【講演概要】

試論: 手話記述法開発の固定観念を考察する
---舞踊譜における身体の捉え方との比較---

長谷川 美穂 (大阪大学 言語文化研究科)



日本手話には、一部研究を除いて日常的に使用できる「書記言語(文字)」 が存在しない。その為 VTR などの映像を用いない限り、実際にどのような動きの 手話なのかを記述するのは困難である。
多くの手話言語学の文献で使用されているのは、「日本語ラベル」と 呼ばれるもので、これは手話単語に日本語の訳語をあててカッコでくくった 記述法である。日本語ラベルの横には通常手話のイラストか、あるいは連続 写真が添付される。しかし本来日本語とは全く異なる言語構造を持つ手話を、 日本語ラベルで表現するのには問題があり、手話の音韻や統語構造に合った、 より簡便な、独自の記述システムの必要性が叫ばれている。
ここでは、何が手話の記述を困難にしているのか、また人間の動きを記述する 方法として現時点でどのようなものが考えられているのかを、楽譜や舞踊譜も 含めて検討し、手話に応用する可能性を探る。