【講演概要】

タイ語辞典の電子化から言語研究へ

峰岸 真琴 (東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所), 赤木 攻 (東京外国語大学)



本稿の目的は以下の2点である。
第一に、東京外国語大学大学院とアジア・アフリカ言語文化研究所の連携により進められているグローバル COEプログラム「コーパスに基づく言語学教育研究拠点」 (Corpus-based Linguistics and Language Education、 以下CbLLEプログラムと略称する。拠点リーダー峰岸真琴) の研究面での方向性を紹介することである。 CbLLEプログラムは、先端的な言語学・言語教育学の拠点を形成することを目的に、 2007年度から2011年度の期間にわたるプログラムとして文部科学省により採択されたものである。
第二に、CbLLEプログラムの下に進行しているタイ日・ 日タイ辞典の電子化プロジェクトにおける電子化辞書の開発経過について報告することである。 「タイ日・日タイ語辞典電子化プロジェクト」では、 タイ日・日タイ辞典の電子化を行っている。現在は、冨田竹二郎(編著)(2003): 『タイの人々のための日タイ・タイ日辞典』改訂新版の電子化と公開を行っているが、 さらにタイ語辞典として最大のものである冨田竹二郎(編著)(1997): 『タイ日大辞典』の電子化も準備中である。
最後に、電子化された冨田辞典の言語研究面での発展的継承の見通しについて述べる。 もとより辞典は語学教育に不可欠のツールであり、その電子化は教育環境の充実の点でも重要である。 一方、学術研究においても、今後発音、品詞、文法、借用関係などの情報を付与していくことにより、 コーパスに代表される言語の実証的な研究において、人間の利用する辞書だけでなく、 いわゆる機械可読辞書 (Machine Readable Dictionary, MRDと略称) の開発へと発展することが期待される。