宇野 佑 (言語聴覚士)
本発表ではカクテルのオーダーのやり取りを現代の英米圏の哲学で議論されている共同行為 joint actionの議論を参照しつつ, いくつかの例を交えて検討する. 三木は, ブラッドマンらに代表される共同行為論の古典的な論者を取り上げて, それらの論者に共通する特徴を次のようにパラフレーズしている.「共同行為に参加する人々は, まず自分たちが最終的に何をするのかを特定し, その何かか, もしくはそれと密接に関わる何かを実行することを意図したり, 実行することへの準備を表明したりし, それが互いにわかっているからこそ, 互いに協力したり期待したりしながら, その最終的な何かを達成していく. いわば, 何か共通の目的を掲げたギルドのメンバーたちの振る舞いのようなものとして共同行為を考えていると言える」(三木, 2023, p. 22) . このような古典論者の考える共同行為の一例としてバーでのカクテルのオーダーのやり取りを考察することが本発表の目的である. 特にギルバードの考える共同コミットメントjoint commitmentの議論がバーのオーダーという場面を考える上でどの程度妥当なのかを検討したい.
- Marija Jankovic, Kirk Ludwig(2018) Routledge Handbook of Collective Intentionality (Routledge Handbooks in Philosophy), Routledge.
- 三木那由他(2023)共同行為のミニマリズム, 『哲学の探求』(50), pp. 16--28.
- キャサリン・ホーリー, 稲岡大志, 杉本俊介監訳(2024)『信頼と不信の哲学入門』岩波書店.
- Kartherine Haley(2018) Trust : A Very Short IntroDuction, Oxford Univercity Press.