新田 義彦 (日本大学経済学部)
人間の知的活動のすべてが、物語生成過程と見なせるということは、当研究会においては無条件に認めていただけると思う。
我々はこれまでの長い人生を、物語の習得と生成を繰り返しながらわたってきた。
人生物語の生成は直截にうまくいく場合、つまり満足のいく物語を生成して所期の効用 (満足) が入手できる場合もあるが、うまくいかずやり直しを余儀なくされる場合も多々ある。 またやり直しをしたくても (人生過程に不可逆行性ゆえに) やり直せず、 後悔と慙愧の念に苛まれる場合も少なくない。
人生物語の生成過程における、前世の破壊 (消去) とやり直しが可能になったとしたならば、 現在と未来がどのように変化し得るか、といったような、 いささか、仮想的 (超) 現実の、虚構人生の問題 (効用) について、 漠然と妄想したことについてお話して、 本研究会にいささかの座興ができれば幸甚である。