【講演概要】

「翻訳」と「言語変換」について考える

岩垣 守彦



異言語を母語で理解する方法には少なくとも二通りの方法があると思われます。 一つは「異言語を日本語の表現構造に変えて日本語で理解する」という方法で、 日本では室町時代に漢文に対して考案された「訓読」がそれです。 その方法は、その後、その他の異言語にも使われて、 「翻訳」という形で定着してきました。しかし、情報の摂取が紙媒体による視覚符牒 (文字)であった時代とは異なって、現代のように交通機関が発達して、 すぐに異言語文化に入り、聴覚符牒(音声)で情報交換しなければならない時代には、 構文を見極めて返り点式で情報を得ることよりも、 単位情報の順に情報を得ることが求められると思われます。 それで、もう一つの方法は、情報の最小単位を「複数の名詞+一つの動詞」 ととらえて、聴覚符牒情報も視覚符牒情報も情報の提示順、つまり、 「異言語を異言語の表現構造のまま日本語に変換して理解する」という 「単位情報」の順に処理するという方法です。この二つの方法を検討して 「異言語を母語で理解する」ことを考えてみます。