【講演概要】

実世界から作品へ

森田 均 (長崎県立大学 国際情報学部)



これまで筆者は,徹底した分析が生成への糸口となると考え, いくつかの試みを行った。手法として採用したのは,全数調査に挑むことであった。
まず,[森田 01] では構築途上のインターネット上で最小の音声メディアがエリア拡大と映像表現を獲得していくプロセスを検討して放送局と聴取者の関係の変容をモデル化したものである。 これは最初の全数調査であるが,量的には 100 件程度のものであり, 分析よりはモデル化を目的としたものであった。 続いて,[森田 04] [森田 05a]ではテクストから作品がどのように派生するのか詳細な検討を行った。 量的には 300 件以内のものであるが,検討項目は飛躍的に増大した。 しかしながら,結果として得られるのは,作家像の変遷とほぼ軌を一にするものにしかすぎなかった。 さらに,[森田 10a]ではテクストと実世界の関係を考察した。 600 件程度のものであるが,参照する指標を確定できたことがこれまでと異なる。 上述した試みに続いて,実世界から作品が生成されるプロセスを検討するために, 本論文では具体的な事例としてテレビ番組としての長崎平和祈念式典と長崎くんちを対象として分析を行う。
[森田 01] 森田 均: コミュニティ放送局のインターネット利用, マス・コミュニケーション研究第 59 号, 日本マス・コミュニケーション学会, pp.178-192, 2001.
[森田 04] 森田 均: 「注文の多い料理店」のグラフ,地図,樹状図, 県立長崎シーボルト大学国際情報学部紀要第 5 号, pp.117-131, 2004. → 『国文学年次別論文集』平成 16 年 版近代分冊第 4 巻 (学術文献刊行会, 2007.)へ転載
[森田 05a] 森田均: 「注文の多い料理店」のハイパーテキスト変換とその評価方法, 国際情報学部紀要第 6 号, 県立長崎シーボルト大学, pp.175-190, 2005. → 『国文学年次別論文集』平成 17 年版近代分冊第 4 巻 (学術文献刊行会, 2008.) へ転載
[森田 10b] 森田均: 語り直す「実世界とテクスト」, 日本認知科学会 文学と認知・コンピュータ研究分科会 II (LCCII)第 22 回 定例研究会予稿集, http://www.ogata.soft.iwatepu.ac.jp/LCC2_Web/Proceedings/Proceedings(22)/22G-03Morita.pdf, 2010.