【講演概要】

ライムンドゥス・ルッルス再々考 II −『大技法』の実践としての『新修辞学』−

小田 淳一 (東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)



人工知能やオントロジーの祖と言われるライムンドゥス・ルッルスが残した, 修辞学に関する唯一の論考『新修辞学 Rethorica nova』(c.1301)は, 一見すると二重の意味において奇異な印象を与える.そのひとつは, それまでの伝統的な修辞学とかなり異なるその構成であり,もうひとつは, 推論エンジンの原理に決定的な影響を与えたとされる『大技法Ars Magna』 (1305-1308)と密接な関連を持ちながらも, 例話や格言を多用した,実用スピーチのハウツー本にも似たその内容である. 本報告は『新修辞学』における『大技法』の結合術 (ars combinatoria) の実践例から,その新たな価値を探る.