Vol.16 No.3 (2001/05) 特別編: オンラインジャーナルを利用しよう!


私のブックマーク

特別編: オンラインジャーナルを利用しよう!


はじめに

出版の電子化の促進やWebの浸透といった状況を受け,学術的刊行物をオンラインで提供する形態(オンラインジャーナル)が広まってきています.読者のみなさまもすでにご存知のことと思われますが,人工知能学会においても,2001年の1月号より,いわゆる論文を紙面による学会誌から分離し,
オンラインジャーナル
[1]の形で提供しています.このようなオンラインジャーナルは,著者側,読者側双方にとって様々なメリットが考えられるため,今後さらにポピュラーなものとなっていくものと思われます.そこで,今回の「私のブックマーク」では,特別編として,人工知能,および関連分野の研究者/技術者にとって有用であると思われるオンラインジャーナルや,関連するサービス,サイトなどをご紹介したいと思います.

出版社によるサービス

オンラインジャーナルのサービスは,刊行物の発行主体によって提供されるというのが通常です.刊行物の発行主体は,次節でご紹介するような学会である場合と,本節でご紹介するような出版社である場合があります.学術雑誌の出版社としては,
Elsevier Science
[2]や Springer[3]などが大手としてあげられますが,これらの出版社はいずれも充実したオンラインジャーナルのサービスを提供しています.

Elsevier の SITE[4]
Artificial Intelligence[5]のようなElsevier出版による雑誌はもちろん,Elsevier以外の出版社による雑誌へのアクセスも提供しています.Elsevier刊行による雑誌については,abstractだけでなく全文を誰でも見ることができます.SITEでは,いわゆる検索機能も提供しているほか,トピックや出版社別のリストや,著者やキーワードによるインデックスも提供しています.

Springer の LINK[6]
LINKは,Springerが提供するインターネット上の情報サービスです.LINKでは,オンラインジャーナルを sciences, chemical sciences, geosciences, computer science, mathematics, medicine, physics &
astronomy, engineering, environmental sciences, law, and economics といった分野に分けて提供しています.それでは,我々の関連するcomputer science[7]のページに行ってみましょう.このページでは,おなじみのLecture Notes[8]シリーズへのリンクのほか,関連する雑誌へのリンクがならんでいます.LINKのサイトでは,誰でも目次や各論文のabstractを見ることができますが,論文の全文を見る(PDF形式)ためには,紙面による雑誌を購読していることが必要となります.

World Scientific[9]
World Scientificでは,オンラインジャーナルのページを用意しており,様々な分野の63の雑誌をカバーしています.Computer Scienceのページでは,15の雑誌がリストされていますが,その中には
InternationalJournal on Artificial Intelligence Tools などの人工知能関連の雑誌が含まれています.残念ながら,論文の全文へのアクセスは,2001年1月より購読機関からのアクセスのみとなったようです.

JAIR (Journal of Artificial Intelligence Research[10]
JAIRは,その創刊が1993年ということですから,オンラインジャーナルの老舗であると言えます.最近では,充実した検索機能[11]が提供されています.
The JAIR Information Space
[12]というビジュアルなインタフェースも提供されています.

学会によるサービス

いわゆる学会の機関紙に関するオンラインサービスを学会自身が提供しているケースも増えてきています.

AAAI[13]
AAAIでは,AI Magazine をオンラインでサービスしていますが,目次よりも詳細な情報は,AAAIの会員しかアクセスすることはできません.

IEEE[14]
IEEEでは,IEEE/IEE Electronic Library[15]というオンラインサービスを提供しています.各Transactionや国際会議のProceedingsなどをサービスしています.会員以外が論文の全文にアクセスできるのは,発刊年が古い(1990年より前)ものなどに限られているようです.ただし,人工知能に関連する分野を扱う

Data Engineering Bulletin
[16]では,論文の全文へのアクセスが可能(PS, PDF形式) です.

ACM[17]
ACM Digital Library[18]は,「言わずと知れた」存在でありましょう.ACM関連の雑誌や国際会議のProceedingsへのアクセスが可能です.検索機能や個人の書棚機能なども充実しており,「もうこれなしではやっていけない」と感じられている利用者も多いようです.ただし,利用するためには,ACMの会員となり,さらにディジタルライブラリを利用するためにさらに会費を払う必要があります.

日本の学会
人工知能学会以外にもオンラインジャーナルのサービスを行っている学会が増えています.
電子情報通信学会
[19]では,日本語,英語の論文誌[20]について,誰でも論文の本文までアクセスできる(PDF形式)ようになっています.
情報処理学会[21]では,
電子図書館
[22]というページがあり,論文,解説などの検索機能が提供されています.ただし,論文の全文へのアクセスは
Web会員
[23]に限定されています.論文誌を購読していることが条件で,さらに年間1000円の利用料が必要です.

論文検索に有用なサイト

これまでにご紹介してきたのは,学術誌の刊行元が運用しているサービスでしたが,論文にオンラインでアクセスするというユーザの目的をサポートするためのいくつかの有用な検索サイトが提供されています.これらは,論文検索に特化したサーチエンジンといってもよいでしょう.特徴的なのは,論文の参照関係の情報を利用していることです.

Cora[24]
Web上の個人的なサイトで公開されているコンピュータサイエンス系の論文のPSファイルなどを検索するサービスです.ある論文がどのような論文を参照し,参照されているかのリストも提示され,かつ,これらの論文本体へもアクセスが可能であるため,関連論文に一気にアクセスできるという利点があります.「個人的には図書館へ行く回数が激減した」という利用者の方からのコメントもあります.

ResearchIndex (SiteCeer)[25]
オンライン上で入手可能な論文における参照情報を抽出し,それを提供しています.例えば,ある有名な論文が,他のどの論文にどういう文脈で参照されているか,といった情報をたどることができるので,重要な論文を発見したり,その論文がコミュニティでどう解釈されているかが分かるので非常に便利です
(自分の論文を検索してみると,どんな論文から参照されているかが分かるので興味深いかも).
引用件数別による著者ランキング
[26]なども興味深いです.(一位は誰かお分りになりますか?)

オンラインジャーナルのリスト

オンラインジャーナルのリストは,学会や研究会,大学などの研究室のホームページなどに掲載されていることが多いようです.人工知能学会のサイトにも,
関連リンク集
[27]というページがあり,人工知能関連のオンラインジャーナルがリストされています.Computer Science 関連のオンラインジャーナルを網羅したページとして
The Directory
of Computing Science Journals
[28]というページがあります.ここでは,タイトルによる雑誌へのリンク集の他に,雑誌のタイトルに含まれる語(”Agents”
とか “Artificial”) によるインデックスが提供されています.

論文リポジトリ

研究者自身が自分の論文などを登録できるリポジトリも存在します.米国ロスアラモス国立研究所によるe-Print archive[29]がその草分けですが,このアクティビティを取り込んだものとして,ACMのCoRR (Computing Research Repository)[30]というサイトがあります.研究者が論文を登録するだけでなく,登録された論文やレポートなどを検索し,全文にアクセスすることがもちろん可能です.学会や出版社といった”オーソリティ”とは独立に研究成果の自主的かつ迅速な公開が可能という観点からも注目すべきサイトです.

おわりに

すでに多くの読者の方がオンラインジャーナルを活用されていることと思いますが,まだの方もいらっしゃると思います.ここにご紹介したように,論文の全文にアクセスするには条件が必要な場合も多いようです.ただし,ご所属の学校や組織などの単位で契約することも可能な場合もありますし,紙面の雑誌を購読していればアクセスできるという場合も多いようですので,ぜひ図書館部門などのご担当のセクションと相談されると良いと思います.さて本企画は,人工知能学会誌編集委員会の委員長である石塚先生の発案のもと,編集委員有志(神嶌委員,角委員,津田委員)からの情報をベースとして,担当編集委員の林がまとめたものです.有用な情報の多くはこれらの方々によるものですが,誤り等があるとすれば,その責は担当編集委員の林にあります.



  1. http://www.ai-gakkai.or.jp/jsai/journal/olj.html
  2. http://www.elsevier.com/
  3. http://www.springer.de/index.html
  4. http://www.elsevier.nl/gej-ng/29/18/show/
  5. http://www.elsevier.com/inca/publications/store/5/0/5/6/0/1/
  6. http://link.springer.de/home.htm
  7. http://link.springer.de/ol/csol/index.htm
  8. http://link.springer.de/series/lncs/index.htm
  9. http://www.wspc.com.sg/
  10. http://www.cs.washington.edu/research/jair/
  11. http://extractor.iit.nrc.ca/jair/
  12. http://www.infoarch.ai.mit.edu/jair/jair-space.html
  13. http://www.aaai.org/
  14. http://www.ieee.org/
  15. http://www.ieee.org/products/onlinepubs/iel/iel.html
  16. http://www.research.microsoft.com/research/db/debull/issues-list.htm
  17. http://www.acm.org/
  18. http://www.acm.org/dl/
  19. http://www.ieice.org/
  20. http://search.ieice.org/
  21. http://www.ipsj.or.jp/
  22. http://www.ipsj.or.jp/index_e.html
  23. http://www.ipsj.or.jp/members/index.html
  24. http://cora.whizbang.com/
  25. http://citeseer.nj.nec.com/
  26. http://citeseer.nj.nec.com/mostcited.html
  27. http://www.ai-gakkai.or.jp/jsai/links.html
  28. http://elib.cs.sfu.ca/Collections/CMPT/cs-journals/
  29. http://xxx.lanl.gov/
  30. http://www.acm.org/pubs/corr/


林 良彦(NTTサイバースペース研究所)