[What's AI]AIセレクション

解像度が若干低く画面上では読みにくい場合がありますが,その場合は印刷してご覧ください.

ここに掲載されている画像は,手塚プロダクション,講談社,コミックス様より特に許可を得ていますので,これらの引用はしないでください.

ここに掲載されている内容の引用や転載の際には出典・参照を必ず明記してください.また,内容を改変しての引用はお断りいたします.

-小特集「鉄腕アトム」  
 

手塚治虫が生んだ鉄腕アトムの誕生日は2003年4月7日となってます.それに合わせて人工知能学会誌では小特集を企画しました.

鉄腕アトムの誕生鉄腕アトムは,自分の息子の飛雄を失った科学省長官の天馬博士が,その息子そっくりに作ったロボットです.最初は,1951年にアトム大使という漫画の中に登場した鉄腕アトムは圧倒的な人気を博し,漫画,テレビ実写版も製作され,さらに,1963年にはテレビアニメーションにもなり,日本だけでなく世界中で多くの人に愛されました.2001年1月号で特集した映画「2001年宇宙の旅」が人工知能の将来像を象徴していたように,鉄腕アトムもロボットを含めた将来像を象徴していました.著名な人工知能学者マービン・ミンスキーが関わっていた「2001年宇宙の旅」ほど技術的な面はありませんが,「人間のようなロボット」を非常にうまく描写することに成功しています.

最後に,本小特集にあたって,漫画は講談社漫画文庫全13巻から引用させていただきました.引用を認めていただいた手塚プロダクション講談社に深く感謝します.

人間にとってロボット(あるいは鉄腕アトム)とは何なのか?
−フランケンシュタインと醜いアヒルの子−

佐倉 統

ロボットの外見について人間はロボットと仲良くなれるのか?仲良く共存するにはどうしたらいいのか?現実に活動するロボットが目立ってきた現在,この問題は技術的にはもちろん,社会的,経済的,倫理的な側面からも考察が必要なテーマです.

ここでは,手塚治虫が生み出した鉄腕アトムを素材に,ロボットと人間の関係について考察してみます.手塚が描いたロボット世界は,人間の心の醜さや悪を反映しているのがロボットであるという点で,ロボット三原則で著名なSF作家アイザック・アシモフの世界観と似ています.しかし,愛らしい子供の姿をアトムに与えることで,手塚は《外見(デザイン)》がロボット−人間関係においていかに重要かということを示しました.ロボットの問題はロボットだけでなく,ロボットと人間の関係の問題であることを,アトムの物語は示しています.さらに,技術や工学だけの問題でもなく,人間の心や倫理や欲望の問題でもあることを,手塚はたくみに描き,それをアトムというシンボルに託すことに成功しています.

vol.18 no.2掲載
download

アトムの生活とこころ

菅野 重樹

アトムは完全ではないアトムの魅力が,未来の様子をみごとに,そしてまた未来の社会問題を的確に描いていることだという指摘は多くあります.確かにそのとおりですが,それよりも著者は,アトムのテーマが悪人退治や戦闘という内容だけではなかったことに大きな魅力があったと思っています.アトムでは,人間とロボット(機械)の違いとは何か,ロボットに権利はあるか,人間とロボットとはいかにして共生できるのか,といった極めて未来的な哲学をテーマとしています.

手塚治虫氏は医学を専門としていました.手塚氏の描く漫画には「火の鳥」をはじめとして,人間の生体,生命の誕生といった医学的な描写が極めて多くみられます.「鉄腕アトム」でも,人間自身のことや,人間と機械の関係を生命の視点で描きたかったのではないでしょうか?

本稿では,アトムにどんなことが描かれていたか,また,どのような問題提起がされていたかについて,ロボットの家と心に焦点をおいて,アトムと著者のロボット研究の接点を見いだしながら,述べます.

vol.18 no.2掲載
download

人工知能から見た鉄腕アトム

松原 仁

ロボット法この原稿では,人工知能の研究者の立場から,人工知能の象徴としての鉄腕アトムを見つめ直します.鉄腕アトムの象徴としての本質は,人間の形をしていること,自らの判断で行動すること,人間のような心をもっていること,だと思います.これらの点について,議論したいと思います.

vol.18 no.2掲載
download

 
 
 
 
      人工知能学会の問い合わせ先一覧