森田参考資料

【参考資料】

LCCにおける活動の経緯と概要

森田均(県立長崎シーボルト大学)、小方孝(山梨大学工学部)

関連するキーワードとセンテンスのまとめ－研究の暫定的定位へ向けて－本ワークショップで扱った研究はまだ未知数の領域であり、研究対象・方法論あるいは問題意識のどれも多様多彩である。そこに何らかの思考の道筋を付けることは必要であり、ここではまとまった思索ではないが、討論時に出現したキーワード及びセンテンスを掲げる。

　関連キーワード一覧
ワークショップ時の討論参加者全員の発言から抽出されたキーワードを、１語１枚のカードに書き出し、類似したキーワードどうしを近くにまとめるという作業を繰り返し、１つの島（まとまり）にラベルを付けて以下のような分類を行った。なお、カードは必要に応じてコピーしたので、重複がある。文学・認知科学・コンピュータという大項目のラベルは、最初からそのような分類を想定していたわけではなく、作業の途中で思い付いたものである。それ以下の小項目のラベルは出現したキーワードをそのまま利用した。分類の本質としてこれは単なる一解釈に過ぎないが、１つの研究領域の領域・主題・関連項目等を示唆するものとなっていると思われる。発想支援ツールを使う等のことは今回は行なう余裕がなかったが、今後このような試みの展開も図って行く必要があろう。なお、この作業は９８年７月１８日に大分大学工学部において、藤田、赤星、森田、小方が行った。

文学
文学メディア
テレビドラマ、映画、ゲーム本、広告、神話、日本語教育、白鯨、フランス文学、物語、国民文　　学、電子テキスト、ハイパーテキスト、本、人生、出来事、虚構世界、事実、社会的イデオロギ　　－　②文学理論
文芸評論、ハイパーテキスト文学論、受容理論、詩学、読者論、レトリック、視点、美学、表現
読者
読者論、サービス、テキストを作り替える、反芻的鑑賞、視点、インタラクションの場、読みの支援、聴き手、他者、解釈共同体、想像の共同体、ＷＷＷ空間、電子的な仮想共同体、文学性
文学コミュニケーション
物語行為、物語コミュニケーション、サービス、物語生成、物語文法、文学性、インタラクショ　　ンの場、語り手、聴き手、虚構世界、情報検索
認知科学
認知
常識、推論、思考、因果的知識、問題解決、意味、含意的知識、暗黙的知識、論理的知識、評価、価値、道徳、解釈、多視点性、イデオロギー、信念、意味生成、冗長性
笑い
ジョーク、皮肉、駄洒落
感情・感性
感性のトレース、願望、ムード、プロットユニット
心理・心理学　　心、深層心理、出来事の出自
コンピュータ
文章・テキスト処理
自然言語処理、自動要約、抽出、要約、要約文研究、残存認定単位、単語レベル、機械翻訳、文　　章構造、文章構造の可視化、プログラマーの解釈、ツリー構造、永野文法、解説文、論説文、アイディアユニット、パラフレーズ、情報検索
テキスト・インタラクション
テキスト著述支援システム、ＷＷＷ空間、電子的な仮想共同体、インタラクションの場、ハイパーテキスト、電子テキスト、ハイパーテキスト文学論、テキスト、理解、読む、読みの支援、「書き」の対話環境、パラフレーズ、冗長性、意味生成
文学・物語処理
物語生成、小説の自動生成、スクリプト、物語内容、物語文法、物語言説、物語の技法、図と地、意味生成

センテンスレベルワークショップでの発言から、簡潔なセンテンスになっている趣旨を抽出した。以下はその無整理な羅列である。・小説は知識を得るために読むのではない。
・心（感情・信念）を操作する機械がほしい。
・虚構世界だが現実に近い世界を作る仕組み。
・文学計算の本質は価値評価である。
・願望という推論のメカニズムを探る。
・感情とは人間生存のための基本機能である。
・計算論的ナラトロジーの体系を作りたい。
・物語コミュニケーションは多重的である。
・物語の技法戦略体系を作りたい。
・メディアによって言説のあり方が変わる。
・物語の語りは言語で表現する必要はない。
・最低限の小説を自動生成可能なシステムを作りたい。
・テクストをインタラクションの場（情報環境）として捉える。
・文学作品は読者が読むことによって作品になる。
・作品の自由な読み、作者という特権を排除する。
・ハイパーテキストは読みと書きが交錯する場である。
・読者が書く。
・ハイパーテキストは読者論の実験場である。
・自然言語処理（情報検索、抽出、要約、生成）の立場からの読みの支援。
・電子テキストでは物理構造＋論理構造を対話的に生成可能である。
・図（アウトラインビュー）を媒介にした書きの対話環境を作りたい。
・要約は留学生への日本語教育において重要である。
・文の残存認定単位を使って要約が可能である。
・ツリー構造によって文章構造を表現できる。
・ネットワークによって文学を表現する。
・文章を人間がどのように扱っているかに統計的にアプローチしたい。
・文芸評論は実践的であり使えるものなら何でも使う。
・使える堅実な研究があるかが重要である。
・文学においては作品を読むという経験が中心にある。
・登場人物の感情、心情、常識、要約などはすべて解釈を踏まえている。
・機械的に要約文が作れるわけではなく解釈、意味が問題となる。
・意味は厄介である。
・言葉の意味は言葉の関係から出る。
・小説が我々に訴えかけるのはストーリーのみではない。
・小説では細部の表現が重要な意味を持つ。
・言葉の意味は言葉の関係から出る。
・文学に接する時意味にどう取り組むかを念頭に置く必要がある。
・計算機を使って文学処理は可能であろう。
・あるテキストを要約すると文学性が浮かぶものとそうでないものがある。
・白鯨から博物学的知識をそぎ落とすと映画になる。
・知識、常識がそぎ落とされて感性が浮かび上がるかも知れないしその逆かも知れない。
・レトリックで計算機が笑いを作る。
・広告のレトリックでは駄洒落がよく使われている。
・文学が文学である条件とは何でもないディテールにこだわることである。
・今までの物語理解は内容の理解だったが本当の理解はそうではない。
・文学は読んで初めて意味を持つが書かれたものは厳然として存在する。
・文学を読むことが意味を持つならば他者のものを読むことによって自分を作り替えることである。
・テキストの仮想共同体、解釈共同体として文学をもっと開放的にすることができる。
・テクストを作り替えるのと読むというのは同じことである。
・ハイパーテキストは読みと書きを外在化できる。
・自動要約にはプログラマーの解釈が介在している。
・文学作品を要約して文学と言えるか。
・文学作品の要約においては正しさの判断が科学的尺度を持ちにくい。
・なぜ自動要約は解説文、論説文のような対象しか扱わないのか。
・文学作品を評価する尺度は難しい。
・出来事の秩序と語りの秩序は違う。
・出来事と言説の秩序は同一化できない。
・イデオロギー、神話の研究には単語レベルではなく物語レベルでの研究が必要である。
・読み手のイデオロギー、ストーリーグラマーの研究が必要である。
・登場人物の感情をトレースする研究は興味深い。
・物語を読む時同調しながら読んで感情が生成される。
・文章は作者の思考の要約である。
・書かれた内容の理解と全体の隠された内容（意味）の理解が必要である。
・文章をばらばらにして隠された内容を読む。
・文章はすべてを書いているわけではなく既に要約である。
・冗長性をそぎ落として行くと意味のなくなる小説とそうでない小説がある。
・事実を述べているはずの文の中に著者の感情が入っている。