【講演概要】

論理表出の建築に関する考察

原田 暢善 (千葉大学フロンティア医工学センター)



1992年4月4日の朝日新聞朝刊の8面の記事に、神戸製鋼の温室・アトリウム建築 (ハウステンボス) の写真および記事があった。記事の内容としては、 新しく開発したコンピュータによる設計システムを用いて、 複雑な形態の建築の設計が可能となったとの内容であった。一方、写真の方は、 三角形を回転させた円錐をのせたドームを中心として、 三角を横にずらした形の三角柱を横にした屋根および四角柱を横にした温室本体の形態であった。 複雑というより非常に単純な形態であり、 コンピュータのシステムを用いてどのように設計を作ったか、類推しうる形態であった。 制作を行うシステムの運用状況および特性が、建築の形態に反映された事例であると考えられた。 従来の建築形態は、用いる素材の特性、すなわち、木材、石、土あるいは竹などの、 素材の物理的な特性が反映された形態となっていると考えられた。 概略的に述べれば、従来の建築の形態は、素材の物理的な特性が反映された、 外部から素材の物理的特性が類推されうる、物理的特性のアルゴリズム (フィジアルゴ) が表出した建築であると考えられた。 上記の神戸製鋼の新たな鉄材を用いた ``自由な'' 建築は、 軽量および高強度の鉄材を用いることで、形態の形成において大幅な自由度が向上した状況で、 コンピュータの設計システムを用いた``自由な''設計・形態形成手法を用いて建築を行った、 植物園建築であった。形態の形成に大きな影響を及ぼしたのは、 素材自体の物理的特性ではなく、 設計を行ったコンピュータシステムの運用プログラムの特性、 すなわち作成を行った情報媒体・メディアの特性であると考えられた。 形態形成に大きな影響をあたえ、 外部から形態形成を通して存在を確認しうる対象として、 情報媒体の特性のアルゴリズム (メディアルゴ) の表出した建築であると考えられた。 一方、建築の形態形成において、素材の物理的特性および設計の情報媒体の特性のみが、 形態形成に影響を与えているのではなく、 人間自体の形態形成を行う際の特性が、携帯に影響を与えていると考えられる。 この人間の形態形成に影響を与えている特性を、精神的特性のアルゴリズム (メタアルゴ) が表出した形態形成がありうると考えられた。 フィジアルゴ、メヂアルゴ、メタアルゴの表出した建築に関しての考察を行い、 メタアルゴの表出過程に関して、 視覚および聴覚情報の処理過程との関連から脳内のアルゴリズムの形態形成への反映、 すなわちメタアルゴの表出過程に関して考察を行う。