【講演概要】

言語情報の観点から日英両語の対応関係をさぐる (0)

岩垣 守彦



世界各国で「機械翻訳」が研究されて久しい. 機械翻訳の不可能性についても早くから言われていたが, 研究の成果は不完全ながら 「機械翻訳ソフト」の形で社会に還元されている.しかし, 完全ヘの意欲は衰えて,最近では, これまでの成果をいかに利用するか考えられているようである.
本当に,コンピュータをコミュニケーションの手段と使って, 世界の人々が母国語で世界に発信したり世界から受信したりするというような錬金術的な夢を実現することは出来ないだろうか. 他言語が自国語に,また自国語が他言語に変換できるような 「変換エンジン」が作られて, 同一基準で作られた辞書から好みの言語を選択すれば, どのような言語の組み合わせでも「論理的に破綻のない情報」 を発信したり受信したりすることができるようにして, 世界中の人々が母国語を失うことなく, 自由に自分の意思の通じさせることを可能にしたい.なぜなら, 母国語を失うということ,それは自分の文化を失うこと, 自己の存在基盤を失って,宇宙に漂うことだからである.
その場合,目指す目標は「翻訳」ではなく「言語情報の変換」 であるが,文学の変換も遠く視野に入れながら, 言語によって情報を受信したり発信したりするとはそもそもどういうことであるか, 一つの言語に他の言語を対応させるとはどういうことか,改めて考えてみたい.