[What's AI]人工知能の歴史

年号が,オレンジ色は人工知能関連青色はコンピュータ一般緑色はフィクションの事柄です.

- 人工知能の夜明け(〜1956)

機械による計算が可能になり,コンピュータが開発されると,今まで哲学・数学・論理学・心理学などの分野で論じられていた「人間の知的活動を行う機械」を作る試みがいくつか始められました.W.McCullouchとW.Pittsの人工ニューロンの提案,C.ShannonやA.Turingによるチェスのプログラムの作成,M.MinskyとD.Edmondsによる人工ニューロンの制作などの試みがこれにあたります.1956年にはJ.McCarthyらが発起人となった“ダートマス会議”で,この研究分野が“Artificial Intelligence(人工知能)”と呼ばれるようになりました.
  • 1923 K.Kapekが“R.U.R. (Rossum's Universal Robots)”がロンドンで上演.初めてロボットという言葉が用いられました.
  • 1943 W.McCullochとW.Pittsが“A Logical Calculus of the Ideas Immanent in Nervous Activity”を出版.ニューラルネットワークの基礎となりました.
  • 1943 A.Rosenblueth,N.Wiener,J.Bigelowが論文で“サイバネティクス”という言葉を用いました.
  • 1945 V.Bush “As We May Think”を出版し,将来,コンピュータが人間の活動を補助することを予見しました.
  • 1946 J.P.EckertとJ.W.Mauchlyが最初のコンピュータENIACを開発.
  • 1947 A.M.Turingはロンドン数学学会の講義で,現在の人工知能の概念を提唱しました.
  • 1950初 J.von Neumannは,不可能であるとされていた自己再生可能な機械を,29種のセルを用いて可能にする自己増殖オートマトンを示しました.
  • 1950 A.M.Turingが“Computing Machiery and Intelligence”を出版.知的活動をテストする方法としてチューリングテストを示しました.
  • 1950 C.Shannonが探索問題としてのチェスの解析を行いました.
  • 1950 I.Asimov がロボット3原則を発表しました.「人間を傷つけてはなならい.傷つくのを看過してはならない」「第1原則に反しない限り,人間の命令に従わなくてはならない」「第1,第2原則に反しない限り自分の身を守らなくてはならない」
  • 1951 M.MinskyとD.Edmondsが40個のニューロンをシミュレートするSNARCを制作.
  • 1955 手塚治虫の鉄腕アトムが出版されました.
  • 1956 ダートマス会議が行われました.J.McCarthyにより“Artificial Intelligence(人工知能)”という言葉が使われました.A.Newell,J.C.Shaw,H.Simonによって,最初のAIプログラム“Logic Theorist”のデモが行われました.

- 古き良き人工知能(1957〜1969)

この初期の時期のAIの研究は成功の連続でした.それまで,単なる計算しかできなかったコンピュータが少しでも知的なことができるのは驚異的なことでAIの春ともいうべき時期です.この時期のAIは明示的に記号で表された論理を基盤に成立していて,今では少し否定的な意味を込めて「Good Old Fashoned AI(古き良き人工知能)」と呼ばれています.この時期,順調に成果を上げていた人工知能研究ですが,1969年には最大の難問「フレーム問題」がJ.McCarthyとP.J.Hayesによって指摘されます.

  • 1957 A.Newell,J.C.Shaw,H.SimonがGeneral Problem Solver(GPS)を制作.
  • 1957 J.Backusが最初の高級言語FORTRANを開発.
  • 1952-62 A.Samuelがチェッカーというゲームを行うプログラムを作成し,世界チャンピオンに挑戦するにまでになりました.
  • 1958 J.McCarthyがLISP言語を開発.
  • 1958 J.McCarthyがAdvice Takerを作成.動作中でも新たな公理を受け入れることができるため,新しい問題に対しても再プログラムが不要な,初めての本格的AIシステム.
  • 1958 Friedbergが機械進化(現在の遺伝的アルゴリズム)の実験を行う.
  • 1959 H.GelernterとN.Rochesterが幾何的な定理証明を行うプログラムを作成.
  • 1950末-1960初 M.Mastermanらが機械翻訳に意味ネットワークを用いた.
  • 1960 B.WidrowがHebbのニューラルネットの学習則を拡張.
  • 1961 J.Slagleが最初のsymbol integrationを行うプログラムSAINTを作成.
  • 1962 最初の工業ロボット企業Unimation創設.
  • 1962 F.RosenblattがB.Widrowのニューラルネットをパーセプトロンと呼び,その集束定理を示した.
  • 1963 T.EvansがIQテストで行われるのと同様の幾何類比問題を扱うプログラムANALOGYを作成.
  • 1963 I.Sutherlandが対話的なグラフィックの利用をコンピュータに導入したスケッチパットの論文を発表.
  • 1963 E.A.FeigenbaumとJ.Feldmanが最初の人工知能全般についての本“Computers and Thought”を出版.
  • 1964 D.Bobrowが,代数の文章題を解くのに十分な自然言語の理解がコンピュータに可能なことを示した.
  • 1964 B.RaphaelがQ&Aシステムでの知識の論理表現の能力を示したSIRプログラムを発表.
  • 1965 J.A.Robinsonが機械的な証明手続きResolution Methodを発明.形式論理によってプログラムが効率よく実行できるようになる.
  • 1965 J.WeizenbaumがELIZAを開発.英語でいろいろな話題について会話ができるプログラムで,精神科医をまねたバージョンはネットワーク上で人気を集めた.
  • 1965 L.A.Zadehがファジー集合を提唱.
  • 1966 R.Quillianが意味ネットワークのデモを行った.
  • 1966 最初のMachine Intelligenceワークショップの開催.
  • 1966 機械翻訳に対する否定的なピアス勧告がでた.機械翻訳研究に対する財政支援がうち切られ,研究が停滞.
  • 1967 E.Feigenbaum,J.Lederberg,B.Buchanan,G.SutherlandのDENDRALは,生体の化合物の質量スペクトルを解析した.科学解析において成功した最初の知識ベースのプログラム.
  • 1967 J.MosesのMacymaは数学において成功した最初の知識ベースのプログラム.
  • 1967 R.Greenblattは知識ベースのチェスプログラムMacHackを制作.クラスCのトーナメントで対戦できた.
  • 1967 S.Amariによるニューラルネットのバックプロパゲーションによる学習手法.
  • 1968 M.MinskyとS.PapertがPerceptronsを出版し単層ニューラルネットであるパーセプトロンの限界を指摘.
  • 1968 B.RaphaelのSemantic Information Retrieval(SIR)システム.かなり,制限の強い部分英語による入力を理解できた.
  • 1968 D.C.EngelbartがoN Line System(NLS)のデモを行う.マウスやビットマップディスプレイなど現在のインターフェースの基本的な要素が含まれていました.
  • 1968 N.WirthがPascal言語を開発.
  • 1968 A.C.Clarkeの小説「2001年宇宙の旅」がS.Kubrickによって映画化されました.人工知能を搭載したコンピュータHAL9000が登場します.
  • 1969 軍事用ネットワークのARPA-net稼働
  • 1969 SRIrobotが移動能力,パーセプトロン,問題解決を統合したデモを行う.
  • 1969 R.Shankは自然言語理解での概念依存モデルを定義.R.WilenskyとW.Lehnertは話の理解に,J.Kolodnerは記憶の理解に利用.
  • 1969 第1回International Joint Conference on Artificial Intelligence (IJCAI)開催
  • 1969 J.McCarthyとP.J.Hayesが人工知能最大の難問“フレーム問題”を指摘.

- 現実からの反撃(1970〜1979)

1958年にH.Simonは10年以内にコンピュータはチェスチャンピオンに勝利することや,新たな数学の定理が証明されることを予見しました.しかし,少数の例ではうまく動作した方法が大規模な問題には適用できないことがこの時期明らかになりました.大きく三つの問題がありました.一つ目は初期のAIプログラムが単純な操作だけで動作し,対象に関する知識を持っていなかったことです.二つ目は規模の問題でした.プログラムが原理的に解を持つことと,プログラムが実際に解を得ることができることは別でした.三つ目は,知的構造を生み出すための基本構造の限界が指摘されました.それに対し,どんな問題でも解くことのできる汎用のシステムではなく,対象領域の知識を十分に用いたシステムによって,これらの問題を解決する試みが行われました.しかし,これは困難な問題を解くには,あらかじめその答えをほとんど知っていなくてはならないということを意味しました.

  • 1970 J.Carbonellは,知識表現として意味ネットワークを用いたコンピュータの補助による説明用プログラムであるSCHOLARを発表.
  • 1970 B.Woodsは,自然言語理解の表現のためにAugmented Transition Networksを利用.
  • 1970 E.F.Coddがリレーショナル・データベースを開発.
  • 1970 P.Winstonは,積み木遊びの世界で例から概念を学習するARCHプログラムを発表.
  • 1970初 J.RobinsonとD.Walkerが有力な自然言語処理のグループを創設.
  • 1971 T.Winogradは積み木遊びで使われる英語を理解するSHRDLUのデモを行いました.これは英語で指示された通りにロボットアームを動かすことができました.
  • 1972 A.ColmerauerがPrologを開発.
  • 1972 S.CookとR.KarpがNP完全性の理論を発表.
  • 1973 ライトヒル勧告.組合せ爆発問題を指摘した勧告.イギリスで2大学を除きAI研究の補助金がうち切られる.
  • 1974 T.ShortliffeがMYCINというシステムで,医療診断の領域で,知識表現と推論を用いたルールベースシステムの能力を示した.最初のエキスパートシステムと呼ばれています.
  • 1974 E.Sacerdotiは最初のプランニングのプログラムABSTRIPSを作成.階層的プランニングの技術を開発.
  • 1975 M.Minskyが,広く利用されている知識表現の方法であるフレームを,スキーマやセマンティックリンクの概念と共に発表.
  • 1975 Meta-Dendralプログラムが化学分野で新規の結果を得た.コンピュータを用いてなされた,学会誌で認められた最初の科学的発見でした.
  • 1975 Waltzが線画を理解するための制約伝搬アルゴリズムを発表.
  • 1975 J.H.Hollandが遺伝アルゴリズムという言葉を機械進化の代わりに用いる.
  • 1970中 B.Groszは伝統的AI手法の談話のモデル化についての限界を示しました.Grosz,B.Webber,C.Sidnerがcenteringの概念を用いて,自然言語処理において談話と前方照応参照に注目した.
  • 1970中 D.Marrが“primal sketch”を示し,視覚パーセプトロンでのその役割を示しました.
  • 1970中 A.KayとA.GoldbergがSmallTalk言語と,現在のGUIの原型となるAltoを開発.オブジェクト指向プログラミングとグラフィカル・ユーザー・インターフェースを確立.
  • 1976 Ethernetの開発.
  • 1976 D.LenatのAMプログラムは発見モデルのデモを行いました.
  • 1976 R.Davisがメタレベル推論の能力を示した.
  • 1978 C.Langtonにより人工生命の研究が始められました.コンピュータの中で生命の活動や進化のシュミレーションを行う試みです.
  • 1978 B.W.KernighanとD.M.RitchieがC言語を開発.
  • 1978 T.MichellがVersion Spaceを発表.概念形成プログラムの探索空間について述べた.
  • 1978 M.StefikとP.FriedlandのMOLGENプログラムが知識をオブジェクト指向で記述し,遺伝子複製の実験に応用した.
  • 1979 B.Van MelleはMYCINの知識表現と推論を一般化したEMYCINプログラムを開発.多くのエキスパートシステムシェルの原型となる.
  • 1979 J.MyersとH.PopleはINTERNISTを開発.これはDr.Myers'clinical knowledgeに基づく医療診断プログラム.
  • 1979 C.Green,D.Barstow,E.Kantらは自動プログラミングのCHIシステムのデモを行う.
  • 1979 H.MoravecがStanford Cartを開発.最初のコンピュータ制御の自律した車で,椅子のたくさんおかれた部屋や,スタンフォードのAI研究所を周回することができた.
  • 1979 D.McDermott,J.Doyle,J.McCarthyが非単調論理とtruce mentenanceの形式的な側面についての研究の発表を始めた.
  • 1979 最初の表計算ソフトVisicalcがD.Bricklinによって開発される.
  • 1979 T.Truscott,J.Ellis,S.BellovinらによりUSENETの稼働

- 人工知能の産業化(1980〜1988)

商用のデータベースシステムが開発されるようになりました.日本で第5世代プロジェクトが開始され,それによるAIへの関心の高まり,日本がAI研究で優位に立つ危惧などから,各国でAI研究への補助や投資が活発になりました.

  • 1980 L.Erman,R.Hayes-Roth,V.Lesser,R.Reddy黒板モデルについて発表.このモデルは音声理解システムHEARSAY-IIで用いられました.
  • 1980 第1回Conference of the American Association of Artificial Intelligence (AAAI)の開催.
  • 1981 D.Hillisが非常に並列性の高いコネクションマシンを設計.
  • 1982 日本で第5世代プロジェクトの開始.超並列で論理型言語を実行するコンピュータと自然言語の理解などを目標としました.
  • 1982 B.KahnやV.Cerfらが中心にTCP/IPプロトコルが完成
  • 1983 J.Laird,P.Rsoenbloom,A.NewellがSOARを発表.
  • 1983 J.AllenがInterval Calculusを発明.時系列事象の最初に幅広く用いられた定式化.
  • 1984 D.Lenat が常識をコンピュータに蓄積するCYCプロジェクトを開始.
  • 1980中 ニューラルネットのバックプロパゲーション・アルゴリズムが広く用いられるようになる.
  • 1986 日本人工知能学会の設立.
  • 1986 R.Brooksがサブサンプション(包摂)アーキテクチャーを提唱.
  • 1985 H.Cohenの自動描画プログラムAaronのデモがAAAIで行われました.
  • 1987 M.Minskyが“Society of Mind”出版.心を協調するエージェントの集団と考えた.
  • 1988 Pearlが信念ネットワークの定式化を行いました.

- 現在そして未来の彼方へ(1989〜)

直観によらない厳密な理論や確固とした実験事実をもとに現実の世界の問題を対象とするようになりました.

  • 1989 D.PomerleauがALVINN(An Autonomuous Land Vehicle in a Neural Network)を制作.2850マイルのうち50マイルを除いてコンピュータ制御による運転によって大陸を横断しました.
  • 1989 B.Artherが人工株式市場の構築を行った.
  • 1989 T.Berners-LeeがWorld Wide Webを開発.
  • 1990 J.R.Kozaが遺伝的プログラミングを開始.
  • 1990初 G.TesauroがTD-Gammonを制作.強化学習によって強くなるバックギャモンのチャンピオンレベルのプログラム.
  • 1992 S.Kubrickの映画「2001年宇宙の旅」ではこの年に人工知能を搭載したコンピュータHAL9000が稼働します.
  • 1990中 データマイニング技術の誕生.
  • 1997 チェスプログラムDeepBlueがチェスチャンピオンG.Kasparovに勝利する.
  • 1997 H.Kitanoらが中心となり第1回のRoboCupが開催されました.
  • 1999 ロボットペットが発売されました.
  • 1990末 WWWから収集した情報がAI技術を用いて処理されるようになりました.
  • 2003 手塚治虫の「鉄腕アトム」の中でアトムが開発されます.
  • 2112 藤子・F・不二雄の「ドラえもん」が作品中で製造されます.
  • 未来 人間と同等の知的活動が可能な人工知能が完成.

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主な参考文献

B. G. Buchanan, "Brief History of Artificial Intelligence", http://www.aaai.org/Pathfinder/bbhist.html.

S. Russell and P. Norvig, "Artificial Intelligence: A Modern Approach", Prentice Hall (1995).

土屋 俊,中島 秀之,中川 裕志,橋田 浩一,松原 仁, "AI事典", ユー・ピー・ユー (1988).

"コンピュータ偉人伝",http://www.chienowa.co.jp/frame1/ijinden2/

 
 
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