岩垣 守彦
ついこの前まで,読者は作者と向かい合って,作者の表現技巧に酔っていればよかった. しかし,いつの間にか,読者は作者の後ろに立って, 作者の頭の中の表現や,作者がインク壺に返した表現までとらえながら, 作者と同じ視点でその技巧と関わるようになった. 現在では,作者はその素材を提示するだけで,「思い入れ・思い込み・感動」 は読者が自分の内的資源を使って創ることが求められているように思われる. もっとも,昔から表現技巧とは「読み手に創らせる」ことであったのかもしれないが. 「表現技巧」と「創る」の関係を考える.