【講演概要】

バーテンダーはどのような美的経験を味わうか (OL)

宇野 佑 (言語聴覚士)



本発表は、日常美学の視点から、バーテンダーがカクテル作成を通じてどのような美的経験を得るのかを検討する。日常美学は、芸術鑑賞に限定された美的センスの議論を拡張し、「すること」の美的次元に焦点を当てる。本発表ではその具体例として、ゲストの嗜好確認から準備・計量・ミキシング・仕上げ・提供までの作成工程を整理し、心理学者チクセントミハイのフロー概念(明確な目標、即時のフィードバック、挑戦と能力の均衡)に照らして、カクテル作成がフローを喚起しやすい行為構造をもつことを示す。さらに、フロー中に生じる自己意識の希薄化や時間感覚の変容、官能評価(味・香り)の集中を手掛かりに、バーテンダーの快が「完成品の鑑賞」だけでなく、攪拌・温度管理・加水調整といった過程そのものに埋め込まれている可能性を論じ、作成者側の美的経験論への示唆を与える。