Vol.19 No.5 (2004/09) 対話ロボット


私のブックマーク

対話ロボット

松坂要佐(早稲田大学)

まえがき

近年の音声・画像認識技術の進歩、それら認識技術を駆動する計算機の小型化、人間型ロボット開発の過熱などを背景として、それらの統合技術としての対話ロボット研究も大きく発展しつつある。本稿では、対話ロボット研究に関連するWeb資源を紹介する。

学術的研究コミュニティ

「対話ロボット」とは、「対話(認識・理解・生成)」と「ロボット」の複合技術であるため、一言に対話ロボットといっても、かなり広い分野においてコミュニティが存在する。

ロボット分野からの対話へのアプローチ:
日本ロボット学会(http://www.rsj.or.jp/)の全国大会などにおいて対話に関するセッションが開かれる。対話に関する話題が多く取り上げられる国際的な会議として、IEEE-SMC(http://www.isye.gatech.edu/ieee-smc/)、ROMAN(http://www.ro-man.org/)、IROS(http://www.iros2004.org/)などがある。

人工知能分野(対話システム研究・言語処理研究)からのアプローチ:

人工知能学会(http://www.ai-gakkai.or.jp/jsai/)の全国大会やSLUD研究会・AIチャレンジ研究会などでセッションや特集が組まれる。国際的な会議として、AAAI(http://www.aaai.org/)、IJCAI(http://www.ijcai.org/)、ACL(http://www.aclweb.org/)や、対話を専門に扱うSIG-DIAL(http://www.sigdial.org/)などにおいて関連した発表が見られる。

音声・画像認識の応用分野としてのアプローチ:
音響学会(http://www.asj.gr.jp/)の全国大会、電子情報通信学会(http://www.ieice.org/)の全国大会やPRMU研究会・HCS研究会、情報処理学会(http://www.ipsj.or.jp/)の全国大会やSLP研究会・HI研究会などで時折特集が組まれる。
国際的な会議として、ICSLP(http://www.icslp2004.org/)やEUROSPEECH(http://www.interspeech2005.org/)において関連した発表が見られる。

上記以外にも、AIBOやPaPeRoなどのプログラミング可能なロボットプラットフォームの登場により、工学のみならず社会学などの分野においてもロボットを用いた研究を見ることができる。

「対話ロボット」についての専門のコミュニティが開かれる機会は少なく、通常はロボット・対話・認識などそれぞれの議題に応じてコミュニティを選択することになる。どのコミュニティにおいても対話ロボット研究は好意を持って受け入れられるようであり、その点では幸せな状況にあるが、その反面、情報が分散しているため分野の研究を網羅・体系付けようとすると非常な困難を伴うのが現状である。
分野を自由にまたいで、論文を入手・閲覧する手段としてciteseer(http://citeseer.ist.psu.edu/)は非常に有用なサイトである。言語処理分野では、各主要学会の論文を集約したACL-Anthology(http://acl.ldc.upenn.edu/)や、言語発達に関する論文を集積したサイト(http://www.isrl.uiuc.edu/amag/langev/)などもある。
また、各コミュニティのメーリングリストは、特集に関する情報をいち早く入手するための重要な手段である。

ロボット・擬人化エージェント・自然言語処理・音声画像処理などの関連分野については、他の「私のブックマーク」もあわせて参照していただきたい。
http://www.ai-gakkai.or.jp/jsai/journal/mybookmark/

有力なサイト

対話ロボット研究に関連した個別の研究をいくつか紹介したい。これ以降の内容は、私の興味に合致したいくつかの事例を取り上げただけであり、分野の広がりから考えるとかなり不公平な内容となっている。研究分野の概観とい
うよりは、研究の渦中にいる一研究者のブックマークとしてご覧いただければ幸いである。

「情報端末としてのロボット」
対話機能と自己位置推定機能などを持ち、オフィスや展示会場などで移動しながら対話を通して人間と情報の収受を行うロボット。

産総研(Jijo-2)
http://staff.aist.go.jp/h.asoh/jijo2/
オフィス内での移動と対話を行うJijo-2(事情通)ロボットのページ。現在プロジェクトは終了したようだが、この分野の先駆けとも言える研究のひとつ。

CMUの案内ロボット
http://www-2.cs.cmu.edu/~minerva/
http://www-2.cs.cmu.edu/~nursebot/
展示会場での移動と対話を行うMinervaと、老人補助を意図したNursebotのページ。CMUは移動ロボット研究において特に有名であるが、対話機能においても先進的な研究をしている。

NEC(PaPeRo)
http://www.incx.nec.co.jp/robot/
小型の対話ロボットPaPeRoのページ。画像用DSPチップの使用などにより小型のボディに高度な認識機能が詰まっている。ソフトウェアプラットフォームの開発や、大学へのプラットフォームの貸し出しなどにより、個別の研究も興味
深いものになっている。

博物館案内ロボット
http://asl.epfl.ch/events/0210_iros/rie.html
IROS’02におけるワークショップのページ。各研究機関の開発した博物館案内ロボットがリンク付きで紹介されている。対話ロボットを実環境・衆目環境で長期間稼動させた例が多くあり興味深い。

「メディアとしてのロボット」
ロボットを表現メディアとして捉えると、実空間において人と共在する、存在として強く意識されうる実体を持つ、実世界と物理的な影響を及ぼしあう身体を持つなどの特徴がある。それら特徴を強く出した研究事例を紹介する。

早大・小林研究室(ROBITA)
http://www.pcl.cs.waseda.ac.jp/robita/
早大におけるヒューマノイド研究の中で対話機能に特化して開発されたロボットROBITAのページ。視線の認識・表現による多人数対話への参与など。早大のヒューマノイド研究における対話機能へのこだわりは古く、1973年に開発されたWABOT-1においても音声対話機能が搭載されている。

ATR(Robovie)
http://www.irc.atr.co.jp/
http://www.mis.atr.co.jp/everyday/
ATRにおいて開発されたRobovieのページ。ロボット側からのポインティング(指差し・視線)動作による人の反応の分析など、コミュニケーションの基礎になる相互作用の研究。

柴田氏のメンタルコミットメントロボット
http://www.mel.go.jp/soshiki/robot/biorobo/shibata/shibata.html
身体の接触を通して人とのコミュニケーションを図るロボット。対話ロボット研究の枠の中で語るのが適当かわからないが、身体を持つロボットならではのコミュニケーションのあり方として興味深い。

「身体表現のための機構研究」
表現能力の高い身体の開発は、対話ロボット研究にとって重要な課題である。機構により高い身体表現を実現した事例をいくつか紹介したい。

早大・高西研
http://www.takanishi.mech.waseda.ac.jp/eyes/
早大のヒューマノイド研究の中で顔に特化して開発されたロボット。

東京理科大・小林研
http://koba0005.me.kagu.sut.ac.jp/
人工筋肉を用いた顔ロボット。

MIT(Kismet)
http://www.ai.mit.edu/projects/humanoid-robotics-group/kismet/
小動物型の顔ロボット。

SARCOS社
http://www.sarcos.com/
遊園地などのエンタテイメント分野において、各種の表現豊かなロボットを作っている会社。

「対話の学習をするロボット」
学習の問題は対話ロボット研究においても重要な課題である。身体を持ったロボットに、経験を通じて言語を学習させる研究は、非常に興味深い問題を含んでいる。

CSL岩橋氏
http://www.csl.sony.co.jp/person/iwahashi/
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/QRIO/
マニュピレータロボットを対象とした音韻と語彙の獲得、音声・ジェスチャを使った教示による構文概念の学習など。関連してSonyの人間型ロボットQRIOにも未知の音韻列の獲得機能が実装されている。

Plymouth大・Edinburgh大のIBL
http://www.tech.plym.ac.uk/soc/staff/guidbugm/ibl/
移動ロボットを対象とした言語教示によるタスク概念の獲得。

東大・稲邑氏
http://www.jsk.t.u-tokyo.ac.jp/~inamura/research/pexis/
対話の経験を蓄積し、確率的な学習を行うフレームワーク。

通信総研・小嶋氏
http://www2.nict.go.jp/jt/a134/xkozima/research/indexj.html
http://www.epigenetic-robotics.org/
発達論的アプローチによるコミュニケーションの学習への試み。

あとがき

対話ロボット研究についてのコミュニティと、いくつかのブックマークを紹介した。コミュニティの紹介は多くの研究コンテキストをカバーしようとするあまり、やや散漫なものになってしまった。また、ブックマークの部分は私的で不公平なものとなってしまっていることをご容赦願いたい。
多くのURLを紹介したが、ロボット研究は写真や映像を通して見るだけでなく、実物を見たり触れたりすることも大切であると思う。ROBODEX(http://www.robodex.org/)においては各企業や大学から多くの対話ロボットが出展された。2005年に開かれる愛知万博(http://www.expo2005.or.jp/)においてもやはり多くの対話ロボットが出展予定であると聞く。ぜひ足を運んで体験していただきたい。