討論と関連したイベントなども開催していく予定です。
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詳細は以下を御覧ください。

開催趣旨

人工知能学会倫理委員会は2014年に設立し、倫理指針の策定などを通して国内外に情報を発信をしてきました。2017年5月の人工知能学会全国大会における公開討論では、倫理委員会と同様に人工知能と社会についての議論に取り組んでいるIEEEFLIといった海外の機関との連携を行っていくことを確認しました。
現在、国内外で人工知能と社会に関する様々な議論が展開されています。しかし、こうした議論には一部の専門家や有識者だけではなく、私たち一人一人が「今後どのような社会を作っていきたいのか」を共有し、対話し、発信する場が必要です。
その取り組みの一つとして、人工知能学会倫理委員会はハーバード大学ケネディスクール発のNPO法人The Future SocietyやIEEEと連携して、2017年9月から6か月にわたるグローバルなオンライン市民討論、”AI Initiative”を開催します。この対話には誰でもが参加いただけます。そこで得られた知見や課題は報告書としてまとめられ、AIに関する国際的機関や各国の行政機関に届けられます。

メッセージ

The Future Societyはハーバード大学ケネディ行政大学院から生まれたNPO法人です。技術発展がもたらす影響に興味を持つ市民、専門家と実践家が集まっています。我々のミッションは未来を予測することではなく創り上げるお手伝いをすることです。
2015年にハーバード大学関係の学生、研究者、卒業生と教職員が集まりAI Initiativeが作られました。人工知能の到来がもたらす影響を把握することで人工知能に関する新たな研究テーマや国際的なAI政策のフレームワークを作り上げるサポートをするのが我々のミッションです。
私たちは現在、IEEEの協力のもと、集合知を収集するプラットフォームを用いて、人工知能と社会に関する国際的な市民討論を開始しようとしています。そうすることによって世界中の政策決定者たちに実行可能な解決策を提供します。プラットフォームは英語、フランス語、日本語に対応しています。
国際的な対話を行うにあたって、日本からの意見はとても重要です。なぜなら日本のロボットはとても独特であり、また人工知能と自律型システムの重要性について重要な議論が展開されているからです。
そのため、日本の様々なステイクホルダー、たとえば研究者、専門家、実践家だけではなく、AIに興味を持っている市民の方々からのご意見とご協力をお願いしたく思います。テーマには、人工知能のほかロボットやデータ、脳神経科学、サイバーセキュリティ、経済、人類学、法律、医療、移動、国防など様々なものが挙げられます。
研究に対する意見を交換することによって、科学的な価値を生み出すことができると私たちは信じています。このような国際的な規模で、かつオンラインで知を集める方法論はいまだかつてない試みです。また、集合知によって提案される知の創造と倫理的なガバナンスの問題は普遍的なテーマでもあります。
この知の集合から得られた結果を提案としてまとめ、関連する世界中の研究者、産業界そして政策決定の場に提供する予定です。
皆様のご意見とご参加をお待ちしております。

サイラス・ホーディス(Cyrus Hodes)
AI Initiativeディレクター

対話の方法

対話には4つの段階があります。

発見 創発 探査 収束
9月-10月 11月-1月 2月-3月 3月-4月
以下の4テーマに対して、様々な意見を収集します。

  • AI革命
  • 公益のためのAI
  • 労働に対するAIの影響
  • 2045年の未来
「発見」段階で得られた様々な意見をもとに論点を整理し、より深い対話を促します。 「創発」段階で議論されたトピックのうち、重要と思われるものをさらに深堀して対話していきます。 「探査」段階で得られたアイディアに対して最も重要と思われるものを考えていきます。

参加するには

AI Initiativeのサイトから参加することができます。

討論に参加するためにはアカウント(ニックネーム可)を作成する必要があります。SNSのアカウントでも登録できます。
参加の方法は2つあります。一つは挙げられているテーマに対し、考えていることや疑問に思っていることなどを300字以内で投稿することです。
もうひとつは、他の人が投稿したコメントに対して「いいね」などの投票をすることができます。
ログインをしなくても、すべてのコメントを見ることができます。

日本語ページでの対話は日本語圏のみに閉じられています。
ただそれらの意見は漸次的に翻訳されて英語のページへと集約されていきます。英語やフランス語のページから日本語への翻訳はありませんが、右上のタブで切り替えてほかの言語での対話に参加することは可能です。

対話を促す人たちとその役割

様々な意見を整理し、様々な視点から対話を促すためのお手伝いをしてくれる人たちがいます。彼らは第2段階の「創発」段階からトピックの整理をお手伝いします。

  • ハーベスター:トピックの構成を整理し、論点のアイディアを抽出します。
  • コミュニティマネージャー:対話に貢献している人たちをサポートします。
  • ノレッジマネージャー:対話に出てくる事実のチェックをしたり、参考となる記事や研究を提示したりします。
  • シンセサイザー:各トピックの対話の概要を2週間ごとにまとめます。

ウェブセミナー

対話のための論点を紹介し、参加者からの疑問に答えるために、9月、10月、11月にAI Initiative関係者たちとのオンライン対話の場を設けます。
第1回は9月7日に行われ、このAI Initiativeのプラットフォームがどのようなものか、そのアウトプットがどのように使われるかなどについてフランク・エスクーベ(BluenoveのCEO)が紹介します。また、ケイ・ファース=バターフィールド(IEEE、テキサス大学)が、「人工知能および自律システムの倫理的配慮に関するIEEEグローバル・イニシアティブ」を紹介します。
第2回は、The Future Societyのニコラス・ミアイユの司会の元、IEEE標準評議会のディレクターであるコンスタンティノス・カラカリオスと、東京大学特任講師で人工知能学会倫理委員の江間有沙がAI Initiativeでのトピックについて対話します。
第3回は11月に行われ、ブリストル大学教授のアラン・ウィンフィールドと、「人工知能および自律システムの倫理的配慮に関するIEEEグローバル・イニシアティブ」のエグゼクティブディレクターであるジョン・ヘイブンズがAIの人類への貢献や、責任、透明性、教育の在り方などについて対話します。

参加状況(2017年末現在)

AI Initiativeには現在409名の参加がしています。使われている言語は英語、フランス語、日本語、中国語とロシア語です。よく使われているのは英語、フランス語と日本語です。
討論は現在、1000以上のコメントと1500以上の投票が寄せられています。現在はフェーズ2であり、残りの3か月で2つのフェーズを通して討論は続きます。フェーズ2では6つのトピックがあり、とても興味深い議論が展開されています。
この議論を通して、最終的にこのイニシアチブが質の高い政策的な提言を出せることを期待しています。
(参加者数などはこちらのサイトからも確認いただけます)

プラットフォームについて

オンライン討論はフランスの企業bluenoveが作ったプラットフォーム上で行われます。
システムの動作環境はInternet Explorer v.10以上、Safari v.7以上、Chrome v. 36以上、Firefox v.24以上です。スマートフォンやタブレットでも見ることができます。

最終レポート

プロジェクトは2018年3月に終了し、2018年9月に報告書が公開され、9月26日欧州議会に提出されました。報告書の全体(英語)、概要は英語日本語で読むことができます。オンライン対話への参加者数は2200人、投稿者は702で1291件の提案が投稿されたそうです。
提言の中には、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」との類比から生まれた、人工知能の技術開発において取り組むべき課題について合意形成をする「人工知能に関する政府間パネル(IPAI)」の設立なども含まれています。ほかには人工知能によって国連の掲げる持続可能な発展目標(SDGs)を進展させることを目指した「AI4SDGセンター」の設立や、国際的な競争と協調を推進していく仕組みづくりが提言されています。

CONTACT

日本でのAI Initiativeのオンライン市民討論およびその関連イベントは、人工知能学会倫理委員会がサポートをしています。プロジェクトやイベントの内容および取材等についてのお問い合わせは、以下のメールアドレスまでお願い致します。

jsai.ethics[at]gmail.com