【講演概要】

θ役割の型理論的意味論
A Type-Theoretic Semantics of θ-roles

緒方 典裕 (大阪大学 言語文化部)



自然言語の形式意味論では、Montague文法をはじめとする単純な型理論による 形式意味論が与えられていたが、Neo-Davidsonian Event Semanticsにより、「θ役 割」を論理形式上に反映できる様々な形式意味論が与えられるようになった。一方、 Rantaの構成的型理論による自然言語の形式意味論が提案されており、項(argument)の きめの細かい語彙的仕様(lexical specification)がdependent typeにより可能となっ た。しかし、「θ役割」という概念は型理論上では反映されていない。本発表では、 events as set of roled-stages等の新しい存在論的な概念に基づいて文の型理論的記 述をdependent typeをもつ型理論の中で再定義し、θ役割はその存在論中の関数とい う意味論を与える。そして、θ役割を直接に語彙の中で指定するのではなく、文や文 脈から型推論で抽出されるような枠組みを提案する。