【講演概要】

手話言語と音声言語,書記言語

北村 一親 (岩手大学)



自律的な言語としての手話言語は, 言語学を学ぶ者にとっても多くの驚くべき特徴を有する魅力的な言語である。 現在の手話言語学において音声言語との構造的並行性が強調される余り, 手話言語学の自律性が薄れている場合も見受けられるように思われる。 また,手話の表記法(記述法)に関する議論にも分析レベルや使途目的の明確化が望まれる。 音声言語にしてもその表記法(記述法) にはイェスペルセンなどの非字母音声表記から語学学習に使用されるいわゆる 「発音記号」までいくつかの記述レベルの段階が見られる。 これらの音声言語における記述法を参考にしながら,手話言語の表記法(記述法) を再考すると同時に「言語らしさ」(例えば,「英語らしい発音」とか 「手話らしい手指の動き・顔の表情」)とは何かを考察したい。 また,手話言語と同じく視覚言語である書記言語も交えて,手話言語・音声言語・ 書記言語の関係にも言及したい。