【講演概要】

「単調労働とその対策」の観点を用いたフランクフルト学派の余暇および娯楽音楽に対する環境科学的考察

原田 暢善 (千葉大学フロンティア医工学センター)



フランクフルト学派のアドルノの著書の「啓蒙の弁証法」において、 ``余暇"およびそこでなされる娯楽とは「労働の延長」 (p286:岩波文庫) であると述べている。 「機械化された労働過程を回避しようと思うものが、 そういう労働過程に新たに耐えるために、欲しがるもの」と説明を加えている。 さらに余暇の娯楽として用いられる音楽は、労働者が自ら望んで聞いているのではなく、 文化産業により、無意識的に半強制的に与えられ、結果として労働者の音楽に対し、 無力感、いいかげんな態度、うわべのみの感動の反応を引き起こしていると述べられている。 上記の余暇および娯楽音楽に対し、 斎藤一・遠藤幸男ら執筆の労働科学研究所の労働科学叢書 (43)の 「単調労働とその対策」の観点を用いて考察をおこなう。 「単調労働とその対策」は、1960年代から日本にて問題が顕在化した ``単調労働"の問題点の把握・分析およびそれに対する改善・対策に関して述べたものである。 上記の労働過程における余暇および娯楽音楽の問題が実際の労働現場においてどのような形で顕在化し問題となっているかに関して検討を行う。 また単調感の成立および``おもしろくなさ"に関して、 環境要因における単調感を惹起する要因の分析を環境科学の観点で考察を加える。