【講演概要】

動詞を用いたメタファー表現の自動生成

〇宮澤 彬 (総合研究大学院大学 / 国立情報学研究所) 宮尾 祐介 (東京大学)



本発表では日本語の主語・動詞・目的語からなる句を対象に「よいメタファー表現」を自動生成を試みる。 メタファー表現の自動生成は詩や小説などの執筆支援や、わかりやすい表現の着想において有用であると考えられるが、既存研究は少なく、また“A like B”のような形式の直喩のみに着目している(Abe et al. 2006; Terai and Nakagawa 2010)。
本発表では、直喩ではない、動詞を用いたメタファー表現を生成する手法を示す。 はじめにタスクを、非メタファー的な表現中の動詞を入れ替えることにより、メタファー的な表現へ言い換える問題として定式化する。
例えば「〇〇が気持ちを理解する」という入力に対しては「〇〇が気持ちを汲み取る」や「〇〇が気持ちを掬い取る」といった表現を出力を期待する。
次に生成結果の「よさ」を評価するためMiyazawa and Miyao 2017で提案された「新規性」・「理解可能性」に加え、「適切性」・「メタファー性」・「相対的な好ましさ」という評価指標を導入する。
提案手法は、これらの評価指標に対応した自動的に計算可能なスコア「類似性」・「希少性」・「普遍性」・「比喩らしさ」・「総合評価」を導入し、これらで高く評価される表現を構成する動詞を出力するものである。
評価にはクラウドソーシングを用いる。
システムが自動的に計算したスコアと、クラウドソーシングの評価者が各評価指標について表現に与えたスコアを比較し、前者がどの程度後者を反映しているか分析する。 また「相対的な好ましさ」と「総合評価」で上位・下位に位置づけられた表現の分析を行う。
これらの結果から、提案手法の有用性や改善方法について議論する。

参考文献:

  1. Abe, Keiga and Sakamoto, Kayo and Nakagawa, Masanori (2006). ``A computational model of metaphor generation process.'' In Proceedings of the 28th Annual Meeting of the Cognitive Science Society, pp. 937-942.
  2. Terai, Asuka and Nakagawa, Masanori (2010). ``A computational system of metaphor generation with evaluation mechanism.'' Artificial Neural Networks{ICANN 2010, pp. 142-147.
  3. Miyazawa, Akira and Miyao, Yusuke (2017). ``Evaluation Metrics for Automatically Generated Metaphorical Expressions.'' In Proceedings of the 12th International Conference on Computational Semantics (Short papers).