○青木 慎一郎 (岩手県立大学)、小方 孝 (大和大学情報学部)、小野 淳平 (青森大学ソフトウェア情報学部)、一尾 操 (大和大学情報学部)
会話では相手の言葉から異化が起きることがある。 ASD特性では、異化を起こすスイッチに個別性が強いため、行き違いが起きる場合がある。前回の報告では、ASD特性における会話の行き違いを検討した。「異化→同化」における、非日常のストーリーから日常の会話への移行を促す「中間的な情報」を取り上げた(青木他2026a)。しかし、言葉のスイッチから異化によって特異性のある会話が作られるプロセスについては検討していない。それは、文脈(話の流れ)の選択における個別性によるものであり、本論ではそれをとりあげる。 Sperber,D.& Wilson,D.(1995)の関連性理論によれば、会話は情報意図と伝達・共有意図の両方で成立する。話し手の情報意図も、聞き手のその情報意図の受け取りも個人差がある。そのため、会話の行き違いが起きないよう、会話の伝達・共有を導く「関連性(Relevance)」が必要となる。関連性によって、話し手は文脈(話の流れ)の選び方を決める。聞き手はその文脈に沿って返答する。しかし、聞き手がASD特性である時、敏感性・情報過多から話し手の発言のコストを高く受けとる。そして、ASD特性は聞き手である自分の情報更新も大きいはずだと推測し文脈を選択する。つまり、敏感性と情報量によって文脈の選択には個別性が生まれる。このような選択の個別性の理解は、ASD特性が選択する文脈を活用することにもつながる。