○原田 暢善1、岩木 直1、
外池 光雄2
1: 産業技術総合研究所関西研究センター 人間福祉医工学部門
2: 千葉大学工学部メディカルシステム工学科
不調和さの形成において単語親密度の影響について検討を行った。 高親密度な4文字熟語条件および低親密な4文字熟語条件さらにそれぞれの条件で、 始めの2文字と後の2文字をランダムに組み合わせた、合計4条件について検討を行った。 4文字熟語の音声データを、前後2文字づつの音声に分け、 最初の前半2文字音声のオンセットから1500ms後に、次の後半2文字音声が始まるようにして、 刺激を与え、全頭型脳図計で聴覚誘発脳磁図反応を計測した。結果として、 前半2文字音声および後半2文字音声それぞれに左聴覚皮質近傍のセンサーの加算平均波形で、 N100m成分およびそれに連なる言語関連の緩やかな山なりの成分 (言語関連複合成分:Word Relating Complex(WRC))を確認した。 さらに、前半2文字音声においては、4条件で大きな差は確認されなかったが、 後半2文字においては、高密度で正常条件で、WRC成分の強度が減少することが観察された。 一方、他の高密度逸脱条件、低親密度正常条件、 低親密度逸脱条件において大きな強度のWRC成分が観察され、条件間の[差はなかった。 高密度条件だけが正常と逸脱条件で差が観察されたことから、 聴覚的な不調和さが認知されるためには、その単語の親密度が高い必要があること、低い場合は、 逸脱の影響が確認できないことが確認された。これまでの視覚刺激の提示実験で、 単語親密度の高いひらがな4文字条件において、 また、動物の首の交換を行った線画刺激において構成要素の意味的距離が近くなるにつれて、 視覚誘発脳磁図反応の220ms成分が増加することが確認されている。この場合、線画刺激の結果で、 意味的距離が近い場合の結果は、高親密度正常条件であり、意味的距離が遠い場合は、 高親密度逸脱条件に対応すると考えられる。 線画の実験においても線画の対象およびその構成要素の被験者に対する親密度が高くない場合、 明瞭な「逸脱感」すなわち「不調和感」が形成されず、正常と不調和の差がなく、結果が、 高親密度逸脱条件と同じとなってしまうことが予想された。
聴覚刺激および視覚刺激においても、対象に対する親密度は、「正常」・「逸脱」または「調和」・ 「不調和」の把握に影響を与えることが予想された。さらにそのことは、対象の親密度が、 ヒトが環境から情報を切り出す作用、分節作用に影響すること考えられた。