【講演概要】

クエストの連続構造を用いたRPG向け物語の自動生成

〇中村 祥吾、石川 一稀、稲垣 武、宇田 朗子、太田 和宏、斉藤 勇璃、 白石 智誠、長野 恭介、
根本 さくら、山内 拓真、村井 源、平田 圭二、 迎山 和司、田柳 恵美子 (公立はこだて未来大学)



近年物語の自動生成が様々手法で試みられている。その一つの方法として古典的な物語分析の手法を用いて特定のジャンルの物語構造を抽出し、得られた構造に沿った物語を自動生成する手法が研究されてきている。 本研究では基本的な物語構造の組み合わせによって形づくられる物語のジャンルを対象として、基本的な物語構造の自動生成結果を矛盾なく結合することでより大きな物語の自動生成を行う手法を提案した。
Role Playing Game(RPG)のシナリオを分析した結果、RPGのシナリオはクエストの連続であると判明した.また、クエスト自体の構造は「発生」「経過」「結末」の3つの段階で成立していることも判明した.また、クエストの前後関係からクエストがどのように連続しているかの遷移確率モデルを抽出した。
クエストを分析した結果、 発生は大きく分けて「依頼」「移動手段確保」「ハプニング」の3種類に分類された.さらに、依頼は「討伐」「アイテム探し」「捜索」「偵察」の4種類に、移動手段確保は「アイテム」「討伐」の2種類に、ハプニングは「敵の出現」「拉致監禁」の2種類に細分化され、 計8種類となった.また、経過は「探索」のみであり、目的地が「ある」か「ない」か、ボス戦(強大な敵が障害としているイベント)が「ある」か「ない」か、これらの組み合わせで4種類に細分類された.結末は、「アイテム入手」「情報」「開通」の3種類に分類された.これらの分類に従い、クエストのシナリオを作成していった.また、柔軟なクエスト生成のためにクエストのシナリオを、クエストの大筋は「メインテキスト」に、クエストの詳細な要素は「サブテキスト」に分割して記述することとした. シナリオの自動生成方法としては、クエストを複数生成し、それらを遷移確率に従いつなぎ合わせるという方法をとった.クエストは、3段階それぞれを複数個作成し、それらを結合することで作成した.また、クエストの内容はどのクエストをつなぎ合わせても矛盾が出ない様に工夫した.
結果として、 メインテキストは発生3種類、経過4種類、結末1種類の合計8種類.それに合わせたサブテキストが350個程度あり、1800個程度のクエストを自動生成することが可能となった。シナリオは全クエストの任意の数の組み合わせ分、生成可能である. 今後の課題として、物語の流れにまだ違和感が存在する点が挙げられる.違和感をなくすため、またより柔軟にシナリオを記述できる様にデータフォーマットの改良と分析が必要である.そして、本研究では入れ子構造や並列的なシナリオ、クエスト展開が実現できていない点も今後の課題と言えよう.より深みのあるシナリオを生成するために更なるシナリオ、クエストの分析とアルゴリズムの考案が必要である.
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