【講演概要】

発声された言葉の不確かさ
―ASD特性からみた日常会話と物語― (OL)

青木 慎一郎 (岩手県立大学 名誉教授)



日常会話と物語との相違について、ASD特性の方達が感じている日常会話の困難から検討する。 ASD 特性者は日常発話において、 よく言われる「字義どおり」の受けとめや筆者が取り上げた「喩え話」 を好むという傾向がある。ポール・リクールは1970 年代に口頭言語 (発話・日常会話) と文字言語 (書記・テキスト・物語) の相違を詳しく取り上げている。 日常会話においては、「萌芽状態」や、「潜在的状態、発生状態、始動状態」 にあった「意味」が文字言語 (物語) においては、「出来事と意味の分離」により 「意味」が固定される。
ASD 特性の方は、その特性による敏感性・情報過多のために日常会話における会話の 「意味」が定型発達者と比べて不確かとなりやすい状況を避けたい。不確かさを避け 「文字言語 (物語)」におけるように、早めに「意味」を固定したいのである。 そのために、情報を削減して「字義どおり」に受けとめ、「喩え話」を好むものと考えられる。