【講演概要】

内在的/外在的視点と(間)主観性による社会的配置について

片岡 邦好 (愛知大学)



本論考では、日本人ロック・クライマーによる経路探索の議論に焦点を当てて、 空間移動動詞「行く」と「来る」がいかに包括的なメンタルマップの構築に関わるかを論じる。 まず明示的レベルでは、「行く」が経路の分節の初期段階に選択されて 「来る」が後期段階に収束するというパターンが踏襲され、 概念的「等価性」にもとづく一貫した語彙分布を展開した。 さらにこのパターンは、 経験基盤の差異による内在的および外在的視点の採用により特徴付けられ、 参与者間の社会的配置の変化に伴い、間主観的な融合的視点が出現する可能性を指摘する。 また、談話における社会的認知の構築と維持、 そしてその変遷において、直示体系が「相互行為的テキスト」の創出に深く寄与する点を例証する。