○林 侑輝、阿部 明典 (千葉大学大学院 人文社会科学研究科 総合文化研究専攻)
本稿では、人間が絵本を鑑賞する過程を明らかにすることを目的とした。 絵本というメディアはふつう子どもに提供されることが多く、 発達心理学の分野で子どもの心の成長とそれにふさわしい絵本という視点から論じられることが多い。 しかし本稿は、「大人もふと絵本を手に取った時に、 わりと没頭して読んでしまうのではないか」 という著者自身の気づきが出発点となっており、 鑑賞者が絵本をどのように読み、 読後にどのような感慨を抱くかということを実験的に調べる試みである。 結論としては、読後感を述べる際の語りには「テーマに言及する」のか 「文や絵などの表現に言及する」かといった違いが参加者間で見られることや、 物語中で視点が変わったり予想外のオチがついたりするという違和感・ 意外性が鑑賞者を引き付けているという可能性が見出された。 更に、本稿では大学生を対象としたので、 子どもを対象とした場合とは異なると思われる感想や絵本に対する認識が明らかとなった。