黒川 伊保子 (株式会社 感性リサーチ)
今回は、このサブリミナル・インプレッションのブランドイメージ分析適応例を、 ことばの数値化ビジネスの一例としてご紹介します。
- 音に感応する脳
ヒトの脳は、音に感応して、イメージを描きます。音を聞くと、かたちや、動き、 素材感のイメージが浮かぶのです。
そのイメージングの機構は脳生理に基づくもので、人類に共通のセンス。 たとえば江戸風鈴のチリリという音を聞いて、岩石を思い浮かべる人はいません。
ことばの音にも、物質の音と同じように、イメージを喚起する力があります。 たとえば、息と共に発音するハ行音には、温かい開放感があります。 サ行音は口元に冷たい気流を作り、聞く人の脳にも爽やかな印象を作り出します。- ことばの音とイメージ
ことばは、音素で構成されています。この音素並びには、ヒトの脳に共通の抽象イメージを描かせるものがあります。
たとえば、*regという音素列は、インドヨーロッパ祖語の音ですが、 さまざまな欧米語に継承され、英語のrainやruleなどを生み出しました。 同時に、サンスクリッド語を経て「令」という漢字になり、日本にもたどり着きました。
このレイという音には、「揃った大きさの粒が規則正しく動く」というイメージがあります。 このため、R音は古今東西、流れる動きのイメージ、メカニックのイメージ、 転じて論理的・合理的なことを表すことばによく使われてきました。
このような、音素や音素列がヒトの潜在脳に描かせるイメージを言象といいます。- 言象データベースによることばの解析
私たちは、インドヨーロッパ祖語、やまとことば、サンスクリッド等を紐解き、 世界共通のことばのセンスを抽出し、言象のデータベース化に成功しました。 このデータベースを基に、ことばを音素に分解し、その音素イメージすなわち言象を解析することが可 能になったのです。
ことばに含まれる言象を統合した、ことばの潜在脳イメージを、サブリミナル・インプレッションとよびます。