第22回ことば工学研究会の様子

日時: 2006年 3月10日(金)、3月11日(土)
場所: 大阪大学 言語文化研究科棟 2F大会議室
〒560-0026 豊中市待兼山町1-8

テーマ: ことば: 論理 VS 感性


久々に阪大で研究会を開催しました。今回はいつにも増して多数の参加者を得ました。 夜遅くまで議論がおよびました。議論に参加した皆様お疲れさまでした。 (コメントは途中で力つきていますが、次の研究会が終わってしまったので、 途中ですが、公開いたします。そのうち、コメントは完成させます)
絵をクリックすると大きな絵が得られます。


3/10 2006
村上氏による「係り受け情報を用いた概念ベースの作成」
辞書にないような単語をコーパスの中の共起を計算することで、 関連性を見つけ出すという研究でした。 特定の年度の新聞を使ったなどの理由で偏った結果も見られましたが、 それを逆手にとれば、面白い概念ベースが出来ると感じました。
会場風景
山本氏による「新聞コーパスからの固有名詞知識の獲得と利用」
この一つ前の研究とセットで考えると面白いかも知れません。 未知語となった語を自動的に固有名詞にするアルゴリズムが面白かったと思います。
西村氏による「Webページからの商品知識の獲得」
面白い研究でした。Web だけでなく、他のメディアも使うといいのかなという感じでした。
小田氏による「文字が喚起する審美的印象の諸相について」
文字自体の与える印象を実験により解析した研究です。 cが曲線的とかは文字の字形から来る印象のように思えますが、 アレフがアラーから来るなど、その文字が含まれる、もしくは、 その文字の位置づけまでも心底にありそうなので、 非単語などを作成して実験すると面白いかも知れないと感じました。
青柳氏による「日・英・仏語の物語文と世界認識 ――タクシス的構成法の開発に向けて」
日本文学の翻訳を通して、英語、フランス語の世界認識を説明してもらいました。 見ている位置がかなり言語により違うという感じでした。 誤訳ではないかという指摘もあったのですが、やはり、そうとしか訳せない ``頭''と考えた方がいいのかも知れません。
鈴木氏による「ユニバーサルコミュニケーションにおける論理と感性について」
インタナショナル俳句を触媒にして異文化コミュニケーションが出来るのではないかという議論をもらいました。 感性は文化によって異なって来ると思いますが、ある触媒を基に違った感性がうまく収束する仕組が出来ると面白いかも知れないと思いました。
原田氏による「意味的距離による不調和さの視覚誘発脳磁図反応に対する影響の検討」
少し似た動物、かなり違った動物を合成した画像により、人間の「おやっ」 と感じる脳波を計測しています。面白い結果が出ていましたが、 個人的には middle のあたりの乱れが気になりました。 画像の品質が低いのが理由っぽいのですが、もし、そうなら、 品質のいい画像で試してもらえると更に面白いかもと感じてしまいました。
北野氏による「言葉をベースとした述語形式の知識表現法と順序ソート論理によるその推論処理法」
日常言語でそのまま推論を行おうという試みです。試み自体は面白いと思いますが、 やはり、自然言語のいやらしさがそのまま残っていて大変だなと感じました。 このあたりがクリアされるとすごい研究になると思います。
鍋島氏による「論理と客観性・感性と主観性 ―イメージスキーマと主観化の観点から」
青柳さんの発表や、もしかしたら、 次の招待講演にも関連があるかも知れないと感じました。 私の理解が間違っていなければ、 言葉の解釈において、 主観モードと客観モードを導入しそれらを主観性の概念により定義し、 様々なイメージスキーマモデルにより、その違いを具体的に説明していました。 手書きの絵も含めて、非常に面白い研究です。
斧谷氏による「論理・ロゴス・レゲイン・感性 ――言葉の根源」
3/11 2006
砂山氏による「議論の流れを制御する電子掲示板 ---川下りシステム---」
今回は、川の流れに例えて議論の流れを説明していました。 川の流れを制御するように議論を制御しようとするシステムです。 更に解かりやすさを求めた指標を出せるなど、面白いと思いました。
松村氏による「mixiにおける男女別・年代別の利用者意識の抽出」
今をときめくmixiの利用者アンケートを解析したもので、 なんとなく、ジェンダー、世代間の関係が見えていたように感じました。
高澤氏による「「話の展開」を推測する方式について」
まだ、荒削りな結果しか出ていませんが、面白い視点で議論がなされていると思います。 ただ、会場からも指摘のあったように、会話として考えると、 新聞やEDRをコーパスとして使うのには限界があると思います。 この研究にぴったりなコーパスが見付かったら、素晴しい結果が出るのではないかと思います。
岩崎氏による「コールセンターにおける対話データを用いた営業日報の自動生成」
これが出来るとコールセンタのみならず、色々な所で重宝されるのではないかと思います。 色々さがせばミスはありますあ、プロトタイプとしては、 現状でもいい線いっていると思いますので、完成させてもらえると美しいと思いました。
中山氏による「言葉の表す概念 〜人と機械の円滑なコミュニケーションに向けて〜」
概念を自動的に引き出そうとする試みです。面白いアプローチだと思いました。 しかしながら、一方で、symbol grounding は難しいなという感じも持ちました。 でたらめでもいいので、概念を示す「ことば」を生成出来ると面白いと感じま した。
神山氏による「話題構造の可視化による医師-患者コミュニケーション支援手法」
ナラティブベースト診療における対話を可視化して何を話しているかを解かりやすくしようという試みです。 物語なので、時間軸が見えるインタフェースの方がいいかなと思いました。
津田氏による「本居宣長の方法論 古事記解読をめぐって」
本居宣長
大島氏による「ピアノの低離鍵速度箇所に示される特性についての一考察」
ピアノ演奏のくせ、美しさなどを計算機的に解析しようという試みです。 非常に面白い結果が出ていましたので、この先がたのしみです。 芸術家の立場からは、計算機が芸術なんて、背筋が寒くはなるかも知れませんが、 芸術も頭を使って行っていると考えると、おかしくはないかなと思いました。
城氏による「音楽パフォーマンスにおけることばによる楽譜」
仲本氏による「局面解釈とアスペクト ―生態心理学から見た時間の知覚」