Vol.14 No.2 (1999/03) 知識獲得と知識システム構築方法論


私のブックマーク

知識獲得と知識システム構築方法論

1. 知識獲得ワークショップ

知識獲得研究についての最新の成果発表と議論の場として定着しているのが
知識の獲得に関するワークショップ(Knowledge Acquisition Workshop: KAW)
[1.1]です。
KAWは1986年よりカナダのBanffで開催され(Banff KAW)、それと並行して欧州各

(EKAW: European KAW)や日本とオーストラリアを中心とする環太平洋地域
(PKAW: Pacific-Rim KAW)でも定期的に開催されています。ワークショップの対
象範囲
も暫時拡大しているため、数年前から知識の獲得/モデリング/マネジメントに関
する
ワークショップ(Workshops on Knowledge Acquisition, Modeling, and
Management)
と呼ばれるようになりました。
KAWのページからは、北米/欧州/環太平洋で開催されるワークショップに関する
案内を
はじめ、最近2,3年の発表論文を閲覧することができます。

知識獲得研究者のコミュニティで運営されるメーリング・リスト
[1.2]
では、関連する会議/シンポジウム/ワークショップに関する論文募集や開催案内
をはじめ、各国研究機関からの求人情報なども流れています。また、知識獲得研
究が目指す世界を(ユーモアを交えたものも含めて)スローガンとして集めたページ
[1.3]
があります。最近のKAWではその年のベストXローガンを発表するのが恒例とな
っています。ちなみに、このページにはスローガンIントロジー
[1.4]
が載っていました。

[1.1] Knowledge
Acquisition Workshops and Archives

http://ksi.cpsc.ucalgary.ca/KAW/KAW.html

[1.2] Knowledge
Acquisition/Modelling/Management mailing list

http://www.swi.psy.uva.nl/mailing-lists/kaw/home.html

[1.3] The Slogan
School of Management

http://www.cse.unsw.EDU.AU/~timm/slogans/

[1.4] The Slogan
School of Management: Slogan Ontology

http://www.cse.unsw.EDU.AU/~timm/slogans/ontology.html

2. 知識獲得研究の評価

知識獲得研究者のコミュニティでは、共通課題を通して様々なアプローチを比
較]価
する試みとしてSysiphusプロジェクト
[2.1]
があります。最新のSysiphus-IVでは、インターネットによる知識/情報の統合が
テーマとして取り上げられおり、最近のKAWやEKAWのセッションでも経過報告の
論文発表がありました。Sysiphus-IVに参加している(KA)2プロジェクト
[2.2]
では、検索結果として得られたネットワーク構造を半球面に投影して表示する
検索サーバを公開しています。

知識獲得に限らず人工知能研究における実験と評価に関する情報源には
[2.3]
[2.4]
[2.5]
などがあります。評価対象となる知識あるいは知識システムをとりまく環境が
コントロールできない状況、つまり実世界環境で情報システムを評価する際の方

(research design)については、
[2.6]
に評価手法の概要をはじめツールや文献リストへのリンクが掲載されています。

[2.1] Knowledge
Acquisition, Modeling and Management: Sisyphus Projects

http://ksi.cpsc.ucalgary.ca:80/KAW/Sisyphus/

[2.2] Knowledge
Annotation Initiative of the Knowledge Acquisition Community (KA)2

http://www.aifb.uni-karlsruhe.de/WBS/broker/KA2.html

[2.3] Evaluation Methods for
Knowledge Engineering

http://www.cse.unsw.EDU.AU/~timm/pub/eval/

[2.4] Evaluation of
Intelligent Systems

http://eksl-www.cs.umass.edu/eis/

[2.5] Verification,
Validation & Testing of Knowledge-Based Systems: An Annotated Selective
Bibliography

http://www.csd.abdn.ac.uk/~apreece/Research/vvbiblio.html

[2.6] Qualitative
Research in Information Systems

http://www.auckland.ac.nz/msis/isworld/index.html

3. 知識の共有と再利用

知識獲得と知識システム構築に関わる研究では、知識の共有と再利用を目指した
研究が
盛んに行われています。特に、問題解決手続(Problem-Solving Methods)
[3.1]
、知識モデリングへの形式的アプローチ(Formal languages for Knowledge
Engineering)
[3.2]
については、メーリングリストのアーカイブとともに、関連する国際会議やワー

ショップの案内が網羅されています。知識マネジメントに関する情報源としては
[3.3]
があります。

また、このような研究において重要な要素技術となるオントロジー研究について

[3.4]に日本の
研究機関を含む多数のプロジェクトが掲載されており、
[3.5]
では関連プロジェクトや情報源がアルファベット順に列挙されています。
これまでの研究成果をオントロジーとして再利用し、より高度な知識共有を実現
する
ために、分散環境において問題解決手続を協調的に動作させることを目指した
プロジェクトとしてHPKB,IBROW3があります。HPKB
[3.6]
では米国の大学を中心に10以上の研究機関が参加し、また欧州で行われている
IBROW3
[3.7]
では企業メンバーによる評価委員会を設置し、産業界への貢献も意識した
プロジェクト運営がなされています。

[3.1] Problem-Solving
Methods Mailing List

http://www.swi.psy.uva.nl/mailing-lists/kaw-psm/home.html

[3.2] Knowledge
Engineering Methods and Languages

ftp://swi.psy.uva.nl/pub/keml/keml.html

[3.3] Knowledge Management,
Communication, and Use

http://or.eng.tau.ac.il:7777/topics/km.html

[3.4] Ontology!

http://mnemosyne.itc.it:1024/ontology.html

[3.5] Some Ongoing
KBS/Ontology Projects and Groups

http://www.cs.utexas.edu/users/mfkb/related.html

[3.6] IBROW3: An
Intelligent Brokering Service for Knowledge-Component Reuse on the
World-Wide Web

http://www.swi.psy.uva.nl/projects/IBROW3/home.html

[3.7] HPKB: High
Performance Knowledge Bases

http://www.teknowledge.com/HPKB/

4. ソフトウエア工学との接点

知識の共有と再利用をより実用的な観点から実現するには、知識システムの実装
技術や
知識コンポーネントを流通させる基盤技術としてのソフトウエア工学の位置付け

重要となります。ソフトウエア工学全般についての情報源は
[4.1]
で広範囲にわたって整理されています。また、
[4.2]
にはオブジェクト指向やソフトウエアRンポーネントに関する13,000以上のリ
ンクが
収集されています。
ソフトウエア工学においても個別の実装に依存しない概念レベルでソフトウエア
設計
の背後にある意図や設計理由をデザインpタン
[4.3]
として明示的に記述することの意義が浸透しつつあります。

これまでに提案された様々なオブジェクト指向分析/設計手法における表記法を
統一
したUML(Unified Modeling Language)
[4.4]
[4.5]
は、知識システム構築や再利用知識の記述にも用いられるようになりつつありま
す。
欧州を中心に10年以上にわたって発展してきた知識システム構築方法論である
CommonKADS
[4.6]
では、産業界のユーザやツールxンダからのコメントを踏まえてUMLの記法が
取り入れられています。
先述のIBROW3やHPKBでは、分散環境におけるソフトウエアcWュールの相互運
用性
を実現する上で、CORBA
[4.7]
の仕様に準拠したソフトウエアoス(Object Request Broker)が用いられていま
す。
CORBAやUMLは、いずれも800以上のメンバーが参加する業界団体であるOMGの技術
委員会
[4.8]
において仕様の洗練や拡張が検討されています。OMGの技術委員会では、他にも
電子商取引、製造分野、金融サービスといった対象領域において、個別の実装言
語に
依存しないインタフェース記述言語(Interface Description Language: IDL)に
よって
領域固有のソフトウエアcWュールを記述し標準として策定する作業が進めら
れて
います。

[4.1] Software
Engineering Resources

http://www.rspa.com/spi/index.html

[4.2] 13,151
Links on Objects & Components

http://www.it.swin.edu.au/cetus/software.html

[4.3] Patterns Home Page

http://hillside.net/patterns/

[4.4] UML Resource
Center

http://www.rational.com/uml/index.jtmpl

[4.5] Architecture
and Design: Unified Modeling Language (UML)

http://www.sente.ch/cetus/oo_uml.html

[4.6] CommonKADS:
Engineering and Managing Knowledge

http://www.commonkads.uva.nl/

[4.7] Distributed Object
Computing with CORBA Middleware

http://www.cs.wustl.edu/~schmidt/corba.html

[4.8] OMG:
Technical Committee Group Homepage Directory

http://www.omg.org/techprocess/tchome.html

5. おわりに

「私の」ブックマークということで、個人的に興味をもっているページを中心に
紹介しました。知識獲得研究と関連の深い機械学習やオントロジーに関する
ページについては、このシリーズの中で今後より整理されたかたちで取り上げ
られることを期待しています。
(日本IBM東京基礎研究所 堀 雅洋, hori@trl.ibm.co.jp)