緒方 典裕 ((大阪大学大学院 言語文化研究科・言語情報科学講座)
言語を記述・比較する場合、古典的なSwadeshの語彙リストのように、 「語義」は言語間で斉一であることが前提であるが、 「語義」はその言語の使用者が属するコミュニティの文化において 「概念化(conceptualization)」が行われており、 この「コミュニティにおける概念化」を明らかにしなければ「意味」を形式的に扱えないことは、 知識工学で「オントオロジー」という分野が成立した起因でもある。 本発表では、Moravscik (1975)のaitiational scheme, Pustejovsky(1995)のqualia structureを一般化したデータ型を 「qualia」というレコード型として型理論に基づいた関数プログラミングにおいて実装し、 さらに「文化」自体も「qualia」の部分型である「culture」という型として実装し、 語義をあらわすqualia型のオブジェクトがculture型のオブジェクト内で定義されるように実装する。 その結果、多義性の問題や語義の文化依存性の問題に対する一つの解法を与える。 例題として、「すまい」という東・東北・東南アジアの諸言語の語彙と「語義」を扱う。