【講演概要】

順序構造に注目した感性情報の可視化と表現

水野 隆文 (名城大学)



人間の選好に従い要素の順位付けを行う際、 一対比較により提示した局所的な順序構造と、 全体を見通し提示した大域的な順序構造が異なることがある。 前者の視点では三すくみのような不整合を示すことがあり、 後者の視点ではそれが解消されることが多い。
私は、 これら「不整合がある」や「解消する」が、 「絡まる」や「解ける」と表現されることにヒントを得て、 順序構造という抽象的なモノを、 紐の絡み目という具体的な構造を用いて可視化した。
本発表では、 順序構造についての隠喩を実際に数理モデルで実装することにより、 その局所構造と大域構造の関係について「自然さ」という新たな視点・表現が得られ、 それが圏論の言葉「関手」で表現されることを指摘する。 関連研究として、 人間の心理的・社会的関係の、 結び目と絡み目による表現がある[1]。
本研究は、 「順序」に注目し、 その局所構造と大域構造の間の関係を、 絡み目を用いて可視化し、 関手を用いて表現した。
これにより、 構造間の表現と、 その理解のしやすさやプロパティの分析が、 統一された言葉でなされることが期待される。

参考文献:

  1. Kawauchi, A.: ``Mind-Knots and Mind-Relations: Knot Theory Applied to Psychology,'' Qualitative Mathematics for the Social Science (Edited by Rudolph, L.), Routledge (2013), pp. 227-253